通学の授業と同じスケジュール
コロナ危機の影響で韓国も3月の新学期スタートが延期されたが、それでも比較的早期に深刻な危機を終息させたことを受け、オンラインによる授業の段階的開始に踏み切った。
まず4月9日から受験を控える中学校3年生と高等学校3年生、次に4月16日から小学校高学年(4〜6年)と中高の1・2年、最後に4月20日から小学校低学年(1〜3年)という順にスタートさせた。
実際にどのような様子なのか、2つの例を紹介しよう。
1例目は、ソウル市内のあるマンションでオンライン授業を受ける中学校2年生の男子生徒。この生徒は勉強部屋にあるパソコンに向かってオンライン授業を受けていた。オンライン会議システム「Zoom」を使い、朝8時半に始まる朝礼に合わせ、パソコンの前に座って1日の始まりだ。
担任の先生の話を聞き、またクラスメイトたちの姿を見ながら朝礼が終わると1時限目の国語。画面には公営教育放送であるEBSが提供するネット向け授業の動画プログラムが流れた。教科書に沿って画面の中の専任教師が解説をしていく。最後は授業内容を理解したか確かめる問題が5つ映し出され、生徒は回答を画面上に打ち込んで「提出」すれば授業終了だ。
10分休憩後、2時限目と3時限目は数学。同じEBS提供の動画を見ながらの授業である。画面では最初の単元である「式の計算」について、実際に専任教師が黒板に書いた式を解いて見せる。最後は国語と同じように問題が出され、これを解き終えれば終わりだ。
続く4時限目の技術。飛行機や船舶、自動車、鉄道など各種輸送方法について簡単な説明を読んだ上、動画を見て問題を解いた。
その後、自宅で母親が作ってくれた昼食を済ませた後、午後もオンライン授業は続いた。
5時限目の体育は、屋内でもできる簡単な体操を中心に画面の中で動く教師の動作を真似する。6時限目の日本語の授業では、画面上で朝鮮半島と日本の関係が分かる地図などを見ながら、日本文化を紹介したいくつかの短い動画で終わり。最後の7時限目は音楽で、ベートーヴェンの「エリーゼのために」について学び、1日の授業が全て終わった。
実際に通学して過ごす1日のスケジュールに合わせたものだが、やはり自宅でパソコンの前に座りながら受ける授業は勝手が違うようだ。
実際にオンライン授業を受けている中学生の話を聞くと、自宅に居ながらにした授業は実際に学校へ行くより気楽で自由だが、先生の目が行き届かない分、眠気に襲われたり、気が散ることも少なくないという。授業を視聴しながら何かを食べたり飲んだりする生徒も多いようで、集中力が落ちやすいという問題を抱えている。
また生徒側のネット環境によっては画面が途切れたり、画面を長時間見るため目が疲れやすくなるという問題もあるようだ。
小学校低学年は母親がサポート
2例目は、地方に住む小学3年生の女子児童だ。国と主要自治体の教育行政が共同で構築した「e学習システム」というサイトにパソコンで接続し、そこに授業のコンテンツがアップされている。先生との連絡はスマホなどで無料通話・メールアプリ「カカオトーク」を通じて行われるが、まだ低学年であるため大半は母親などが横についてサポートする必要がある。
児童がサイトのログイン欄にIDとパスワードを入力すると、児童の名前と学校名が表示され、「私の学習室」という場所をクリックして入れば、その児童が視聴すべき教師の「部屋」が準備されている。そこに接続すれば、その日に受けるべき科目やその学習内容などが記されているという仕組みだ。
朝、児童は書き込み欄に「出席しました」と打ち込もうとしたが、パソコンのキーボードを打つにも時間がかかる。ようやく出欠の確認が終わると、いよいよ授業だ。その日の科目は「1時限目:数学、2時限目:英語、3時限目:社会、4時限目:創意的体験授業」。授業の合間にはカカオトークを使い、先生と児童との間で次のようなやり取りがなされた。
先生:※お知らせ※午前10時〜10時40分まで先生が「e学習システム」の掲示板にアップした「人々が生活する家の姿の変化」の動画を視聴して下さい。
児童:はい、先生。
先生:※お知らせ※まもなく11時からは先生と一緒に勉強した内容を基に話し合う時間を設けます。ライブトークに接続して下さい。
児童:はい、先生。
小学生の場合、特に低学年がオンライン授業を受けることはパソコンやスマホの習熟度だけでなく、勉強に対する心構え、物事への集中力などの面から見ても中学生よりさらに困難が伴うと言える。
学習習熟度の格差や授業の質に不安も
兪銀惠・教育相は「学校が始まって2週間の間にオンライン授業のコンテンツが230万件も製作された」と明らかにした上で、「韓国のように全国全ての学校と児童・生徒を対象に、出欠の確認や評価まで正規の授業に準ずるレベルの大規模遠隔授業を運営する国は少ない」と述べた。
ただ、スタートしてすぐ接続障害が発生するなどシステム運営上の問題が早くも生じているほか、オンライン授業への向き不向きなどによる学習習熟度での格差発生、通常授業より劣る授業の質などに対し生徒本人や保護者から不安や不満が噴出しているのも事実だ。
コロナ危機という緊急事態の中で始まったオンライン授業だが、一日も早く日常生活に戻り、学校に通いたいというのが本音のようだ。