日本型沿岸域総合的管理による海の環境保護と 持続可能な地域社会づくり —里海とコモンズの視点から—

日本型沿岸域総合的管理による海の環境保護と 持続可能な地域社会づくり —里海とコモンズの視点から—

1. 序論

 地球の全表面積の7割を占める海は、生物の棲み処としての生態系であると同時に、人の生活に欠かせない食料、エネルギー、資源などを供給してくれる。他にも、気象調節や環境浄化といった調節機能、人の憩いの場・癒しの場としての機能もある。
 他方で、海は自浄能力をもちつつも、陸上の人間活動の影響を受ける脆弱性をもっている。海と陸の構造的理由から、陸上の様々なものは河川へ、さらには海へと流れ込むためである。わが国では、特に戦後の高度経済成長期に、石油化学工業育成政策によって臨海地帯が埋め立てられ、大規模なコンビナートが建設された。海の環境は大きく変化し、環境破壊は深刻となった。
 海の環境破壊が漁業にもたらした影響も大きい。日本国内の漁業産出額は、平成の30年間で半分ほどに落ち込み、漁業就業者も大きく減少した。沿岸地域の過疎化・高齢化も大きな問題である。持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の議論では、環境、社会、経済の3つの要素のバランスが重視される。現代は、人口動態や産業形態、人々のライフスタイルや趣向も、以前とは大きく変容している。今後のビジョンを描くにあたり、現代に見合う新たな地域社会のあり方を模索する必要がある。
 本レポートでは、特に沿岸域の管理に着目し、海の環境保全と地域社会づくりを両立させていくことを目指した提言を行う。まず、環境問題の歴史的経緯に簡単に触れ、世界およびわが国で展開されつつある沿岸域総合的管理の成立の経緯、その妥当性、課題について述べる。併せて、わが国で古くから展開されてきた里海モデルと「コモンズ」について考察する。最後に、今後の沿岸域の管理について、里海作りと「コモンズ」の手法を用いることで日本型沿岸域総合的管理を推進することを提案する。

2. 深刻化する海洋環境問題

 環境問題が世界的に取り上げられたのは、1962年に出版された『沈黙の春』がきっかけである。同著で、米国の生物学者レイチェル・カーソンは、急速な経済発展に伴い次々に開発される農薬や化学物質乱用の危険性に警鐘を鳴らした。
 わが国では、高度経済成長期に沿岸都市部に人口・産業が集中し、浅海域は埋め立てられ、大量の廃棄物・排水が発生した。沿岸域の環境・生態系は悪化し、生物資源は減少した。また、この時期に工場排水が原因とされるイタイイタイ病(富山県)や水俣病(熊本県)が発生した。産業型公害が多くの健康被害をもたらしたことを受けて、1967年に公害対策基本法が制定・施行された。
 しかし、公害対策基本法制定以降も公害はますます深刻化した。海洋環境に関しては、家庭や工場、下水処理場から排水が海に流れ込んだ。その結果、海水中の窒素やリンなどが増加し、海水中の植物プランクトンが急速に増殖することによって赤潮が発生した。また、異常に増殖した植物性プランクトンが海底に堆積し、その分解時に酸素が消費され、酸素の少ない海底の海水が沸き上がる青潮も発生した。沿岸域では特に深刻化した1
 さらに、気候変動に伴う海水温の上昇や海洋の酸性化、藻場・干潟・マングローブ林など重要な生物生息地の喪失、海洋ごみ、水産資源の減少、海上輸送による環境負荷の増大など、海洋環境問題は深刻さを増している。近年では、マイクロプラスチックやサンゴ礁の大規模白化などの問題が顕在化している。

3. 沿岸域総合的管理の成立の経緯と課題

管理という視点からみた海の分類

 各国の領海は、1982年に採択された「国連海洋法条約」で12海里以内とされている。200海里までの海は、同条約で「排他的経済水域(EEZ)」とされ、その国に魚や海底資源を採取・管理する権利と海洋環境保全の義務が定められている。
 沿岸域の定義は、学者によってまちまちだが、「海岸線を挟んで海域及び陸域を含む帯状の区域」という点は共通している。日本の「海岸法」では、同法で保全される指定区域として、陸側は、原則、満潮時の水際線から50m以内、海側は、原則、干潮時の水際線から50m以内としている。一部の研究者はそれを沿岸域としているが、「沿岸域総合的管理」でいう「沿岸域」はそれよりも広い。日本沿岸域学会(2000)は、沿岸域総合的管理の範囲を「海域においては海岸線から領海までとし、陸域は海岸線から海岸線を有する市町村の行政区域、および必要な場合はその沿岸域に大きな影響を与える河川流域の範囲を最大として、当該沿岸域の地域特性に応じて決定する」としている。

