姉妹都市交流の歴史的経緯と今日的意義 -姉妹都市の再活性化による地域振興への提言-

姉妹都市交流の歴史的経緯と今日的意義 -姉妹都市の再活性化による地域振興への提言-

平和外交・安全保障
はじめに

 姉妹都市は、戦後、海外に出かけることの困難な時代に、市民と市民による顔の見える平和と和解のための公的交流のチャンネルとして始まった。その後、政府の積極的な後押しも手伝って発展し、地方分権の時代を経て、地方自治体のより主体的かつ積極的な取り組みが求められるようになった。
 本稿では、姉妹都市の歴史的経緯を振り返るとともに、その今日的意義について考察する。多文化共生社会の実現という時代的要請に応えるには、国際公共財としての姉妹都市を地域振興とグローバル未来人材育成のプラットフォームとして位置づけ、多方面に活用することが有効である。そのことはまた、閉塞感の強い日本の現状を打破し、地方住民が主体となる21世紀の地方分権・地方創生時代をさらに豊かなものとしてくれるに違いない。

1.戦後における「姉妹都市」交流の経緯

 日本初の姉妹都市1)は、1955年に長崎市と米国セントポール市との間で締結された。終戦のわずか10年後、一般日本人の海外渡航が解禁(1965年)される9年前のことである。第2号は、仙台市とカリフォルニア州リバーサイド市との提携であった。その後、1950年代に米国の都市と計21件の提携が行われた。そのうち16件は米国側のイニシアティブによるものであった。
 米国は、欧州からの移民を中心に成立した国であり、18世紀以来、自分たちのルーツである都市と姉妹関係をもち長く交流をしてきた歴史がある。戦後は、民間主導の流れに加えて、アイゼンハワー大統領による「People to People Program」(1956年)が重要な後押しとなった。これは、一般市民や市民組織が外交の担い手となり、海外の市民と直接交流することで、相互理解と世界平和を達成しようという外交方針の一つである。
 同計画によってさまざまな事業が展開されたが、今日まで継続しているのは姉妹都市だけである。姉妹都市事業は米国のプロパガンダではなく、「互恵的なものであり、一方通行のものではない。事業を成功裏に導き意義あるものであるためには、われわれと海外の相手方の双方にとって有益なものでなければならない」とされてきた。
 ちなみに戦後の欧州でも、第二次世界大戦の甚大なる被害と傷・相互不信から平和への道のりの一つとして、旧敵国同士、市民同士の交流を進める姉妹都市事業が進められた。このように戦後の姉妹都市事業は、世界における歴史的な和解と平和への希求から始まったことがわかる。
 それでは何をもって「姉妹都市」というのであろうか。日本において姉妹都市を包括的に管理している一般財団法人自治体国際化協会によれば、①両首長による提携書があるもの、②交流分野が特定のものに限られていないこと、③交流に当たって議会の承認を得ているもの。これら3条件を満たすものを姉妹都市としている。
 米国の同様の組織であるSister Cities Internationalは、姉妹都市交流について、次のように指摘している(『人々による平和、グローバルな市民の50年間』より)。
「姉妹都市交流とは、数千の地元ボランティアの粘り強い精神と自治体のリーダーシップの双方の賜物である」「アメリカ以外の国では地域レベルのボランティア団体の活動が欠如している場合があり、姉妹都市が自治体間のみの連携との誤った理解がある」。
 現在、全国の都道府県および市区町村では、71カ国1765の都市と姉妹関係を結んでおり、国別では、多い順に米国(455)、中国(373)、韓国(163)、オーストラリア(107)、カナダ(71)、ブラジル(58)、ドイツ(56)、フランス(54)などとなっている(自治体国際化協会2019)。

2.地方自治体による国際交流の歩み

(1)政府の国際化政策の歴史

 ここで政府が進めてきた国際化政策の推移区分に従って、その流れを概観しておきたい。

①「国際交流の時代」(1980年代後半〜):政府主導による国際交流の促進
 政府(当時の自治省)は、戦後地方自治体が進めてきた姉妹都市などの国際交流の活発化の流れを受けて、1987年からさまざまな法整備と政府の指針を発表し、(CLAIRやJETプログラムなど)関連組織を設立。地方自治体の国際交流事業の促進に向けた環境整備を進めた2)

