2020年米大統領選挙 「反トランプ」メディアとの闘い

2020年米大統領選挙 「反トランプ」メディアとの闘い

2020年12月11日
平和外交・安全保障
はじめに

 まれにみる激戦となった2020年米大統領選挙は、一時沈静するかに見えた新型コロナ・ウィルスの感染拡大が再び深刻になる異常な状況の中で実施された。世論調査では、民主党候補のバイデン前副大統領(77)の優勢が伝えられ、再選を目指す共和党候補トランプ大統領(74)が追う形で11月3日の投票日を迎えた。民主党のバイデンが「勝利宣言」をしたものの、厳密には、大統領選挙はまだ集結しておらず、継続している。トランプが敗北を認めない一方、バイデンは次期大統領として着々と政権の準備を始めている。
 選挙での投票の方式が米国内の州によって微妙に異なるが、今回は郵便投票が感染防止のためにこれまでになく大きな割合を占め、州によっては9月からの郵便投票が許可された。トランプは開票前から郵便投票は不正の温床だと強調していた。法廷闘争に出る事態が既に現実味を帯びていた。トランプは主要メディアとの諍い、反目をものともせず、選挙後も引き続き法廷闘争に精力を傾注している。

郵便投票の増加

 11月3日午後現在で郵便を含めた期日前投票を済ませた人の数は1億人を突破。投票予想1億5000万人あまりの60%を超える。前回2016年は、投票可能な18歳以上の市民2億5千万人のうち総投票1億3700万人で、事前投票は5800万人だった。従来の選挙と異なり、新型コロナによる郵便投票急増で投票日以降の票数が増えるほど、開票や勝者確定までの流れに不透明さが漂う。結果の確定は遅れる。郵便投票は封筒を開けて有権者の投票資格に問題がないか、登録済みの署名と一致するかなどを確認して票を数える。本人確認をその場で済ませる投票所での投票と比べて手間がかかる。
 選挙結果が直ちに判明しないのが実情だ。これまでは開票後に米報道などで選挙人の過半数獲得が確実になると、負けた候補者が敗北宣言して勝者をたたえるのが通例だった。2000年大統領選はフロリダのわずか537票の差を巡って法廷闘争が繰り広げられ、最終決着は投開票から37日後だった。
 事前の予測では、バイデン支持者が郵便投票をより活用し、トランプ支持者は11月3日の当日投票をより好むというものだったが、投票結果はそれを裏付けるものになった。ただ郵便投票の開票は11月3日までは禁止されていた。11月3日の開票では、まず当日に行われた投票がまず即日開票され、その後に郵便投票が開票されるという順序で作業が進んだようだ。
 11月3日の夜の段階では、トランプが接戦が予想されていたフロリダ州で勝利を確定し、さらにキャスティングボードを握ると見られていたミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルバニア州、ジョージア州などでトランプがリードした。ところが11月4日になると、郵便投票の開票、集計が進むにつれ、これらの州でバイデンがトランプに追いつき、バイデンが優勢となり、5日から6日にかけては一部のメディアがバイデンが選挙人票270人を確保して、当選確実という報道をし始めた。
 ところが、この形勢逆転の発端になったウィスコンシン州、ミシガン州では4日未明にそれぞれ12万票、13万8000票という100%バイデン支持の大量の票が集計所に持ち込まれていたことが判明した。今回の大統領選挙は投票率が記録的な高さを示し、67%前後になることが見込まれている。ウィスコンシン州の場合、前回の2016年大統領選挙時の投票率は60%台だったが、今回は89%という異常な高さになった。同州で人口が最も集中するミルウォーキーでの投票率は71%であることを考えると、他の地区は90%台になる。これはどう考えても不自然だし、票の塊りが100%バイデン票というのも、統計的に考えて不自然である。これはバイデン支持者による不正行為ではないかという疑惑が浮上し始めた。
 5日には、トランプ陣営の主任弁護士であるルドルフ・ジュリアーニが焦点州であるペンシルバニア州で記者会見を行い、バイデン陣営による大規模な選挙不正の疑いがあること、開票作業の最中に共和党の選挙監視人が開票作業のそばで監視することを許可されず、30メートルも離れた場所に追いやられたなどの事実を公表。一部の接戦州で票の再集計を要求するとともに、選挙不正を調査し、法的手段に訴える方針を明らかにした。11月10日までにはトランプ陣営による開票、集計作業に関連した訴訟や再集計が、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州、ジョージア州、アリゾナ州、ネバダ州などで進行している。11月11日までには、正式な選挙人獲得数は、バイデン259、トランプ214に修正され、大統領選挙の結果は未定という状態が続いている。