「沿岸域総合的管理」成立の経緯

 沿岸域の環境悪化に対応するため、沿岸の陸域と海域を「沿岸域」として一体的に捉え、沿岸域の環境保護と開発利用の問題を総合的・計画的・順応的に管理する取り組みがなされるようになった。それを、世界的に「沿岸域総合的管理(ICM)」と呼んでいる。
 米国で、サンフランシスコ湾地域の急速な埋め立てに反対した住民運動が発端となり、環境と調和した沿岸域利用を推進する「沿岸域管理法」(カリフォルニア州法)が1972年に制定された。これが「沿岸域総合的管理(ICM)」の始まりとされている。
 米国で始まった沿岸域総合的管理(ICM)の取り組みは、カナダ、ヨーロッパ諸国、オーストラリア、そして中国、韓国、東南アジア諸国など世界の国々に広まった。1992年のリオ地球サミットで採択された行動計画(「アジェンダ21」第17章)に含まれることで、「沿岸域総合的管理」は国際標準的政策手法となった。わが国では、2007年に海洋基本法が成立した。同法第25条で「沿岸域の総合的管理」が初めて法令に規定され、国が推進すべき12の基本的施策の一つとして沿岸域総合的管理が位置づけられた。
 沿岸域総合的管理の手法は、陸域と海域を一体的に捉え(陸域・海域一体)、沿岸域の環境保護と開発が調和した「持続可能な開発」として、総合的・計画的・順応的に管理する取り組みである。多様なステークホルダーが同一のテーブルで議論することで、一部の者に利益や不利益が集中することを防止し、環境保護と開発の調和を図ることを目的としている。

日本で沿岸域総合的管理が進まない理由

 海洋基本法が制定された翌年の2008年、同法に基づき「海洋基本計画」が策定されたが、沿岸域総合的管理についての記述が乏しく、その後は十分に進展していない。海洋政策研究財団によれば、わが国で沿岸域総合的管理が進展してこなかった背景には、以下のような要因がある。

①都道府県海域が必ずしも明確ではなく、市町村には原則として海域は含まれていない。市町村が身近な海域を管理しようとしても、財源がない。
②地方公共団体が沿岸域総合的管理に取り組むにあたって、そのための国の制度が確立されていない。
③各地に里海などの先進的取り組み事例はあるが、沿岸域総合的管理の具体的モデルとまでは認知されていない。
④沿岸域の過疎化・高齢化により、住民に最も身近な基礎自治体である市町村の管理機能が低下している。
⑤平成の大合併による市町村の広域化、および住民の過疎化・高齢化で自治共同体機能が低下している。

4. 沿岸域における日本独自の取組み

里海への着目

 わが国では、各国が取り組んでいるような沿岸域総合的管理は進んでいないが、各地では古くから里海づくりが行われてきた。松田(2009)によれば、「里海づくりは、沿岸域の総合的管理に活用できる参加協働型のツールである」。「里海」は、1998年に柳哲雄により「人手が加わることにより生物生産性と生物多様性が高くなった沿岸海域」と定義された。
 「里山」については、1661年に出版された文献に登場しており、歴史は古い。「里海」の概念は、「里山」のあり方を参考に、新しい用語として提案されたものである。いずれにせよ、里山づくりも里海づくりも、日本では古くから各地域で行われてきたものだ。里地里山および里海の概念は、近年、環境保全活動の一環として注目され、研究が進められている。
 里海の本質は、自然の中で人間が生活するという「人と自然との共生」である。したがって、里海づくりは、漁師を含めた地域住民が共に海の恵みの大切さを知り、皆で海の環境を保護し、海の恵みを分かち合うまちづくりである。昔から、地域住民は郷土愛や地域愛を通じて、自分たちの私欲を抑える仕組みをつくり、地域の環境を守り続けてきた。
 里海は、海の環境保護、漁業再生という視点から、藻場再生にもつながる。藻場とは、海藻・海草が茂る場所のことである。沿岸域の藻場における海藻・海草の成長速度は、地球上で最も高いレベルにあり、CO₂固定にも資する。また藻場は、稚仔魚に餌を与え、隠れ場所を与え、魚の産卵床となる。したがって、藻場再生は沿岸海域の環境回復・保護にとって、最も重要なポイントと言って過言ではない。
 環境省が作成したウェブサイト「里海ネット」によれば、「里海づくりは5つの要素から構成されている。海域の保全と再生を支える『物質循環』、『生態系』、『ふれあい』、里海づくりの実践を支える『活動の場』及び『活動の主体』、これら5つの要素によって里海は構成され、また育まれる。さらに、それらのバランスにより、海域毎の特色ある里海づくりの多様な活動が形成される」。

