災害救助における日本の国際協力の現状と課題 ―初期対応における災害救助犬活用の観点から―

災害救助における日本の国際協力の現状と課題 ―初期対応における災害救助犬活用の観点から―

2016年11月25日

はじめに~私と災害救助犬とのかかわり

 まず私と(救助)犬とのかかわりを紹介しておきたい。私は、防衛大学校(第11期)卒業後、海上自衛隊に入隊して35年間奉職し、呉地方総監を最後として2002年に退官した。
 海自呉基地の吉浦地区には陸・海・空自衛隊の燃料補給基地(海自呉造修補給所貯油所)があるが、当時そこによく訓練された警備犬が20数頭いた。警備犬としてジャーマン・シェパードを調達・訓練しているが、退官の前年に新しく調達した犬に対して私が(総監として)命名することになった。その犬は東広島市出身であったので、広島=安芸国にちなんで「安芸」と命名した。それとは別に翌年1月にその基地内の犬から仔犬が6頭生まれた。しかし予算上の制約から4頭しか登録できないために、残りの2頭をどうするかとなった。1頭は引き取り手がついたが、もう1頭は引き取り手がなく(通常そういう場合は、慣例で保健所に処分を依頼するとの事だったが、それではかわいそうだと思って)退官を間近に控えた私が里親として引き取ることにした。そして名前も、前年のこともあって「安芸2号」と名づけ、退官後(02年3月)鎌倉の自宅に連れて帰ったのである。
 その後、散歩仲間から「大型犬は早いうちに訓練した方が良い」といわれ、紹介された訓練所がたまたま救助犬訓練士協会(RDTA)というNPO法人であった。そのご縁で私も災害救助犬のハンドラーとしての訓練を受けて、約5年後に国際救助犬試験に合格(2007年4月)。その際の成績がよかったので、同年6月に行われた救助犬世界選手権(オーストリア)にも出場することとなった。
 その後、神奈川県警の嘱託救助犬に委嘱され、2008年6月の岩手・宮城内陸地震の時には初めて災害現場に出動する機会が与えられ、同じNPO所属の救助犬と共に宮城県の駒の湯温泉の土石流現場の捜索に当たった。
 このような現場への出動のほかわれわれのNPOは、神奈川県警との帯同訓練、横浜市消防局との協同訓練、自衛隊警備犬の訓練指導協力などを行っている。最近の大規模災害の出動例では、2011年の3.11東日本大震災の際、警察庁の要請によりRDTAから6頭8名が出動した。
 ここでRDTAの位置づけとその活動等について紹介しておく。
<国際救助犬連盟(IRO=International Rescue Dog Organization)>
 IROは、オーストリアのザルツブルクに本部を置き、41カ国116団体が加入する(2016年8月現在)国際ボランティア団体だ。国際捜索救助諮問グループ(INSARAG)に組み込まれ、国際出動可能な高練度の災害救助犬チームの訓練・育成に貢献している。また、独自の国際認定基準を持ち、それに基づく各種試験、世界選手権、出動認定試験(MRT)などを実施している。
<NPO法人救助犬訓練士協会(RDTA=Rescue Dog Trainers’ Association)>
 もともと神奈川県内の警察犬を中心としたプロ訓練士の有志が、犬の能力と自分たちの技術を社会に役立てようとして立ち上げたNPO法人で、正会員102名、団体会員3団体、個人3名で構成されている(2016年1月現在)。
 NPO設立当初からIROに加盟し、その国際基準に従って救助犬の訓練を行っているほか、本協会が主催して年数回国際救助犬試験を実施している。また、毎年の神奈川県県警嘱託救助犬の選考にも協力しており、本協会が推薦した犬を神奈川県警が救助犬として認定している。
 RDTAは、IRO公認審査員2名、INSARAG認定出動犬2頭を保有しており、理事長の村瀬英博はIRO世界選手権準優勝(2014年)の経験を持つ世界でも有数のプロの訓練士でもある。さらに台湾の高雄政府消防局、横浜市消防局、藤沢市など各自治体と出動・訓練や技術交流などの各種協定を締結している。
 なお、救助犬とハンドラーの関係は、基本的に信頼関係をベースとしており、そのペアーの信頼関係がしっかり築かれていてこそ、訓練や現場での捜索活動がスムーズにいくという特徴がある。