トランプとの対立構図

 米国の大統領選挙制度では、12月14日に50州の大統領選挙人が各州都に集まり、正式に選挙人としての投票を行い、それが封印されて首都ワシントンに送られ、1月上旬に選挙人票の開票が行われて正式に次期大統領が決定されるという手続きを踏む。12月14日に大統領選挙人の投票が行われるには、12月8日までに州ごとの選挙結果が確定していなければならない。大手メディアによると、民主党のバイデンが選挙人270人以上の獲得を確実にし、政権移行の準備を開始した。しかし、州による公式な認定はまだされていない。
 それなのに、米国のABC、CBS、NBCをはじめとする主要テレビネットワーク、主要メディアは11月7日には、こぞってバイテンを次期大統領と呼び、当選確定を報じた。バイデンは7日夜、地元デラウェア州で演説し、「勝利」宣言を行った。バイデンは、「分断ではなく、結束を目指す大統領になる」と強調し、新型コロナの対策チーム設置、政権移行に向けて準備開始を発表した。これに対して、トランプはホワイトハウスで演説し、選挙の不正疑惑があることを指摘し、合法的な票を集計すれば自分が勝利しており、不正に対しては最後まで闘う意向を表明した。米国の3大テレビネットワークはこのトランプ演説の放映をいずれも途中で中断し、大統領は根拠のない虚偽の主張をしているといったコメントをした。
 2020年大統領選挙は、トランプ対主要メディアの闘いという側面が大きな特徴になっている。もっともトランプはメディアがリベラルだから敵対視しているわけではない。政権発足以来、ロシアゲートなど反トランプのキャンペーンを展開するどころか、自分のイメージを傷つけ、やりたいことを邪魔する連中と見ているから攻撃する。メディア機関としては特定の政治や国家指導者に偏しないジャーナリズムの精神がかなり廃れたとはいえ、なお存在している。トランプがホワイトハウスを去ればメディアとの対立は下火になりうるが、トランプが2024年大統領選に出馬を狙うなら、この限りではない。
 トランプは1期目の4年間、CNNやニューヨークタイムズなどの主要メディアの報道を「フェイクニュース」と呼んで一貫して批判し、メディアと対決してきた。メディアがトランプに批判的な報道をし続けるのに対して、トランプはツイッターなどソーシャルメディアを使って情報を発信し、対抗した。トランプは現在、ツイッターでは8800万人、フェイスブックでは3100万人、インスタグラムでは2300万人という膨大な数のフォロアーをもつに至っている。

隠れトランプ支持者

 メディアとトランプの対立構図は2016年にもあったが、過去4年間にこの対立は一層深まり、先鋭化した。大統領選挙における世論調査は、ギャロップ、リアルクリア・ポリティックスなどの世論調査専門機関によっても実施されるが、メディアも世論調査を定期的に公表し、それが有権者の意識に影響を与える。2016年大統領選挙では、選挙前の調査では一貫してクリントンがトランプをリードし、クリントンが圧勝するという事前の予想を生んだ。実際には、かなりの接戦にはなったがトランプの勝利となり、世論調査の誤りが指摘された。これは「隠れトランプ支持者」の存在を無視したことが原因だという反省がされ、世論調査の方法の改善が求められた。
 2020年大統領選も、世論調査では、バイデンがトランプに10ポイント前後の差をつけ、一貫して優勢であることが伝えられた。このため、民主党の色が青であることから、ブルーウェイブ(青の波)、すなわち民主党の勝利の波が全米を覆うという予想もされた。結果はまったく違ったものだった。米議会選挙では下院、上院で民主党が大幅に議席を伸ばし、上院でも主導権を握ることが予想されたが、現実には共和党が下院で6議席以上増やし、上院でも民主党は主導権を奪取できなかった。大統領選挙でも、バイデン圧勝とはほど遠い大接戦になっている。
 世論調査が有権者の投票態度に与える影響を共同研究してきたマクギル大学とトロント大学の研究チームは、「世論調査は、(支持率が劣る)政党(候補)が勝てないという印象を与えることにより、人々がその政党(候補)に投票しないよう誘導する効果を生みうる」としている。世論調査が一貫してトランプ劣勢を伝えることで、トランプに政治献金したり、票を投じる人々の意欲を削ぐ効果があるということだ。
 11月7日には主要メディアがバイデンが次期大統領になることが確定したと報じたが、勝敗の鍵を握る複数の州ではまだ票の集計が継続しており、あるいはかなり大掛かりな選挙不正が行われた疑惑が浮上していた。トランプ陣営は一部の州での票の集計の一時停止を求め、選挙不正の疑惑調査を進める意向を表明し、訴訟を提起した。訴訟の成り行きについては、主要メディアはほぼ全面的に無視しており、言及する場合でも「何の根拠もない」選挙不正の嫌疑という表現で、トランプが何の根拠もないのに選挙不正の主張をして選挙プロセスを妨害しているという印象を与えるようにしている。