里海づくりの実践事例

 里海づくりの実践事例は全国に数多くあるが、そのうち3つを紹介したい。

<三重県志摩市>
 1つ目は、三重県志摩市である。志摩市は、古くから「御食国(みけつくに)」と呼ばれ、豊かな自然資源の恵みを得て農林水産業や観光業などに利用してきた。しかし近年、社会や経済の変化に伴い、人と自然との関わり方が大きく変化したことや、生活排水や干潟による浄化作用の低下等による環境悪化により、漁獲量が1950年代の10分の1程度まで減少した。
 2008年には、地域住民と行政、研究者等が科学的な研究成果を利用しながら幅広い視点から協議していく英虞湾自然再生協議会が立ちあげられた。また、三重県水産研究所と志摩市の連携のもと、里海づくりを目指した活動が行われてきた。
 これらを背景に、志摩市は、平成24年3月に「志摩市里海創生基本計画」を策定し、海域と陸域を一体ととらえ、市民や関係者が連携して取り組みを進めることとした。結果として、干潟再生の一環である水門開放等を実現し、多様な科学者が関与することで英虞湾の環境再生を推進することができた。また、科学者が中心となり、地元の漁業者や事業者、遊休地所有者等との信頼関係・協力関係を構築することができた。

<沖縄県竹富町>
 2つ目は、日本最南端の町、竹富町である。同町は、石西礁湖(石垣島と西表島の間に広がる広大なサンゴ礁海域)の海と西表島の山河など亜熱帯の雄大な自然環境に恵まれた16の島からなる島嶼の町である。また、海洋環境の保全や持続可能な水産資源管理に関する意識が、漁業者も含め住民全体で高い地域である。
 竹冨町は、国の政策を背景に積極的な海洋施策に取り組み、地域振興策としての活用を念頭に、2011年3月に竹富町海洋基本計画を策定した。海洋基本計画を策定した初めての自治体であり、地域内外においても評価され注目された。その結果、地域住民の海に対する意識も変化し、主体的な活動が見られるようになり、生活雑排水対策や海岸漂着ゴミ対策などの取組みが活発化している。
 また、計画策定前から、国や研究機関、有識者との連携をはかり、島嶼地域、国境地域といった共通の特徴を有する他の自治体や、竹富町を研究対象とする大学等とのネットワークを構築し、協働事業・研究を行っている。2010年には「竹富町海洋フォーラム2010」を開催した他、石垣市や与那国町等の近隣自治体との海洋タウンミーティングも実施している。

<宮城県気仙沼市>
 3つ目は、三陸の気仙沼湾で長年カキの養殖業を営んでいる畠山重篤氏が主宰するNPO法人「森は海の恋人」である。気仙沼湾では、1970年代から80年代にかけて環境が悪化し、カキの身が赤くなり売り物にならず廃棄処分になったことがあった。カキの漁場は川が海に注ぐ汽水域であり、川が運ぶ森の養分がカキの餌となる植物プランクトンを育んでいる。
 畠山氏は、高度経済成長期に雑木林が減って杉山ばかりになったことに気づき、同業者仲間や川の流域に暮らす人々に呼びかけて落葉広葉樹の森を創る活動を行った。落葉広葉樹の落ち葉や枯れ木は、虫や微生物によって分解され、養分を多く含んだ「腐葉土」となる。雨や雪解け水は、この腐葉土に染み込み、腐葉土に含まれるリンや窒素などの養分と一緒に川に流れ、海に流れる。
 現在も、岩手県一関市にある矢越山で「森は海の恋人植樹祭」を毎年開催しており、全国から約1400人が参加する。同植樹祭は30年以上継続した取組みであり、森づくりの先駆的な市民活動として大きな支持を得て、全国的に知られている。他にも、川の流域に暮らす子どもたちへの環境教育の重要性を感じ、1990年頃から体験学習を開始した。今までに招いた子どもたちは1万人を超える。畠山氏を中心とした運動は、矢越山に限らず、諫早湾や全国に広がりを見せている。

日本人の自然観

 ここで、古くから里海を育んできた日本人の自然観について考察してみたい。日本社会および日本人の中には「すべてのものに神が宿る」という思想が、無自覚にせよ伝統的に定着している。伝統的民俗信仰・自然信仰である神道に代表される「八百万の神」や、鎌倉時代に確立した日本型仏教思想に見られる「山川草木国土悉皆成仏」も、そうした思想が貫かれていた。そこには人間優位の思想はなく、人も自然の一部であり、あらゆるものが共に生きているという考えがある。
 人も自然と共に生きるという、日本人の共生の思想は、今日に至るまで自然との付き合い方に影響を与えてきた。日本が近代化される以前は、米づくりは地域で結束して手間を交わす共同の“ちから”をうみだした。この営みは互いの絆を醸成し、水や土、太陽をはじめとする自然に感謝する“こころ”を育て上げた。地域住人は、生きていくための自然との付き合い方、折り合いの付け方、地域で共に暮らす作法を模索した。住人たちは豊作と安全を願い、田や山の神に祈りを捧げた。田畑は食を養い、山は煮炊きや家屋の源であったからだ。
 宮内(2013)は、自然は自然のままに任せておいた方がよいとする「原生自然」の考え方は幻想であるとする。人間との相互作用に基づく自然が重要で、自然を守るとは、人間との相互作用を適切に保つこと、つまり相互作用を守ることであると考えられる。里海づくりは、正に日本人の自然観が現れた沿岸域の管理手法であるといえる。