1.世界における自然災害発生状況と国際協力体制

(1)自然災害発生の状況と国連の対応
 過去1970年から2008年までの自然災害発生件数やそれに伴う死者数、被災者数、被害額の統計を見ると、増加の一途をたどっており、毎年約1億6000万人が被災し、約10万人の命が奪われ、400億ドル以上の被害が発生している(1970-2008年の平均)。
 こうした現状を踏まえて国連では、1990年代を「国際防災の10年」と位置づけて対応し始め、1994年に第1回国連防災世界会議が横浜市で開かれた。そのとき「より安全な世界に向けての横浜戦略とその行動計画」が採択され、(95年の阪神・淡路大震災をきっかけに)98年には神戸市にアジア防災センターが設置された。
 2000年には、国際防災戦略(ISDR)が開始され、国連ISDR事務局も設置された。そして05年第2回国連防災世界会議が神戸市で開かれ、「兵庫行動枠組(2005-2015)」が採択された。さらに2011年の東日本大震災のあと、2015年には、第3回国連防災世界会議が仙台市で開催され、「仙台防災枠組(2015-2030)」が採択された。
 地球規模の防災体制の確立に向けては、このような形で国連を中心に進められている。

(2)国連の防災組織
①国連災害評価調整チーム(UNDAC=United Nations Disaster Assessment and Coordination)
 UNDACは、緊急事態の初動段階で国連や被災国政府をサポートするために1993年に創設され、国及び被災地レベルで続々と届く国際援助の受け入れ調整に当たるほか、急な出動要請にも対応し、世界中どこにでも12~48時間以内に展開可能な体制を整えている。事務所機能は、国連人道問題調整事務所(OCHA)に置いている。
 主な任務としては、
 ・アセスメント
 ・コーディネーション
 ・情報マネジメント
などである。
 これまで236の緊急ミッションを102カ国で実施した(2016年9月現在)。
②現地活動調整センター(OSOCC=On-Site Operations Coordination Center)
 UNDACが現地活動調整センターを設置して運営している。このセンターは、各国から被災地にやってきた国際USARチーム(USAR=Urban Search And Rescue、都市型捜索救助隊)をどのように展開するかの調整機能を果たしている。
 東日本大震災のときには、JICAの東京本部内にUNDACが設置されてOSOCCが各国からの援助チームの調整に当たった。
③国際捜索救助諮問グループ(INSARAG=International Search And Rescue Advisory Group)
 INSARAGは、国際USARチームとその活動現場での調整に取り組む災害多発国及び災害に対応する国や組織から構成されたネットワークで、事務所機能はUNDACと同様に、国連人道問題調整事務所(OCHA)に置いている。
 もともとアルメニア地震への対応の教訓から1991年に設立された組織で、「国際捜索救助活動の効果と調整機能強化」に関する国連総会決議第57/150号(2002年12月16日)を根拠としている。
 主な任務としては、
 ・より効果的な緊急事態への備えと対応
 ・災害現場におけるUSAR間の効率的な協力の促進
 ・災害多発国(途上国を優先)における捜索救助能力の向上を図る
 ・国際的に受け入れられる手順とシステムの開発
などである。
④INSARAG外部評価分類(IEC=INSARAG External Classification)
 INSARAGが、国際USARチームをその活動能力に準じて「中級(ミディアム)」「重級(ヘビー)」にランク付けし認定している。ちなみに、日本の国際緊急援助隊はヘビーに認定されている。中級と重級の違いは表1のとおりであり捜索犬(災害救助犬)による捜索を重視している。