②「国際協力の時代」(1995年〜):公・民協働協力と民間交流の促進3)
 冷戦時代後の1994年、政府は「国際化」を新たな国家戦略として位置付けた。これにより、地方自治体によるそれまでの(国際親善を中心とする)国際交流は「国際協力」といった新たな段階に発展していった。さらに、一般市民の海外渡航が容易になるにつれて、市民同士の交流(「民際」長洲)をも取り込むようになった。
 1990年代半ば以降の地方分権化の流れを受け、平成の大合併の動きと合わせて1999年には「地方分権一括法」が成立した。これにより国と地方の役割分担が、次のように明確にされた。

国の役割
 激増する国際調整課題に十分対応できていないため、国の国内課題に関与する負担を軽減し、国の役割を国際対応等(国際社会における新たな課題に的確に対処することなど)に純化し、重点的に担えるよう強化する。

地方の役割
 住民は、サービスの受益者にとどまらず、地方自治体の政策形成に参加し、協働する主体である。また、住民、NPO、企業、教育機関、関係団体など多様に富んだ地域の主体が互いの活動を認め、評価し合い、意識的に連携・協働することにより、地域社会が総体として活性化する。
 こうした流れを受けて、政府は「地域国際協力推進のための大綱」を発表し、地方自治体と民間団体との協力・連携を進めることを促した。地域レベルの国際交流の「本来望まれる主体」「本来の担い手」は「民間部門」「住民」であり、国際交流における地方自治体の役割は、「民間部門の国際交流の促進」、そのための「公・民協働協力体制の確立」、「地域レベルの国際交流を成功に導く」ところにあるとした。

③「多文化共生の時代」(2006年〜):内なる国際化による内発的地域振興
 1990年代以降、グローバル化が急速に進展する中で、人の移動も活発化した。日本では90年の入管法改正により、日系3世まで定住在留資格が付与され、南米をはじめとするニューカマー外国人の地方定住化が進んだ。また1993年に外国人研修制度が導入され、ベトナムや中国、インドネシアなど主にアジア地域から多くの技能実習生が来日するようになった。その結果、「内なる国際化」に伴う多文化共生社会の実現に、地方自治体の関心が向けられるようになった。

(2)「グローバル化はローカルな都市に結実する」

 次に、大きく変化する国際社会の中で、地方自治体(地方政府)の位置付けがどう変化したのかについて簡単に見ておきたい。
 近代の国際社会は、主権国家(国民国家)を基礎とした関係の上に築かれており、外交などの対外関係は政府の専管事項であった。ところが20世紀後半、とりわけ冷戦構造の崩壊にともない、グローバル化が急速に進展し、カネ・ヒト・モノ・情報が国境の壁を超えて自由に行きかう時代を迎えた。こうした市場のグローバル化について、公法学の分野では、「国家の役割の相対化」「変化」として認識されている。それとともに、国民国家を基礎とする主権・国民といった基礎概念への問い直しが行われるようになった。
 一方、地方自治体(地方政府)は、近代国際法において国民国家の一部として理解されてきた。しかし、グローバル化の進展によって、国家以外の国際的アクターの一つとしてのプレゼンスが高まってきた。グローバル化に伴うさまざまな国際的な動きや法的な要請は、地方自治体の現場において(外国人住民の増加など)待ったなしの対応を迫られるようになったからである。
 こうした変化について、米コロンビア大学の社会学者S.サッセンは、国民国家内部で進行するグローバル化には「場所性」(locality)があることを指摘し、「グローバル化はローカルな都市に植えつけられ育つ」と述べている(大西楠・テア2017)。
 さらに、「国民国家内部の組織でありながらも独自の主体として自治を保障され、国際活動を通じてグローバル化を促進する存在としての地方自治体、また、グローバル化現象がまさに展開する場所としての地方自治体の姿を浮き彫りに」したと結論付けている。
 ここにグローバル時代における、地方自治体の国際的アクターとしての役割と今日的意味が見いだせるように思われる。

3.姉妹都市の今日的意義とは何か

 姉妹都市を始めとする国際交流事業は、いまや地方自治体と住民、および民間団体が協働協力して主体的に取り組むべき時代を迎えている。姉妹都市の原点となる精神を生かしながらも、時代の変化に合わせて発想の転換を図り取り組む必要がある。姉妹都市の今日的意義を考える前に、これまでの成果を課題について見ておきたい。