5. 「コモンズ」概念を利用した沿岸域の管理手法

里海づくりのもつ課題

 里海づくりによって、海の生態系保護と利用に関する道筋は敷かれたが、今後の海の管理を考えると、それだけでは限界がある。
 第1に、海を守る人が減少している。2019年現在、漁業就業者数は約14万5千人で、総人口のわずか1.1%にすぎない。里海づくりに成功したと言われる岡山県日生町でも、漁業就業者数は町人口のわずか2〜3%である。漁業者はごく少数であり、海は漁業者のものというよりも、住民皆のものであるという状況にある。
 第2に、里海づくりが難しい沿岸域が存在する。環境省の「里海ネット」では、里海づくりの7つのタイプ(流域一体型ミティゲーション型、漁村型、鎮守の海型、体験型、都市型、複合型である2)が紹介されている。7つのタイプの中で、都市型の先行事例が容易に見たらないのが実情だ3。つまり、漁業が盛んでない沿岸域や都市部の沿岸域における里海づくりは容易ではないといえる。
 第3に、人的資源に関する課題がある。「参加者・スタッフの高齢化」「スタッフや後継者の不足」等が指摘されており、それは増加傾向にある。「活動の主体」をどう確保していくかが課題がとなっている。
 第4に、海の環境保護における総合的な視点が不十分である。志摩市や「森は海の恋人」の活動に見られるように、海の環境を保護するためには山、森、川、海全体を見る視点、すなわち里山と里海を合わせた森里海連環の視点が重要である。その点について「里海ネット」では、流域一体型として想定済みのようだが、単なる一類型として扱うだけでは不十分である。あらゆるタイプの里海づくりにおいて、森里海連環の視点が必要である。
 第5に、「都市部」と「地方」の関係も見過ごせない。自然資源を持たない「都市部」は単体では持続可能ではない。水道水や食料の供給を考えれば容易に想像がつくように、自然資源を持つ地方の山間部や沿岸部との協力関係が不可欠である。また都市部に住む人々は、観光やレジャーなどを目的とする地方沿岸部の利用需要が高い。里海づくりを進めるにあたり、「都市部」の利用者の関わりを想定する必要がある。

「コモンズ」概念とは

 里海づくりの課題解決の鍵となるのが「コモンズ(共有地)」という概念だ(宮内2017)。「コモンズ」とは、もともとイギリスで使われていた言葉で、農民たちが放牧や薪炭材採取に市民が散策地としてアクセスできる土地のことを指してきた。宮内(2017)によれば、「コモンズ」とは、「地域社会が一定のルールのもと、共同で持続的に管理している自然環境」である。また、「その共同管理のしくみそのものを『コモンズ』」と言っている。
 1968年に米国の生物学者ギャレット・ハーディンが、国際科学雑誌『サイエンス』に「コモンズの悲劇」という論文を発表し、「コモンズ」が脚光を浴びた。ハーディンはこの論文で、共有地は適切に管理されれば、多くの人が持続的に利益を享受できるが、少数の人間が短期的な自己利益を追求すれば、共有地は容易に破壊されてしまうとした。同論文は人口増加に対する懸念を示したものであったが、同時に共有地の管理についても多くの議論を呼んだ。
 一方、米国の政治・経済学者エリノア・オストロムは、市場原理や政府規制に頼らなくても、森や湖などの共有資源を効率的に管理できる仕組みがあることを理論的に解明し、2009年にノーベル経済学賞を受賞した。「共有地」が地球規模であれば、その環境負荷をコントロールすることは難しいが、規模の限られた共有地については、構成員は限られており、住民自らがルールを作り資源を持続的に管理することは可能であると考えられる。
 国内においても、コモンズの事例と考えられるものがある。例えば宮内(2017)は、石巻市北上町にあるヨシ原の管理事例を引用して、地域の人びとが集団でルールを決めて行うことが、地域にとって適切な資源管理になるとする。その理由として、①当事者たち自身によるルール作りなので、適切な資源管理が可能であること、②地域の事情に応じた柔軟なルール作りや利益の分配が可能であること、③地域内に「納得」をもたらすこと、④個人・世帯の利益を超えた地域全体の財産維持、利益に資すること、を挙げている。