集計ソフト

 現実には、各地で数多くのバイデン支持者や民主党による選挙不正の目撃者の宣誓供述や内部告発が確認されている。例えば、中西部のミシガン州デトロイトでは、ジェシー・ジェイコブス選挙局職員が宣誓供述書で、市当局の上司から投票期日を過ぎて到着した郵便投票も集計するよう命じられ、自分だけでも期日を過ぎて到着した何万票もの郵便投票を集計したと証言した。また市の選挙スタッフが登録名簿に記載されていない人物の名前を偽って用いて投票用紙に記入していたと明らかにした。デトロイトを含むウェイン郡では、同一人物が複数回投票したとか、1枚の投票用紙が集計機で複数回処理される水増しが行われたといった100以上の宣誓供述書が集まっている。ペンシルバニア州フィラデルフィア郊外のチェスター郡の選挙監視人の供述書は、集計責任者の1人がトランプに印をつけた投票用紙をトランプ以外の候補への票として処理していたと証言した。
 ミシガン州のアントリム郡では、ドミニオン集計システムという会社の集計ソフトが票集計で使われたが、トランプに投じた6000以上の票をバイデン票として集計する集計ミスが発覚した。またこの集計ソフトはミシガン州の他の47郡、激戦州全てを含む複数の州で使用されたことも判明した。一部の州では、投票日前日に業者がやってきてソフトのアップグレードが行われたという証言も出ている。ドミニオン社の上級幹部は長年、民主党のペロシ下院議長の顧問を務めており、民主のダイアン・フェインスタイン上院議員の夫リチャード・ブルームが同社の主要株主になっている。このことから、民主党が意図的にこの集計ソフトを使ってバイデン票を増やすよう工作したのではないかという疑問も提起されている。
 さらにトランプ陣営の法律顧問ジュリアーニが10日まで明らかにしたところによると、ウィスコンシン州、ミシガン州で投票日翌日の未明に大量のバイデン票が州外から持ち込まれ、共和党の選挙監視人が排除された状況でその票の集計が行われたという同じ出来事が、少なくとも8つの激戦州で行われたことが確認されている。同顧問はこれらの州で訴訟を提起するとしている。
 これらはいずれも選挙結果を左右しうる規模の不正疑惑であり、無視できるものではない。主要メディアはこうした情報をほぼ全面的に無視し、トランプが「何の根拠もない」主張を繰り返していると非難している。