(1)姉妹都市これまでの成果と課題

 半世紀以上にわたる姉妹都市交流活動は、市民による草の根レベルでの相互交流を通じて、互いに顔の見える関係を作り上げてきた。市民同士の国際的な信頼関係、連帯感、親近感によって相互理解が深まり、平和と和解に寄与するとともに、政府の行う外交の基礎を固めることに役立ってきた。
 地方自治体の国際事務は、姉妹都市による交流が大半を占めている。それは、文化・芸術などの個別政策での提携や国際シンポジウムの開催などを通じて、自治体政策の研究開発や平和政策にいい影響を与えてきた。
 姉妹都市交流は、また地方自治体に文化的、行政的、経済的効果をもたらす。例えば、先進的な行政、地域運営のノウハウの入手、青少年の国際対応能力の向上、多文化共生社会づくりへの寄与、観光客誘致、外資系企業の誘致などである。そのほか、文化・教育、都市のイメージ向上、都市のアイデンティティの確立など、経済的利益だけでは測れない面もある。地域の人材、文化、資源を生かした交流事業により、そうしたソフト面の地域振興にもつながってきた。
 他方、姉妹都市が、草の根レベルの国際交流と地方活性化に寄与してきた半面、半世紀前の考え方や枠組みと時代的環境変化の間に齟齬が生じていることも事実である。例えば、①地方財政が逼迫するなかでの費用対効果への疑問、②交流事業がマンネリ化し、ビジョンや理念があいまいになっていること、③地方自治体と市民や民間団体(NGO/NPO)との連携が不十分であること、などが指摘されている。
 姉妹都市は、当初の概念やビジョンを現代に生かしながら、今日の時代的要請にマッチしたものにアップグレードしていくことが求められるのである。次に、現代における姉妹都市の意義について考えてみたい。

(2)プラットフォームとしての姉妹都市を

地域における国際交流のプラットフォーム
 姉妹都市には、①特定の事業だけではなく多様な交流を進める土台であること、②交流に終わりがなく半永続的に続くこと、などの特徴がある。そこで、国際公共財としての姉妹都市を、地域レベルにおける国際交流の「プラットフォーム」として位置付けることを提案したい。
 地方自治体が進める国際交流には、青少年教育、文化理解、スポーツ交流、経済活性化、行政職員の研究など、さまざまな分野がある。関わる主体も民間団体、政治家、経済団体、学校など多様である。国際交流事業を海外のカウンターパートと信頼関係を持って安定的に継続するには、公的な「土台(プラットフォーム)」があることが望ましい。それがあると、参加する市民にとってもやりやすく、安心感が得られるなどのメリットがある。姉妹都市というプラットフォームがあれば、次の世代に引き継いでいくことも容易になる。各地方自治体が民間団体と協働して多方面の国際活動を展開するうえでも非常に有効である。
 広島市は韓国・大邱市との民間交流が盛んで、姉妹都市というプラットフォームの上で、大学、放送局、弁護士会、在日韓国人団体など20を超える団体が活発な交流を進めているほか、中高生の相互都市訪問による青少年交流事業、大学生キャンプ、ビジネスフェアへの参加など各方面に及んでいる。

グローバル未来人材育成のプラットフォーム
 次に、地域社会を担うグローバル未来人材育成のプラットフォームとして活用することを提案したい。
 現在、在日外国人は300万人に迫ろうとしている。地域社会では、内なる国際化に伴う多文化共生社会にふさわしい社会設計と人々の意識転換が求められている。しかし、在日外国人が多くなっても、地域の人々が親しく直に交わる機会は意外と少ないのが実情だ。
 それに対して、長年姉妹都市による顔の見える草の根交流をなしてきたところでは、とくに若い人々の間で地球市民的な感性が養われつつある。姉妹都市交流を通してなされてきた未来人材育成に資する事業の中から、いくつか紹介する。
・佐賀県上峰町は、姉妹都市である韓国・驪州市との間で長年にわたりスポーツを中心として青少年(中高生)の相互訪問(ホームステイ・学校間交流)を行ってきた。青少年を中心に相互理解と友好の輪が広がっている。
・近年の韓国の若者に日本での就職希望の流れもあり、日本語を学ぶ大学生を受け入れ、企業でインターンシップを経験させて、日本のビジネスや地域に対する理解を含める事業を行っている(福岡市と釜山特別市・広州市など)。
・海外の大学誘致:函館市は姉妹都市であるロシアのウラジオストク市との交流の中から、ロシア極東連邦総合大学函館校の開校が決まり、現在でもロシアのスペシャリスト養成の教育が進められている。
・地方自治体職員の専門性を高めるために職員を姉妹都市に派遣して、語学力を始め国際交流活動に関する専門性を高める研修事業を行っている1)。
 そのほか、中高生のホームステイやスポーツ交流を実施して現地での生の体験を経験させる事業など、国際感覚をもった未来人材育成に、姉妹都市交流は今後も大きな可能性を秘めている。