「コモンズ」概念と沿岸域の管理

 明治期以降、私的所有権という考え方が定着したために少なくなったが、日本にもコモンズにあたる場所が存在していた。例えば森では、人びとが下草を刈って肥料にしたり、枝を取って薪にしたり、木を切り倒して家を作る材木に使った。このような行為が「入会権」で認められていた。「入会権」は、一定の地域の住民が特定の山林原野等を共同で利用する権利であり、民法263条および294条にて規定されている4。わが国には他にコモンズを明確に定めた法令は存在しておらず、入会権がそれに近しいものと考えられる。
 この入会権の対象となるのは大半が陸地である。海については、漁業者に対する漁業権は認められているが、入会権の対象となりうるかという点については、現在の民法では明確でない。陸地は所有権取得の対象となるが、海は領海として国及び都道府県に一定の管理権があり、所有権が認められていない点が大きく異なる。
 最高裁判例5によれば、「海は、(中略)いわゆる公共用物であって、国の直接の公法的支配管理に服し、特定人による排他的支配の許されないもの」である。すなわち、海は公的にも私的にも所有権設定に馴染まない6。高度経済成長期の1970年代に、公害を告発する住民運動から、海浜や海岸に自由に立ち入り、魚介類の採取や海水浴など自然の恩恵を享受できる権利として「入浜権」が主張されたことがある。しかし裁判では、海岸・海浜は国が管理するものとして入浜権は否定された。
 今一度、沿岸域をコモンズとして管理する方法を検討すべきではないか。宇沢(1995)は、すべての森をコモンズとみなすことを提案しており、それを前提として田中(2017)は近海に限定して「森」を「海」に置きかえることを提案している。つまり、近海はコモンズとして見なしてはどうかという提案である。
 沿岸域の管理について、漁業が盛んな地域では、漁協を中心とした漁業者の自主的管理に任されてきた。漁業が盛んでない地域では、管理主体は行政であるものの、権限は必ずしも明確でなかった。海が公共物であり、公的にも私的にも所有権設定に馴染まないものであること、漁業就業者数の減少や、SDGsや地方創生の要請を踏まえると、沿岸域の管理は海を日常的に利用する地域住民の共同管理に委ねるのが、海の環境保護と適正な有効利用を期待する観点から最も合理的である。

「コモンズ」概念を利用した参加型協議体モデル

 今日、海をめぐる利害関係者は多様化している。地域住民はもちろんのこと、企業、研究所、学校、行政、旅行者等様々な主体が含まれる。沿岸域を管理するにあたり、地域住民による共同管理をベースとして、利害関係者が可能な限り参加し協議できる仕組があることが望ましい。そのような協議体がコミュニティを形成し、コミュニティで海の管理について議論することで、地域の課題に対して最適な解決法が見いだせるのではないか。
 行政による縦割り的議論や一部の利害関係者による議論では、最適な解決策を見出すのは難しいだろう。全利害関係者の参加型協議によって恣意的な開発計画を防止でき、一方で沿岸域の廃地や干潟などを有効活用できる可能性が高い。全利害関係者の参加型協議によってSDGsの3要素である環境・社会・経済のバランスを維持・調整することが期待できる。それは、17のゴール達成を目指すSDGsが分野横断的な議論を要請していることとも関連する。

6. 地域にある大学の役割と海洋教育の重要性

 「コモンズ」概念を利用した参加型協議体モデルによる沿岸域の管理を推進するためには、専門家の関与や海洋教育、そして未来人材の育成が重要である。

地域にある大学の役割

 地域住民は、地域で生じる諸課題について専門的知見は持ち合わせていない。様々な課題に対して地域コミュニティが適切に対応し解決できるかは、専門家・有識者の協力を得て、その知見を得ることができるか否かにかかってくる。コミュニティにおける合意形成の基礎には、科学的証拠がなければならない。
 知見を提供する専門家・有識者は、地域の事情に詳しい者が望ましく、地域住民の要請に即座に対応できなければならない。それらを考えると、地域の大学または研究所に勤務する研究者、つまりレジデント研究者がその任を負うのが望ましい。
 また、地域にある大学と地域の関係は、大学の知を地域再生・活性化に活用するという一方向だけのものではない。地域で蓄積された知識・情報・知恵が大学に還元され、データベース化されて、必要な時に閲覧できる状態になければならない。
 米国の法学者ローレンス・レッシグは、2001年にNPO「クリエイティブ・コモンズ」を共同で設立し、長期に及ぶ著作権が人々のクリエイティビティを阻んでいると問題提起している。地域で蓄積された知は公共性が高く、クリエイティブ・コモンズとして隣接地域はもちろん、他地域でも広く利用可能にすべきである。

