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2019年4月19日

結婚と家族の安定が子供の情緒、経済的豊かさに影響―アメリカの研究に見る子供の発達と結婚、家庭―

月刊 EN-ICHI FORUM(圓一フォーラム)2019年4月号
子供の発達において、家庭が与える影響は大きい。結婚と子供の発達に関するアメリカの研究を紹介する。(参考文献の引用部分の訳は本誌編集部)

家族は人権の基盤

 米ブリガムヤング大学ロースクール教授で家族法学者のリン・ウォードル(Lynn D. Wardle)氏は「壮健な家庭は子供が人権をより良く享受するために最も安全な基盤であり、頼もしい源である」と論文で述べている(『家族:人権の基盤』〈The Family: The Foundation of Human Rights)。
 一方で、アメリカでは法律婚をしていない同棲カップルも多く、婚外子の割合が全出生の約4割を占める。同教授によると、同棲を経験するカップルは関係を解消する可能性が高く、また結婚に至った後でも離婚の可能性が高くなる、という。同棲カップルの多くは3年以内に関係を解消するか結婚しているが、結婚している成人の割合は1960年の72.2%から2013年は50.3%に低下しており、多くのカップルは解消に至っているという。
 また、通常は男女が結婚前に互いの希望や恐れ、期待を話し合うが、そうした準備期間を経ずに同棲という形で性的な試験期間に入ってしまうと、かえって必要なコミュニケーションの機会を逸してしまい、良好な結婚が損なわれるというわけである。
 そして、ウォードル教授が強調するのは、「両親のいる家庭と比べ、最初から片親家庭あるいは婚姻関係が破綻した家庭の子供は情緒面・行動面で問題を抱えることが多い」という点である。特に男性の場合、思春期の犯罪行為と家族構成には関係があることが知られているという。
 同教授は論文の中で次のように述べている。
 「離婚や両親の別居は、最初から片親しかいない家庭よりも強く非行・少年犯罪と関係している。離婚家庭の子供は精神的に大きなトラウマを負っており、そのトラウマが非行・犯罪に強く関係している。婚姻関係が破綻した家庭における非行の割合は、両親がそろっている家庭と比べて10%から15%高く、薬物やアルコールに依存する子供が多くなる」
 「家族構成は個々の家族のレベルだけでなく、地域や共同体のレベルでも非行・少年犯罪に影響する。ある家族の周囲に住んでいる片親家庭の数が多ければ、その家族の統合は青少年の暴力行為を下げることにはあまり役立たない」
 子供たちは、行動面や学習面で様々な問題を経験するリスクがより大きくなる。
 そして、こうした傾向は、人種、家族の背景、近隣環境、認識能力の条件を同じにして比較しても変わらないという。

実の両親が揃った家庭の効果

 一方、「生みの両親がそろった家庭は、子供の非行・犯罪(予防)に対して好ましい効果をもちうる」と同教授は指摘している。米司法省発行の年次報告(「The 2006 National Report on Juvenile Offenders and Victim」)を用いて、「実の親と暮らす子供は他の家族形態にある子供より法に抵触する行動をとる割合が低い」「実の両親と暮らす17歳の子供のうち、ギャングと関わりを持ったことがある者は全体の5%で、他の家族構成では12%であった。同様に、実の両親と暮らす子供のうちマリファナ使用歴がある者は30%で、他の家族構成では40%であった。重度の傷害(行為)が20%対35%であった」などのデータを紹介している。
 こうしたことから、ウォードル教授は「子供たちに両親を与える最も良い方法は、両親に法的結婚を奨励することである。法的に結婚した両親は一般的に子供の権利を守る。子供たちを守るために、我々は望ましい養育制度としての結婚を奨励し、強化していく必要がある」と述べている。

経済的利益への影響

 また、アメリカン・エンタープライズ研究所と家族問題研究所が2015年に発表した共同研究の報告書『強い家族、繁栄する州』では、結婚と家族の安定が経済的利益に大きな影響を与えることを示している。
 この研究では、「一人当たりのGDP」「子供の貧困率」「平均世帯収入」、そして低収入の家庭で育った子供が、より高い階層に移動する割合を示す「経済的流動性」について分析。特に強い影響を与えるのは、「結婚した両親が子供を育てている家庭(Intact Family)」が州全体に占める割合だった。
 「親が結婚している」など安定した家庭が占める割合が多い州ほど、経済的により豊かで、チャンスに恵まれ、子供の貧困や暴力犯罪などの社会的問題も少ない、という。そして、「平均世帯収入」「子供の貧困率」「経済的流動性」の三項目に対して、「人種構成」「教育水準」「女性の労働力参加」「都市化」「税制」などこれまで影響が大きいと考えられてきた他の要因以上に、「結婚した両親が子供を育てている家庭」の割合が強い影響を与えていると指摘している。
 こうした研究結果を踏まえて報告書は、健全な結婚文化を再生し、州と国家の繁栄を導くために、若者に対する職業教育や見習いプログラム、離婚危機にあるカップルが和解するための教育プログラム、結婚を強化する社会的運動、といった政策の必要性を提言した。
 この他、結婚している人は独身の人より人生の満足度が高いという研究成果を、全米経済研究所が2014年に発表している。結婚自体に幸福度を高める肯定的な効果があり、その幸福度は一時的なものではなく長続きすることを示した。

 

参考文献〉

L.D Wardle (2016) The Family: The Foundation of Human Rights, International Journal of the Jurisprudence of Family