【表1】重級(Heavy)と中級(Medium)の違い

2.わが国の国際防災協力

 前述のような国連を中心とする国際防災の取り組みを受けて日本政府は、次に記す分野ごとに資金援助等を行っている。
 ・災害対応:国連人道問題調整事務所(OCHA)
 ・災害予防:国連国際防災戦略(UN/ISDR)
 ・復旧・復興:国際復興支援プラットフォーム(IRP)
 アジア太平洋地域における防災協力としては、アジア防災センターの活動やAPECにおける防災協力を通じて、防災のノウハウや情報の共有などの面で貢献している。
 現地に直接かかわるものとしては、二国間防災協力がある。具体的に言えば、日本の海外に対する国際緊急援助隊(JDR=Japan Disaster Relief Team)による人的貢献である。
 国際緊急援助隊は、海外で発生した自然災害や建築物の倒壊など人為的災害に対して行う人的支援で、「国際緊急援助の派遣に関する法律」(1987年、92年改正)に基づくものである。92年の法改正によって自衛隊の部隊派遣もできるようになり、種別としては、①救助チーム、②医療チーム、③専門家チーム、④感染症対策チーム、⑤自衛隊部隊がある。実際の派遣においては、これらの中から複数が一緒になって派遣されることになる。
 特に救助チームにおいては、3庁(消防庁、警察庁、海上保安庁)、医療チーム、構造評価専門家チーム、救助犬、JICA(業務調整)から構成され、団長は外務省から出ている。
 救助チームの標準編成は69名体制で、団長を中心とする指揮本部(医療班、構造評価など)のもとに、二つの中隊とハンドラー5名(救助犬4頭)が置かれる。この救助犬は、警視庁の警備犬を転用しているが、国際認定基準を合格しているわけではない。これまで19回派遣しており、チームごとの評価付け(IEC)では、ヘビー認定を受けている(2010年)。
 なお、これは大規模災害に対応するアメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA=Federal Emergency Management Agency)のタスク・フォース(USARチーム)の規模(70名体制)と同規模である。ただし、FEMAの救助犬は6頭いるが、日本の場合は4頭となっている。

3.災害初期対応における災害救助犬の活用

(1)人命救助と犬
 そもそも犬は、1万年以上前に人間の家畜となり、人間のために作業をするように改良を重ねられてきた動物で、人間の数万から数億倍の敏感な嗅覚を持つ。そのような特性をもつ犬は、「嗅覚を使って生きもの(生きた人間)を探し当てる」という行動が可能であるために、うまく訓練して災害救助犬に使われるようになった。海外の災害現場では、災害救助犬が当然の如く活躍している。例えば、地震の災害時など、救助隊が駆けつけるときには必ず救助犬を伴っている。
 近年、災害救助犬に対する関心が高まっているが、一部誤解があるようだ。災害救助犬は、生存者はもちろんのこと、ご遺体も発見してくれるという認識を持つ方も少なくないようだが、これは誤解である。あくまでも災害救助犬は生存者にしか反応しないように訓練されているので、「生存者の捜索・発見」に特化している。ご遺体に対してもある種の反応は示すものの、(救助犬が)吠えて知らせることは一般的にはない。
 遺体捜索を目的とする犬もいるが、民間では原臭の入手が困難なので国内での遺体捜索犬の育成には限界がある。もちろん、国によっては、遺体にだけ反応する犬を訓練しているところもあり3.11の際メキシコから6頭派遣されたがうち2頭は遺体捜索犬だった。
 生存者の捜索・発見に関していうと、仮に生存者がいない場合、限りなく生存者がいないという確証(救助犬が反応しなければいないということになる)を得ることで、次のステップに行くことが可能になるという効用もある。すなわち、生存者がないということを前提に重機の投入や部隊の撤収を進める根拠となる。
 一例を挙げよう。岩手・宮城内陸地震のとき(2008年6月)、国道の脇のがけが崩落して200メートル下の谷底に車が2台巻き込まれてしまった。われわれの災害救助犬チームもそこに行ったが、自衛隊、消防、機動隊など190人が現場に駆けつけていた。ところが、二次災害を心配して何の対応もできずにいた。そのとき救助犬は(谷底に下りて)捜索可能だということが了解されて、現場指揮官の要請によりわれわれの救助犬を谷底に投入した。2時間ほど捜索したが、何の反応もなかった。当時あと1台車が巻き込まれているという未確認情報があり現場を撤収できない状況であったが救助犬による捜索の結果190人の部隊は撤収された。こういうやり方もできるわけだ。後日談だが、その情報は結局誤情報だった。このように限りなく生存者がいないという判断材料に、救助犬を活用することもできるのである。

(2)災害救助犬出動の事例
 表2は、最近の日本国内から出動した事例で、そのほとんどが民間の救助犬であった。これらの例においては、残念ながら生存者の発見はなかった。
 また国内で海外出動可能な民間団体は3団体程度でありRDTAはインドネシアには2頭出動(うち1頭INSARAG認定犬)したがネパールには資金面の制約で断念した。

