学校における子供の携帯電話持ち込みを考える

学校における子供の携帯電話持ち込みを考える

家庭基盤充実
中学校への携帯持ち込み容認へ

 7月、文科省の有識者会議(「学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議」)が、一定の条件付きで、学校又は教育委員会を単位として中学校生徒の携帯電話持ち込みを容認する方針を示した。
 持ち込み容認の理由として有識者会議の審議報告では、一つに登下校中の緊急時の連絡手段を確保したいという保護者ニーズを挙げている。ただ、有識者会議のヒアリングで保護者団体の代表は、いじめ等のトラブルや携帯所持・非所持という格差を懸念し、保護者ニーズは高くない、時期尚早との見解を示している。
 もう一つは、子供への携帯電話普及率の上昇である。内閣府調査(「2019年度青少年のインターネット利用環境実態調査報告書」)によると、スマホ・携帯電話の所有・利用率は小学生55.5%、中学生66.7%。近年は低年齢化が進み、親とスマホを共有する形で低年齢層(0歳から9歳児)の57.2%がインターネットを利用している。
 子供の携帯電話利用の現状を踏まえ、保護者の責任を明確化し、子供たちにも主体的に考えさせる必要があるという文科省の判断があったと思われる。

学校持ち込みの議論

 携帯電話の学校持ち込みについては、2009年に文科省が大阪府の携帯持ち込み禁止に追随する形で、小中学校への携帯持ち込み原則禁止の通知を出している。
 その後、大阪府が登校時間帯の北部地震発生をきっかけに、18年10月に登下校中の安全確保の観点から、持ち込み禁止を一部解除。大阪府に続き、東京都が昨年6月に、中学校・高等学校等への持ち込み禁止を解除した。今回も大阪府や東京都の方針に政府が後追いをした格好だ。
 ただ有識者会議では学校関係団体、保護者団体、専門家からは、緊急時の連絡手段であったとしても、携帯電話持ち込み反対が大勢を占めた。ネット依存症の専門家で国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長は第6回有識者会議ヒアリングで、「インターネットから離れることのできる貴重な場が失われ、子供のネット依存度が高まる可能性がある」と強い懸念を示している。

教育現場における取り扱い

 全国都道府県、市町村教委及び小中高等学校等対象の調査(2019年8月調査)によると、学校における教育活動に直接必要のない物であることから、小中学校の大半が「原則持ち込み禁止」。その上で「緊急時の連絡手段の確保」など、一定の理由・事情があれば保護者からの申請によって、制限付きで個別的に認めるという方針を取っている。
 今回の文科省通知では、「一定の条件を満たした上で、学校又は教育委員会を単位として持ち込みを認める」という文言を付け加えている。
 一定の条件とは、①生徒が自ら律することができるようなルールを、学校のほか、生徒や保護者が主体的に考え、協力して作る機会を設けること。②学校における管理方法や、紛失等のトラブルが発生した場合の責任の所在が明確にされていること。③フィルタリングが保護者の責任のもとで適切に設定されていること。④携帯電話の危険性や正しい使い方に関する指導が学校及び家庭において適切に行われること。この4点である。
 つまり、子供の携帯電話の取り扱いについて学校や保護者に対して、互いに話し合ってルールを作ること、フィルタリングの設定、携帯の危険性や使い方を適切に指導するよう求めている。また教育委員会や学校に対しては情報モラル教育の充実、ネット上のいじめや犯罪被害から子供を守るために積極的な啓発活動や指導を求めている。

家庭の保護者責任が問われてくる

 子供の携帯電話の問題は地域によって状況が異なる。その意味では、学校における携帯電話の取り扱いに関わる問題は、それぞれの自治体、学校の実状を踏まえて、現場で取り決める事項でもある。
 今回の通知によって、原則禁止の方針を徹底していた学校では、新たな対応を迫られることになる。千葉大学教育学部の藤川大祐教授は「有識者会議の方針が、新たな持ち込み需要を喚起してしまう可能性が高い」と指摘している(2020年7月30日付け「教育新聞」)。
 携帯持ち込みを認めた大阪府では、「小中学校における携帯電話の取扱いに関するガイドライン」を作成し、保護者の管理責任を明記、学校には積極的な取り組みと指導、児童生徒には携帯電話の使い方のルールを示している。緊急時の連絡手段の確保というニーズはまだ低いとは言え、学校現場は保護者からの申し出があった場合に備え、ガイドラインを作成する必要がある。
 埼玉県では児童生徒自身が主体的に考え、判断できるよう指導するという観点から、14年度から、「生徒自身による『私たちのネット利用ルール』づくり」の活動に取り組んでいる。児童生徒自身がスマホやネットを管理できる力を身に付けさせる、育成指導である。
 最後に、子供の携帯電話の取り扱いは基本的に家庭の問題であり、保護者の管理責任が問われる事柄である。今回の有識者会議の議論はスマホ育児の広がり、携帯電話の低年齢化等を鑑み、子供の携帯電話の取り扱いに係る保護者の管理責任を求めたものとも言える。その意味で、家庭の役割、親の責任が大きい。学校や行政には、保護者が責任を果たせるよう家庭教育支援の取り組みが求められる。

政策オピニオン
文科省は7月、登下校中の安全確保等の観点から、一定の条件付きで中学校への携帯電話持ち込み容認の方針を示した。ゲーム依存、ネットいじめなど子供の携帯電話に係る問題が深刻化するなか、家庭の保護者の管理責任が問われている。

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