地域の大学を拠点とした未来人材育成

 環境保護を踏まえた地方創生が持続可能なものとなるためには、それを担う主体が持続可能でなければならない。すなわち、環境保護、社会(コミュニティ)、経済の視点をバランス良く兼ね備えた次世代の人材育成が不可欠である。
 文部科学省では、平成27年度から、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」を実施している。大学が地方公共団体や企業等と協働して、学生にとって魅力ある就職先を創出するとともに、地域が求める人材を養成するために必要な教育カリキュラムの設置を支援することで、地方創生の中心となる「ひと」の地方への集積を目的としている。

海洋教育の重要性

 国連では2020年から2030年までを海洋リテラシー教育の10年と定め、同教育を全世界的に推進している。これまで海が陸地に比べて関心を持たれなかった反省を踏まえ、人々に海の価値を正しく知ってもらうためである。豊かな心を育み、人間としての生き方の自覚を促し、社会においてよりよく生きられるようにするための道徳性を育成することをねらいとした倫理道徳教育としても、海洋教育は有効である。
 田中(2017)は、海洋教育の重要性について次のように述べている。「なぜ[海という]公共財を理念として語るのが大事なのか。それは、基本的に私たちが、「私が」というときの「私」が呼び寄せるエゴセントリズム、所有個人主義という考え方を超える考え方をもつべきだからである。」「さらに言えば、『公共のものだから大切』と『自分のものだから大切』のバランスを取るために、重層的思考を持つことが必要だからである。」「人は、私的所有権を超える共有の財産という考え方を持つことによって、他者ともっと協力できるようになり、人と森の共生、さらに地球全体との共生を考えるようになる。」

7. 結論および提言

 イギリスで起こった産業革命による近代化・工業化の波が、世界中で環境破壊をもたらしたことは事実である。しかし、その後の人々の努力で、環境の保護・保全を図りつつ持続可能な開発に向けた取り組みは世界的な枠組みとして結実しようとしている。2015年に採択されたSDGsや「パリ協定」がそれである。
 SDGsの目標14には持続可能な開発のための海洋・海洋資源の保全、持続可能な利用が定められており、また「パリ協定」をきっかけに脱炭素の動きが世界中に広がりつつある。もはや戦後の高度経済成長期の大量生産・大量消費の時代のように、欲しいままに環境からの搾取や環境破壊を行える時代ではない。環境保護を当然の前提として経済活動を行わなければならない。
 米国で始まり世界に広がった「沿岸域総合的管理」は、すでに述べたとおり、わが国ではあまり進んでいない。しかし、日本人の自然観を取り入れた里海という形態の沿岸域管理が、各地で取り組まれている。日本で発展した里海づくりは、「Satoumi Initiative」としてアジアや米国を中心に世界に広まりつつある。
 しかし、今後の沿岸域の管理を考えた時、里海づくりの観点だけでは課題が残る。その課題を克服してくれるのがコモンズ概念を使用した「コミュニティ参加型協議体モデル」だ。このモデルの導入により、里海がもつ5つの課題、特に第3の活動の主体不足の問題を克服することができる。里海づくりの担い手不足という問題をかかえる地方自治体にとって、これは大きなメリットを持つ。
 第4の総合的視点と第5の都市と地方間の関わりという視点の欠如を克服するには、可能な限り、海関連の利害関係者のみならず、山や森関連の利害関係者や「都市部」利用者に参加してもらうことが望ましいが、難しい場合は研究者・専門家の知見で補充することも考えられる。いずれにせよ、コモンズ概念を使用した「コミュニティ参加型協議体モデル」が研究者・専門家の知見の導入を容易にしてくれるだろう。
 沿岸域の環境保護と開発利用を総合的・計画的・順応的に管理する制度を確立し、これを里海づくりおよび「コミュニティ参加型協議体モデル」の導入によって補完する形で、わが国でも沿岸域総合的管理を発展させることは可能である。コモンズ概念を使用した「コミュニティ参加型協議体モデル」は、人と自然の関係性の考え方に関わらず普及する可能性がある。こうした日本型の沿岸域総合的管理モデルは、潜在的にコミュニティの結束力が高いわが国で成功し、世界に拡大できる可能性を有するものだ。
 しかしながら現時点では、コモンズに関しても、「コミュニティ参加型協議体モデル」についても明確な法令の定めはない。かつての入浜権が否定された判例を維持したまま、沿岸域に入会権が適用されると法解釈することは難しい。入会権を定めた民法の規定に代わり、海をコモンズとして明確に定めた法律の制定が望まれる。沿岸域総合的管理の課題も含めて、それらの法令の早急な整備が不可欠であることは言うまでもない。以上をまとめて、以下3点を提言したい。