4.姉妹都市再活性化のための提言

 最初の姉妹都市提携からすでに60年以上の歴史が経過し、社会の情勢は大きく変化している。それに応じて、姉妹都市の取り組みも新しい発想に基づくものに深化させていく必要がある。

(1)民間主導の国際交流に向け公・民協力体制を確立する

 姉妹都市は、地域における「国際交流の典型的な手法の一つ」であり、その重要性には変わりはない。しかし、一つの地方自治体が提携できる相手方の数には限界があること、財政的な問題などにより、自治体主導の事業には自ずと限界がある。
 そもそも地域レベルの国際交流の主体は、本来民間部門であり、公・民協働協力体制を確立することが、地域レベルの国際交流を成功に導くカギとなっている(「国際交流の方針」1987)。近年NGOや市民などによる活動が活発に展開されているが、それを行政がサポートすることによって、幅広く多様な交流を進めていくことが重要になる。
 政府も、「パートナーシップ交流」という新しい交流形態を提唱している(「大綱及び民間団体の位置付け」2000)。民間団体同士の交流・友好提携を行政が側面から支援する「パートナー自治体交流」という形態である。これは、民間団体同士が行っている友好提携などの相手方(国)の地方自治体(地方政府)と、日本側の地方自治体との間で緩やかに交流が行える土台(プラットフォーム)を提供するものだ。
 パートナー自治体交流の中身について行政は明示していないが、一つの参考例としては、MOUが考えられる。一般には「了解覚書」といわれるが、より分かりやすい表現としては「国際交流協定」である。姉妹都市提携は議会の承認が必要とされるが、MOUにはそのような手続きもないことから、近年、行政機関、大学、研究機関などが海外と国際交流に活用されている。
 現在、各地方自治体は、SDGsの精神を地方行政に生かすべく努力している。このような取り組みは持続可能な「グローバル・パートナーシップの強化」に通ずるものであり、地域の活性化にも資するものと思われる。

(2)地方創生に資する事業内容の多様化をはかる

 姉妹都市事業は、行政が主導で進めるとどうしても初期に始めた内容を中心に展開しがちである。しかし、全国で実施されているさまざまな事業内容を参考に、民間団体とも協働して内容を多様化しながら、地方の活性化につなげていくことも必要である。姉妹都市を国際公共財というプラットフォームと位置付け、その土台の上に青少年交流、スポーツ交流、経済団体や行政職員の交流など、地方創生に向けた多様な活動がさらに実りあるものとして展開していくと思われる。

(3)越境連携の活発化で地域経済発展を促すインフラに

 姉妹都市は、基本的に一対一の関係である。しかし、2019年に姉妹都市提携がなされた東京都目黒区と韓国ソウル特別市中浪区は、それぞれが中国北京市東城区とも姉妹都市であったことから、3地域の姉妹都市として協定を発展させた。また、2020年12月には、常陸大宮市(茨城県)と蔵王町(宮城県)が、東京オリンピック・パラリンピックで太平洋の島国パラオのホストタウンであったことをきっかけに、友好都市協定を結ぶことが決まった。両市とも太平洋戦争の激戦地パラオと歴史的な交流があり、今後、パラオとの国際交流、災害支援、観光教育などの面で、お互いの地域発展が期待されている。
 2000年代に入り、北東アジア地域では、地方自治体間の越境連携が活発化している。多数の越境地域形成が進み、グローバル市場の下での経済圏域に発展しているという(中山2010)。このように、現在、複数都市間の提携が生まれつつあり、姉妹都市はグローバルなネットワークを多角化させることによって、更なる地域経済発展を促すインフラにもなりうると考えられる。