【表2】最近の災害救助犬出動事例

 一方過去の国内の大規模災害において海外から救援に派遣された事例は次のとおり。

①阪神・淡路大震災
 このときは海外救助チームの受け入れが日本としては初めてのケースだったために、犬の検疫手続きに手間取り現地入りしたのは地震発生後3~4日後となってしまった(なお、その後この点は大幅に改善され、スムーズに出入国できるようになった)。

【表3】阪神・淡路大震災への海外からの救助チーム

②東日本大震災
 東日本大震災においては計20チーム890名のUSARチームが派遣されたが、救助犬チームの実績については表4のとおり。
 韓国から(震災発生の翌日)3月12日に先遣隊に同行して救助犬2頭が成田に到着している。かつて中国・四川省の大地震のとき(2008年5月)日本の国際緊急援助隊を派遣したが、救助犬は第二陣だったことを考えると、韓国の迅速な救助犬派遣はすばらしい対応といえる。この韓国から派遣された災害救助犬だが2頭のうち1頭が最初の捜索時に右足裂傷の怪我をした。そのとき同じ宿舎に居たRDTAチームの玉川医師(脳外科医)が緊急に外科手術を施して縫合したというエピソードがあった。
 米国の144名は、FEMAのタスク・フォースの2部隊(バージニアとロサンゼルス)で各タスク・フォースは6頭の救助犬を保有している(ハンドラーは民間のボランティア)。メキシコは救助犬だけを派遣したが、6頭のうち2頭は遺体捜索犬だった。
 海外から派遣された救助犬は合計8カ国計41頭であったが、国内からの出動した民間救助犬が30-40頭であったので、海外からのほうが多かった。それほど日本には現場で運用可能な救助犬が少ない。

【表4】東日本大震災への海外からの救助犬派遣状況

(3)RDTA救助犬出動の状況(東日本大震災)
 2011年3月11日午後2時46分に地震が発生したのを受けて、翌12日午前7時40分には出動準備を完了し、海自厚木基地から海自大型輸送ヘリで宮城県の霞目飛行場(陸自駐屯地)に到着(3月12日正午ごろ)、陸自車両で宮城県警察学校に移動した。1週間にわたり現地活動拠点として宮城県名取市にある宮城県警察学校に宿泊しながら、宮城県名取市、岩沼市、仙台市、亘理郡亘理町、同山元町で活動した。
 RDTAチームは、公的機関として初めて(神奈川県警経由)警察庁の要請に基づき出動したが、広島県呉市の海自吉浦基地から出動した2頭と厚木基地で合流して、被災地に向かったこともあり、往復の輸送については(自衛隊の協力により)スムーズに実施された。
 2つのUSAR救助犬チームを編成し、1チーム4名3頭体制でチームリーダーはAチームを山田が、Bチームを玉川会員がそれぞれ担当した。成果としては、老夫婦1組(2人)を目視により発見救出したほか、生存者の発見はなかった。

4.3.11災害救助犬運用に関する教訓と提言

(1)3.11出動の教訓
①救助犬の一体運用の必要性
 RDTAは3.11出動の教訓から災害発生後極力早い段階での救助犬に適する現場の選定と集中運用の必要性があり、そのために対策本部に救助犬に関するスタッフを派出することを提言した。本件はその後、2014年の広島土砂災害出動以降改善されつつあり、民間チームも窓口を一本化してまとまって対策本部に助言できる体制がほぼできあがっている。
②救助機関間の情報共有の必要性
 現場における災害救助犬チームの主たるミッションは生存者の捜索であって、実際の救助作業は自衛隊・消防・警察(機動隊)などが行う。しかしそれぞれの救助部隊が統一した指揮下にないために、救助犬チームの活動に混乱をきたすことがよくある。
 一例を挙げよう。現場の被害家屋に、「ここは既に(自衛隊が)捜索済み」といった意味のマークをつけるが、その表記方法が、自衛隊、消防などで違っているために、情報共有がされていなかった。
 そこでRDTAの公式報告書(2011年5月31日)においてINSARAGガイドラインにある国際基準のマーキングを活用して情報共有をすべき旨を提言した。本件はその後、2014年4月の消防庁通達により改善され情報の共有化が進んでいる。