提言1 沿岸域総合的管理の一環としての里海づくりを推進する一方で、早期にコモンズ概念を基にした沿岸域管理のための法整備を

 2007年に成立した海洋基本法第25条に「沿岸域の総合的管理」が初めて法令で定められ、翌2008年、同法に基づき「海洋基本計画」が策定された。しかし、沿岸域総合的管理については十分な記述がなされず、沿岸域総合的管理は進展しなかった。里海づくりと「コミュニティ参加型協議体モデル」で補完した日本型沿岸域総合的管理モデルの策定には、それらを具体的に盛り込んだ「沿岸域基本法」(仮称)のような法整備が欠かせない。

提言2 海に隣接する市町村に海の管理権を与え、海の実質的主体的管理の推進を

 現在、海に対しては都道府県に一定の管理権があるが、都道府県に与えられた管理権の境界線は明確ではない。また、地域住民にとって最も身近な市町村には管理権がなく、財源も確保されていない。財源がなければ、市町村や地域住民による沿岸域の管理は大きく制約される(寺島2021)。国からの経済的支援なしに、沿岸域の管理を地域のイニシアティブのみに期待するのは、現実的ではない。広域行政のみならず、狭域行政が共に管理する体制を構築するのが望ましい。その意味で、上記「沿岸域基本法」(仮称)には、沿岸海域の市町村への編入条項が盛り込まれる必要がある。
 利害関係者による参加型協議体には、市町村が参加する必要がある。国および地方の広域行政に通じた市町村担当者が参加することで、行政とそれ以外の利害関係者が問題意識とイニシアティブを共有し調整役を担えるからである。市町村の担当者が調整役として利害関係者による参加型協議体に参加し、必要があれば、地域住民の声を市町村議会に上申し、国に予算請求できる仕組みが必要となる。そのためにも市町村は、里海づくりを成功させている小浜市の「産業部里山里海課」や七尾市の「産業部里山里海振興課」等に倣い、担当課を明確にする必要がある。

提言3 国連が2030年まで提唱する海洋リテラシー教育の一環としての海洋教育の積極的推進を

 都会の生活に慣れると、快適な日常生活を求めるうちに、自然に触れる機会が減少してしまう。休日に森里海川などの自然に触れることで、人々は心身の健康や活力を取り戻す。地に足の着いた陸地よりも足場が不安定な海の方がより自然の脅威を感じるし、海の中で時間を過ごすことで、大自然の一部である自己を感じ、他者と協力する心や自然との共生を考えるようになる。その意味で、国連が2020年から2030年まで定める海洋リテラシー教育の10年間に、海洋教育を推進することに意義がある。
 また、持続可能な地域社会づくりは、その担い手となる未来人材があればこそ達成できる。そのためにも、未来人材の育成は最も高い優先順位の下、進められなければならない。

 

<参考文献>

【ウェブサイト】※下記すべてにつき、最終アクセスは2022年8月3日。

独立行政法人環境再生保全機構「高度経済成長と公害の激化(1965年〜1974年:昭和20年〜30年代)
https://www.erca.go.jp/yobou/taiki/rekishi/03.html

農林水産省「赤潮(あかしお)はなぜ発生するのですか。」
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0207/09.html

翟国方・鈴木武 「総合的沿岸域管理に関する基礎的研究」国土技術政策総合研究所資料No. 478、2008
http://ccwww.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0473pdf/ks0473.pdf

日本沿岸域学会、2000年アピール委員会、「沿岸域の持続的な利用と環境保全のための提言」、2000
http://www.jaczs.com/03-journal/teigen-tou/jacz2000.pdf

環境省、「第2章 水質汚濁等に係る包括的対策」
https://www.env.go.jp/earth/coop/coop/materials/04-wpctmj1/04-wpctmj1-02.pdf

国土交通省、国土技術政策総合研究所 国総研資料No. 473
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0473pdf/ks047304.pdf

環境省、里海ネット「里海づくりを目指して」
https://www.env.go.jp/water/heisa/satoumi/05.html

文部科学省、地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/coc/

NPO法人森は海の恋人「NPO法人 森は海の恋人とは」/「活動の経緯」
https://mori-umi.org/about/history/

笹川平和財団 海洋政策研究所「『海はみんなのもの』について考える」
https://www.spf.org/opri/newsletter/161_2.html

水産庁「数字で理解する水産業」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/R1/01hakusyo_info/index.html

農林水産省「令和元年 漁業産出額」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/gyosan/r1/index.html

農林水産省「漁業労働力に関する統計」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/18.html

総務省統計局「人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐」
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2021np/index.html

内閣府「沿岸域の総合的管理の取組み事例集改訂版(2014)」
https://www8.cao.go.jp/ocean/policies/enganiki/pdf/jirei_01_all.pdf