政権移行の既成事実化

 ウィリアム・バー司法長官は11月9日、全米の連邦検事に選挙不正の調査を行うことを許可することを通達した。司法省の選挙犯罪調査部の責任者リチャード・ピルジャーは10日、バー長官の通達に反発し、抗議のため辞任した。米議会下院司法委員会のジェロルド・ナドラー委員長(民主)は、バー長官の通達について、「適切な証拠的根拠なし」で調査を進めているとして激しく非難した。主要メディアは、バイデン当選、次期大統領確定の流れを作るニュースは積極的に報じるが、それに疑問を提起するような情報は無視している。
 主要メディアがバイデンに不利な情報を隠匿し、バイデンに有利な情報を積極的に報じるという傾向は選挙キャンペーン中を通して存在したが、11月3日の投票日が近付くにつれてより露骨になり、投票後にも露骨な偏向報道が継続している。11月中旬の時点で、バイデン勝利はまだ確定していないのに、バイデン勝利、次期大統領確定を既成事実化するために、民主党、バイデン陣営と緊密に連携しているという印象さえ与える。
 例えば、10月には、ニューヨークの保守系紙ニューヨークポストが、バイデンとジョー・バイデンの息子ハリス・バイデンの不正疑惑について不正を実証するような電子メールを入手し、特ダネとして報道した。これは2014年頃、副大統領を親にもつハンター・バイデンに対してウクライナ企業が仕事内容に見合わない月5万ドルの報酬を支払っていたが、ウクライナ政府がこの企業に対して汚職捜査をしようとしていた。当時、副大統領だったバイデンは、ウクライナへの援助をテコに汚職捜査をやめるようウクライナ政府に圧力をかけたという疑いがあった。バイデンは一切関知しないと疑惑を否定していたが、10月14日に同紙はバイデンが息子ハンターの仲介で同企業幹部と面会していたことを示す電子メールについて報じた。
 これはバイデンで息子の利益のために外交の職権を濫用し、その事実を隠蔽しようとしたという疑惑を改めて浮き彫りにするものだった。一部では、オクトーバーサプライズとされ、選挙への大きな影響を与える可能性があった。しかし、ABCなどの主要テレビネットワークはこの情報を取り上げず、CNNも言及はしたが「右派メディアによるねつ造された醜聞」と断定した。トランプ陣営や保守派は、ツイッターなどのソーシャルメディアで情報を流そうとしたが、ツイッター、フェイスブックは半日以内にこの情報を一方的に削除し、拡散しないようにした。
 米上院は18日、「ハンター氏、バイデン一家とウクライナ人、ロシア人、カザフスタン人、中国人との間の取引をめぐって違法行為があった可能性がある」と指摘。バイデン氏が大統領就任への準備を進める中、これらの関係に対する「スパイ防止活動と強要をめぐる懸念」を、改めて指摘した、
 ツイッター、フェイスブック、グーグルなど大手ハイテク企業は投票日前、バイデンに不利な情報は抑制あるいは削除し、バイデンに有利な情報が無規制という露骨な政治的動きを強めた。この傾向は投票日後も続いており、民主党やバイデン陣営による選挙不正を示唆するような情報は排除するパターンが継続している。主要テレビメディアに加え、SNSが選挙不正に関する情報を封じているため、米国民の多くはバイデン次期大統領確定、トランプが理由もなく権力に執着し、政権移行プロセスを妨害しているという主要メディアにより作り出された印象をそのまま信じている。民主党、バイデン陣営、リベラル派が殆どである主要メディア、大手ハイテク会社が結託して、トランプ排除、バイデンへの政権移行の流れを既成事実にしようとする情報操作が継続している。

主要メディアの左傾化

 トランプが中心的な情報発信の媒体としてきたツイッターは、再選キャンペーンが本格化した2019年6月、トランプなど政治指導者に対して、暴力による脅迫や暴力の先導など、権力濫用にあたるツイートがあった場合には、非表示対応を取ることを打ち出した。トランプは2020年5月29日、ミネソタ州ミネアポリスでの黒人死亡事件を発端に拡大した抗議活動と暴動に対して「略奪が始まれば、銃撃が始まる」とツイートした。これに対して、ツイッターは「暴力賛美」であるという理由で非表示とし、以後、トランプ陣営や保守派の選挙関連のツイートには、「不正確、真偽の疑わしい情報」であるとの理由から非表示、アカウント停止といった対応が目立っている。
 共和党保守派とリベラル的傾向が強い主要メディアの対立は、いまに始まったことではない。ベトナム戦争当時から米主要メディアの左傾化が進み、1970年代のウォーターゲート事件で当時のニクソン大統領の不正行為が暴露され、ニクソンが辞任に追いやられて以降、メディアの左傾化が加速してきた。米国の主要テレビネットワーク、主要新聞がリベラル派に支配され、言論界を支配している状況に対して、サイレント・マジョリティー(沈黙の多数派)を代弁するため1980年代末から1990年代には保守派のトークラジオが急速に拡散し、それを聞く大衆が急増した。トークラジオは、テレビ局と違って、マイクとヘッドフォン、放送室1つあれば資金をほとんどかけず始めることができる。リベラル派メディアに対抗するゲリラ的存在として、多くの保守派トークラジオのホストが生まれ、全米に拡大した。
 1988年から保守派トークラジオショーを開始して、全国的人気を得たラッシュ・リンボーはその代表例。民主党のクリントン政権を辛辣に批判し、1994年の米中間選挙における共和党勝利の要因になった。2008年のオバマ当選後は、オバマを社会主義者として激しく非難し、ヒラリー・クリントンを徹底して批判した。2020年には、トランプから大統領自由勲章を授与された。
 インターネットの発達により、インターネットを使ったニュースマックスなどの保守派メディアが大衆的人気を博しているが、大手主要メディアの前に対して、旧約聖書に登場する少年ダビデが巨人ゴリアテを相手に闘いを挑むようなメディアの闘いを挑んでいる。保守派メディアには、テレビ局のフォックス、日刊紙のワシントンタイムズ、ウォールストリートジャーナル(主に論説欄)などもあるが、トークラジオや保守系インターネットメディアを含めても、リベラル派メディアの前には多勢に無勢である。今年のトランプの選挙戦の闘いはとりわけ、バイデン勝利、トランプ排除という目的を達成するために意図的な情報操作を含め手段を選ばない攻勢に出ているリベラル派の主要メディアとの闘いという特徴がある。

