子供の問題行動と夫婦関係の媒介要因

子供の問題行動と夫婦関係の媒介要因

2020年3月24日
家庭基盤充実

子供の問題行動

 近年、日本では学校現場などで子供の問題行動への対応が大きな課題になっている。子供の問題行動とは、何らかの心理的な要因によって子供が起こしてしまう、社会規範に照らして望ましくない行動の総称であり、内在化問題行動と外在化問題行動の二つに分けられる。内在化問題行動は、「恐怖や不安、引きこもりなど、自己の内部に抱えた問題」の表出であり、外在化問題行動は「非応諾性、攻撃、癇癪、非行、多動性」など「環境との葛藤」の表出とされている(藤生 2014)。
 欧米では、子供の問題行動の原因の一つとして夫婦関係の質があげられており、夫婦の満足度や子育てにおける協力の在り方との関係が調べられている。

夫婦関係の質が関係

 欧米の中でも、イギリスは夫婦と子供の発達との関連についての研究が多い。例えば、ケンブリッジ大学のクレア・ヒューズ(Claire Hughes)氏らは、第一子を出産した夫婦を対象に、周産期における夫婦の幸福度(well-being)とその後の子供の問題行動の関係を調べた。両親へのアンケートによって生後4カ月、14カ月、24カ月における子供の問題行動と夫婦の幸福度の変化を点数化し、構造方程式モデリング(注1)という手法で両者の関係を調べた。
 ヒューズ氏らによれば、まず夫婦の幸福度と子供の問題行動の直接的影響が判明した。ヒューズ氏らは、「出産前の母親の幸福度は、単独で生後4カ月における子供の問題行動と、24カ月における外在化問題行動に関係していた」という。この結果は「出産に先立つ抑うつ症状や不安、産後の母親の幸福度の低下などの条件を一定」にした状態で得られた。同様に、「父親の幸福度は生後14カ月における子供の問題行動と関係していた」。
 そして、夫婦の幸福度は間接的にも影響していると述べている。アンケートによって夫婦の関係に対する満足度を点数化し、幸福度の尺度としたところ、「子供が生後4カ月の時点における夫婦の関係の質は、生後24カ月における内在化問題行動に影響する」と分かった。ヒューズ氏らはこの結果を受けて「生後間もない時期の両親の関係において、満足度が高く、衝突(conflict)が少ない場合、生後24カ月時点において、子供の内在化問題行動は起こりにくくなっていた」と述べている。

コペアレンティングが媒介

 夫婦関係の質が子供の問題行動に影響する経路を明らかにしようとした研究もある。グラスゴー大学(イギリス)のアリソン・パークス(Alison Parkes)氏らは、夫婦間の情緒的な相互扶助(supportiveness)が子供の外在化問題行動に影響する経路を検証した。
 パークス氏らが立てた仮説によると、夫婦間の相互扶助はコペアレンティング(coparenting)を介して外在化問題行動を抑えたり、緩和したりする。コペアレンティングとは、両親が家庭の切り盛りと仕事への関わり、子育ての在り方について合意を持ち、互いの養育を支援することである。パークス氏らによれば、コペアレンティングは「子供を含んだ三者間の機能」であり、「夫婦関係の在り方を父親と母親それぞれの養育の在り方に波及させる」としている。
 パークス氏らは、まずMCS(イギリス)とFFS(アメリカ)という二つの縦断的(通時的)データベースから得られたサンプルを重回帰分析にかけた。そして、「両方のサンプルにおいて、子供の幼児期において夫婦の相互扶助の程度が高いと、子供期の中頃(9−13歳)における外在化問題行動が減る」ことを確認した。(MCSとFFSの偏回帰係数はそれぞれマイナス0・13とマイナス0・11。プラスマイナスは増減、絶対値は効果の大きさを表す。)

影響の経路

 次に、夫婦の相互扶助が外在化問題行動に影響する経路を調べるためにパス解析(path analysis)を行った。解析には、比較のためにコペアレンティングを介さない、父親・母親の養育が単独で外在化問題行動に及ぼすことを想定した経路も複数含んだ。MCSのサンプルでは、夫婦が相互扶助的であることは、コペアレンティングを介した経路と、親一人ひとりの養育を介した全ての経路において統計的に意味のある影響を持っていた。一方、FFSのサンプルでは、母親のネガティブな養育の減少とコペアレンティングを介した影響のみが統計的に有意だった。(MCSにおいて、相互扶助からコペアレンティングへのパス係数(注2)は0.27、コペアレンティングから外在化問題行動へはマイナス0・10。同様に、FFSでは順に0.33とマイナス0.16。符号は増減、絶対値は効果の大きさを表す。)
 このような結果から、パークス氏らは夫婦の相互扶助が子供の外在化問題行動に与える影響について、「コペアレンティングを含んだ経路は、父親・母親の個々の養育による経路以上に重要か(FFS)、同程度に重要(MCS)である」としている。

 以上のように、欧米では夫婦関係が子供の問題行動に及ぼす影響を具体的に分析した研究がある。部分的ではあるものの、統計的に夫婦間の満足度や相互扶助が子供の社会的・情緒的健康に影響を及ぼすことが立証されており、子供の問題行動を解決するためのヒントとなる可能性がある。

【注】

(1)重回帰分析や因子分析,パス解析などの機能を併せ持つ統合手法。
(2)説明変数(原因)が被説明変数(結果)に与える影響の大きさを推定する指標。重回帰分析における偏回帰係数と同じ役割。

 

【参考文献】

藤生英行(2014)「内在化・外在化問題行動の保護要因を明らかにする」『つくばの心理学2014』、pp.38-39.

Hughes, C, Devine, RT, Mesman, J & Blair, C 2019, ‘Parental well-being, couple relationship quality, and children’s behavioral problems in the first 2 years of life’, Development and Psychopathology. https://doi.org/10.1017/S0954579419000804

Parkes, A., Green, M. and Mitchell, K. (2019) Coparenting and parenting pathways from the couple relationship to children’s behavior problems. Journal of family psychology, vol.33, no.2, pp.215-225.

コラム
イギリスでは夫婦の満足度や子育てにおける協力が子供に与える影響が注目されている。日本でも学校などで子供の問題行動が課題になっているため、解決のヒントとなる可能性がある。 編集部

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