最後に

 地方自治体は少子高齢化による人口減少問題に直面しており、持続可能な地域社会づくりによる地方創生が喫緊の課題になっている。政府は「SDGsによる地方創生」を打ち出しているが、姉妹都市というプラットフォームを活かし、国内外のパートナーシップを強化して活用することは、新たな活力ある地域社会づくりのための第一歩となると思われる。
 今日における姉妹都市は、国内外の一対一だけではなく複数自治体間、さらに国内複数自治体と海外自治体など、様々な形態へと発展している。とくに地域での活躍が期待されるグローバル未来人材の育成において、国内外のネットワークと連結した姉妹都市の活用は極めて有効である。グローバル時代において、姉妹都市交流を地域振興や未来人材育成策として、新たな視点で活かすことが求められていると言えよう。

 

(注)

1)姉妹都市の名称:「姉妹都市」という名称は、米国におけるSister Cityの訳語であるが、日米間の姉妹都市提携の初期においては、さまざまな訳語が使用されていた。その後、1950年代末ごろから「姉妹都市」に落ち着ていった。現在、「友好都市」の用語も使われているが、明確な定義がなされているわけではなく、姉妹都市とほぼ同じく使用されている。本稿では、基本的に姉妹都市を用いた。

2)政府による国際交流政策(1980年代):1987年から3年間でさまざまな法整備と政府の指針を発表し(「地方公共団体における国際交流のあり方に関する指針(1987)」「国際交流のまちづくりのための指針について(1988)」「地域国際交流推進大綱の策定に関する指針について(1989)」など)、地方自治体の国際交流事業の促進に向けた環境整備を進めた。88年には地域の国際化を推進していくための自治体の共同組織「一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR)」を立ち上げた。さらに地域レベルの国際化を進めるために、中核的民間国際交流組織「地域国際化協会」の設立を各地方自治体に要請した。また地方自治体は、総務省・外務省・文科省・CLAIRの協力のもと、87年に「JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)」を開始し、教育分野における海外青年の誘致を進めた。

3)地方分権時代の到来と地方自治体と民間活動の協働:冷戦時代が終結すると、環日本海圏の経済交流など東アジア地域の経済交流が活発化した。1994年に政府は、「国際化」を新たな国家戦略として宣言したことから、地方自治体による海外の地方政府とのさまざまな国際交流施策が多様化して展開するようになり、それまでの交流を基盤に「国際協力」といった段階に発展していった。一般市民が仕事や留学、旅行などでさかんに国境を超えるような傾向が生まれると、市民同士が行う「民際」が重要だとして「民際外交」(長洲一二)を理念とする地方自治体による国際協力事業が展開されるようになった。
 1990年代半ばからの地方分権化の流れを受けて、1999年には平成の大合併の動きと合わせて「地方分権一括法」が成立した。これによって、明治以来の中央と地方の関係について、上下・主従関係から対等・協力関係へと変化し、地方分権の主体は住民・自治体であるとの認識が生まれた。その結果、地方の事情や課題に精通した地方の発意と多様性を重視し、個々の地方自治体が地方の事情に応じた行政が展開できる体制が整備された。
 地方分権一括法が国と地方との役割分担を明確にしたことを受けて政府は、「地域国際協力推進大綱の策定に関する指針」(1995年)を示し、都道府県と指定都市に対して「地域国際協力推進大綱」の作成を要請した。さらに2000年には「地域国際協力推進大綱及び自治体国際協力大綱における民間団体の位置付け」を策定して、民間団体との協力・連携を進めることを促した。その背景には、87年の「指針」以来、何度も述べられているように、地域レベルの国際交流の「本来望まれる主体」「本来の担い手」はあくまでも「民間部門」「住民」であるとの認識がある。つまり国際交流における地方自治体の役割は、「民間部門の国際交流を促進するため」に、「公・民協働協力体制を確立」することで「地域レベルの国際交流を成功に導く」ことにある。

 

■参考文献

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毛受敏浩『姉妹都市の挑戦—国際交流は外交を超えるか—』明石書店、2018年.

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