宮内泰介「コモンズというしくみ—自然、地域社会、そして復興(2013年11月30日第17回京都大学地球環境フォーラム「地球のつかい方」)」
https://www.slideshare.net/MiyauchiTaisuke/201311slide-share

松田治「『里海づくり』をめぐる最近の動きと沿岸域の総合的管理」第58回海洋フォーラム、2009年
https://www.spf.org/_opri_media/projects/information/forum/backnumber/pdf/58_01.pdf

 

<書籍>

養父志乃夫『里山里海—生きるための知恵と作法、循環型の暮らし—』勁草書房、2016年

柳哲雄『里海論』恒星社厚生閣、2006年

鹿熊 信一郎(編集)『里海学のすすめ:人と海との新たな関わり』勉誠出版、2018年

宮内泰介『人びとの自然再生—歩く、見る、聞く』岩波新書、2017年

石田秀輝『地球が教える奇跡の技術—大自然のすごさを活かす「ネイチャー・テクノロジー」の世界—』祥伝社、2010年

山田奨治『コモンズと文化—文化は誰のものか—』東京堂出版、2010年

待鳥聡史・宇野重規(編著)『社会のなかのコモンズ—公共性を超えて』白水社、2019年

三俣学・菅豊・井上真(編著)『ローカル・コモンズの可能性』ミネルヴァ書房、2010年

宇沢弘文『地球温暖化を考える』岩波書店、1995年

田中克(監修)認定NPO法人シニア自然大学校 地球環境自然学講座(編)『いのちの循環、「森里海」の現場から、未来世代へのメッセージ72』花乱社、2022年

 

<政策提言>

「沿岸域総合的管理の推進に関する提言」海洋政策研究財団、2013年3月

 

<執筆>

田中智志「海と人の教育学—公共財とフミリタスへ—」IPP、人格教育講演会、2017年

多部田茂「海洋と沿岸域の総合的な管理に向けて」IPP、2019年

 

<研究会>

多部田茂「海の環境危機と持続可能な海洋利用—資源・エネルギー・食糧—」ICUS懇談会、IPP、2018年

古谷研「地球環境における海の役割—海の砂漠化と海洋生態系の未来—」ICUS懇談会、IPP、2018年

八木信行「生物多様性の保全と持続可能な水産資源利用—BBNJ交渉の課題と展望—」ICUS懇談会、IPP、2018年

羽角博康「海と気候と二酸化炭素—海洋シミュレーションと地球温暖化予測—」ICUS懇談会、IPP、2019年

牧野光琢「日本の水産資源・漁業の未来—国際的議論と国内の議論—」ICUS懇談会、IPP、2020年

白山義久「海洋生態系の保全—グローバルとローカルの課題—」ICUS懇談会、IPP、2020年

寺島紘士「持続可能な開発目標(SDGs)と海洋—海を活かしたまちづくりによる地方創生—」IPP政策研究会、IPP、2021年

 

1 古谷(2018)は、沿岸域と外洋域毎によって生み出される価値を評価する試みを行っている。具体的には、市場価値が明らかな水産資源を対象に、各海域の漁業生産を求め、その価値を経年魚価換算係数を用いて貨幣価値に換算する。その結果、沿岸域の価値が桁違いに高いことがわかっている。

2 流域一体型:森から海までを一体として捉えた活動、ミティゲーション型:都市開発などに伴い失われた環境の再生活動、漁村型:漁村が主体となり、漁業活動の中で実施する活動、鎮守の海型:禁漁区・禁漁期の設定による神域づくり的な活動、体験型:都市近郊で行う、都市住民による体験活動、都市型:都市近郊にある藻場など浅海域の保全・生産活動、複合型:流域、都市、漁村等が重なったエリアにおける海の環境保全活動

3 三重県志摩市およびNPO法人「森は海の恋人」は流域一体型・ミティゲーション型・漁村型・体験型を融合したもので、竹富町はミティゲーション型に該当すると言えよう。

4 民法は、入会権を、利用する土地等を共有する性質がある場合(民法263条)と特定の目的に従って利用するだけの性質の場合(民法293条)に分類している。

5 「海は誰の所有物か」という問題について、最高裁昭和61年12月16日判決は、「海は、(中略)いわゆる公共用物であって、国の直接の公法的支配管理に服し、特定人による排他的支配の許されないもの」とした。しかし、最高裁判決は排他的支配権以外の権利については否定していない。つまり、漁業権は漁業法に基づき公共用水面に設定されている。漁民は「磯は地付き、沖は入会(いりあい)」の基本理念にのっとりルール作りを行い、互いに譲り合って海を利用して来た。沖合部分は国民みんなの入会が認められるが、ごく沿岸の部分については、漁業集落共同体の構成員に管理を任せるという考え方だ。

6 ただし、漁業者には漁業法に基づき漁業権が認められている。

政策レポート

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