(2)災害救助犬の出動体制の在り方
①出動体制の在り方
 国として望ましい救助犬の出動体制としては、諸外国のように公的機関が基本的に救助犬を保有し、民間でそれを補強する体制である。救助犬の育成期間は最低2年、運用期間は最大5年程度であり、現在はほとんど民間頼りになっている状況なので、もう少し国として助成すべきである。
 例えば、盲導犬のように、身体障害者補助犬法によって国が認定基準を明確にすると共に、国や自治体が助成するしくみが出来ることが望ましい。
②救助犬認定の標準化
 現在国内に統一された救助犬認定基準がなく民間諸団体がばらばらで認定している状況なので、IROの国際基準を適応して標準化を図るのも一案である。東日本大震災後、自衛隊及び民間の救助犬についての関心が高まり、現在RDTAが主催するIROの国際救助犬試験に毎回60頭程度が参加している。

(3)官民一体の出動態勢構築の必要性
 大規模災害に対する出動態勢については、国内外の派遣を問わず、官民一体の体制を構築する必要がある。しかし現在の国際緊急援助隊救助犬チーム(5名4頭体制)では質量ともに不十分であり、将来的には民間救助犬も活用し民間の医師看護師と同様に国際緊急援助隊に組み込むことも考えていいのではないか。

5.今後の課題と対応

(1)官有救助犬の増勢
 官としては、官用救助犬の養成、保有が必要である。自衛隊(海・空のみ)が保有する警備犬は280頭ほどいるが、この1割でも救助犬の訓練をして養成しておけば(警備犬の多機能化)自衛隊独自の救助部隊(USARチーム)としての運用が可能となり災害初期段階でかなり有効であろう。
 因みに現在海・空自計5頭の警備犬がIRO国際救助犬に認定されているが、陸自や消防は犬そのものを保有していない。警視庁は警備犬を保有するが、救助犬として育成しているのは4頭のみ。その意味でも、もう少し自衛隊警備犬の活用が国としては望まれる。

(2)民間救助犬育成の強化
 最近民間諸団体が連携協力してネットワーク化を図ろうと努力している。これまでそれぞれがばらばらの基準で救助犬の認定をしていたので、IROに準じて統一化し、MRT(出動資格認定試験)の日本版をつくろうという動きもある。救助犬出動チームの養成とその体制の整備の一環として、国内初のIRO Team Competitionを2016年10月にRDTA主催で実施することを計画している。この夏、そのための準備として長野県でセミナーを開催し、多くの国内救助犬諸団体が参加した。
 これら民間の動向に関する国や自治体の協力支援が望まれる。

(3)官民救助犬の国内外出動態勢の練成・強化
 できあがった救助犬の出動態勢の強化も課題である。都市型捜索救助隊(USAR)としての救助犬チームは、練成訓練に極力参加して救助部隊との連携を強化する必要がある。例えば、国際消防救助隊(International Rescue Team of Japan Fire Service)が中心となって企画する救助訓練があるので、それに参加する。
 また大規模な国際訓練として、ASEAN地域フォーラムでは、災害援助実動演習(ARF DiREx= ASEAN Regional Forum Disaster Relief Exercise)が2011年から行われている。2011年の演習に海自の2頭の救助犬と民間からはRDTAが参加しようとしたが、外務省やJICAとの調整がうまくいかず実現できなかった。

おわりに

 救助犬は、育てるのに時間がかかるし、技術的にもなかなか難しい上、実際に現場に出動して役に立つ犬は国内に30~40頭程度しかいない。また救助犬を育成しても、大規模な震災が起きるのは、国内ではせいぜい3年に1度程度で毎年あるわけではないから、費用対効果の問題もある。しかしこれをアジア太平洋地域に拡大してみると、ほぼ毎年どこかで災害が発生しているので、こうした救助犬という資源を「国際公共財」として活用するような発想も必要ではないか。

(本稿は2016年8月25日に開催した政策研究会における発題を整理してまとめたものである)

政策オピニオン
山田 道雄 NPO法人救助犬訓練士協会顧問
著者プロフィール
1945年愛媛県生まれ。防衛大学校(11 期)卒。67年海上自衛隊入隊。85年護衛艦やまぐも艦長、その後防衛庁海上幕僚監部課長、練習艦隊司令官などを経て、海上自衛隊幹部学校長、海上幕僚副長、呉地方総監を歴任。元海将。現在、㈱ユニマットライフ顧問、NPO法人救助犬訓練士協会顧問、NPO法人平和と安全ネットワーク理事。

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