トランプイズムの継続

 トランプは、民主党、バイデン陣営による選挙不正を予想していたと見られ、それに対する準備を進めてきたという情報もある。実際トランプは、以前から郵便投票は不正の温床になると主張し、投票結果を受け入れるかについても明言を避けてきた。1つは、偽の投票用紙の使用を察知するために、本物の投票用紙にGPSやブロックチェーンを透かしで仕込んでいたとされる。大量の偽造投票用紙をそれで察知できるとされ、法執行機関による捜査がされているという。またトランプは最終的に選挙結果は法廷闘争で決まることを予想して、あらかじめ弁護団を組織化するとともに、連邦最高裁の9人の判事の中に民主党の抵抗を押し切って、保守派エイミー・バレット判事を指名、承認させ、最高裁の判事構成を保守派主導にしておいたと考えられる。
 トランプは法廷闘争を続ける構えを示しており、これまでのところ負けを認めていない。共和党の重鎮ミッチ・マコネル上院院内総務も、大統領には訴訟する権利があると言う。首都ワシントンでは11月14日、法廷闘争を続けるトランプ氏への支持を示し、公正な選挙を求める大規模な抗議集会が開催され、全米各地から1万人以上が参加した。「米国を再び偉大にする」「トランプ2020」と書かれた旗やプラカードを掲げ、「選挙結果を盗むな」「もうあと4年!」などとシュプレヒコールを上げた。
 米メディアでは、トランプは4年後に再出馬する方針を決め、発表のタイミングを探っているとの見方が出ている。11月9日に報じられた複数のニュースによると、トランプはバイデン氏の勝利が最終確定した場合、今回は身を引いて2024年の大統領選挙に出馬する意向を表明すると側近に述べたという。大統領の任期は、合衆国憲法で2期までに制限されているが、任期が連続している必要はない。投票日の出口調査によると、トランプ氏は共和党支持層から93%、保守層の84%、白人の57%の票を獲得し、党内で圧倒的な支持を誇っている。一般有権者の48%近くがトランプを選んだ。
 トランプの発想と行動は、歴代大統領とかなり相違しているということが目についた4年間だった。そのトランプが現職大統領としては最多となる7300万票を獲得した。理由のないことではない。主要メディアで論じられることの少ない「トランプ大統領の事績」について、評価する市井の人々の意識がある限り、トランプが表舞台から姿を消すことなく、むしろトランプ劇場への郷愁に似た思いが米国民の中に醸成されていくものと思われる。7300万票は、トランプ再登板、あるいはトランプ的な指導者の登場への道を開く可能性を秘めているのである。
 いずれにしても、大統領選挙の結果が確定するまでには、まだ時間がかかりそうだ。(了)

政策レポート
浅川 公紀 筑波学院大学名誉教授
著者プロフィール
1944年山梨県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。筑波女子大学教授、筑波学院大学教授、武蔵野大学教授、同・国際交流センター長を歴任。専門は国際政治、米国政治外交論、日米関係論。著書に『国際政治の構造と展開』、『戦後米国の国際関係』、『アメリカ外交の政治過程』、『アメリカ大統領と外交システム』など多数。
主要メディアで論じられることの少ない「トランプ大統領の事績」を評価する市井の人々の意識がある限り、トランプは表舞台から姿を消さず、むしろトランプ劇場への郷愁に似た思いが米国民の中に醸成されていくだろう。

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