政策オピニオン

2019年9月5日

「韓国自由右派」の動向と文在寅政権の行方―韓国保守派の見解―

統一日報論説主幹 洪 熒
韓国陸軍士官学校卒。歩兵将校として野戦部隊の小隊長などを経て、国防部に勤務。その後、外務部(外務省)に転じて、駐日韓国大使館参事官・公使を務めた。退官後、早稲田大学客員研究員、桜美林大学客員教授を経て、現在、「統一日報」論説主幹。共著に『韓国壊乱』。訳書に『蜃気楼か?中国経済』『激動の東北アジア—韓国の進路』ほか。

1.レジームチェンジで誕生した主体思想派政権

(1)政治的混乱の中で、職業革命家集団が権力を奪取

 朴槿恵前大統領が弾劾・罷免され、補欠選挙の結果、文在寅が大統領に当選した。この経緯を表面的に見れば、政権交代ということになる。しかし、実際は捏造された証拠によって朴槿恵大統領は弾劾された。韓国国会の措置は違憲で、その証拠が全くの嘘だったと、後々明らかになった。トランプ大統領のロシア疑惑では、特別検察官らが2年間徹底的に調べたわけだが、韓国の憲法裁判所は十分な審理・調査もせず、メディアの誤報を根拠に大統領を不法罷免した。当時与党だった韓国自由党さえ、その半分が罷免を支持していた。そのような政治的な混沌の中で補欠選挙が行われた。
 政変を惹き起こした決定的な捏造報道は、中央日報系テレビJTBCの報道である。崔順実の私物と称するタブレットPCをJTBCが入手し、国政に介入していた証拠と報じた。彼女は朴槿恵の40年来の友人だったが、タブレットPCを使って、大統領の演説文などを事前に読んで赤で訂正していた、とJTBCは報じた。しかし、そのタブレットPCにはそんな文章修正機能すらなかった。JTBCが報じた画面は、自社のコンピュータで制作した捏造だった。中央日報のオーナーである洪錫炫がJTBCに捏造を指示したと言われており、その証言がyoutubeに出ている。この世紀の陰謀や犯罪に洪錫炫も関わったのは確かで、今その全貌が明らかになりつつある。
 混乱状況を誘発したのは洪錫炫などだが、権力を手にしたのは長年革命を目論んできた「職業革命家」たちだった。彼らが今、文在寅・主体思想派(主思派)政権として韓国を破滅に導いているだけでなく、国際秩序まで攪乱している。

(2)文在寅政権の現状

代議制民主政治の否定、全体主義
 文政権の体質は、暴力的な直接民主主義や全体主義である。彼らの目標は社会主義で、そのための戦術・政策の典型が、年金基金を社会主義化へ利用していることである。
 2019年3月27日、韓国の大企業「韓進グループ」を率いる趙亮鎬会長が傘下の大韓航空の取締役再任を否決された。大企業に敵対的な文政権が掌握している国民年金公団が、大韓航空に対する株主権限を利用して、趙会長の再任に反対したためだ。
 国民年金公団は約700兆ウォンの年金基金を運用し、大韓航空株の10%強を握っている。一般的に、国民年金公団が企業の経営に直接関与することはない。先進国における自由主義市場経済のルールとして、国民年金公団は株主としての権限を行使しないからだ。しかし全体主義体制構築を急ぐ文政権は、国民が未来のために貯めている年金基金を、民間企業を支配する手段として使い始めた。同公団はサムスンや現代自動車など多くの多国籍大企業の主要株主となっている。
 国民年金を利用して大企業を統制するのは文在寅の選挙公約だった。この政策を文在寅に提案したのが、韓国では有名な時事ブロガー「ドルキング」のグループである。ドルキングこと金ドンウォンは、「弾劾政変」以来、悪質な世論操作を行ったことで、一審有罪判決を受けた。彼と共同正犯として有罪判決を受けたのが慶尚南道知事の金慶洙である。

最側近・金慶洙が選挙法違反で有罪
 金慶洙は文在寅の腹心の中の腹心である。文在寅が大統領就任式を終えて青瓦へ移動する際、妻ではなく金慶洙を同じ車に乗せた。彼は盧武鉉大統領の秘書でもあった。金慶洙は金ドンウォンの世論操作を承認し、選挙法を違反した罪で裁判中である。
 一審の判決文は170ページにわたるものだが、その中で「文在寅」が90回以上登場する。政治的にみれば、金ドンウォンと金慶洙、そして文在寅も共同正犯と言える。ネット上には遊説中の文在寅の妻が随行員に、金ドンウォンに(文在寅のためにやってくれたことに)謝意を伝えるため「彼らグループの所へ行こう!」と言う動画まで流れている。
 金慶洙が二審でも有罪となれば、それは文在寅の当選無効にもなり兼ねない大問題となる。それで現在、文政権の最優先課題の一つが金慶洙を救うことである。

現代文明の技術と司法を革命の道具として悪用
 金慶洙の世論操作と選挙法違反が明るみになった時期と重なったこともあり、文政権は社会主義憲法への改憲に失敗した。だが、文政権は検察権と裁判制度を革命の道具として本格的に利用している。前最高裁長官の梁承泰をはじめ、6人の裁判官を逮捕した。そもそも、文政権を作った主思派グループは、ITや情報通信技術を駆使して大衆を扇動、権力を奪取した。彼らは現在も強圧体制の強化、維持のため大衆洗脳・煽動にメディアを利用している。このやり方は中国共産党と同じだ。

文明社会から孤立
 全体主義へと邁進する文政権は必然的に文明世界から孤立している。日韓関係だけが冷え込んだのではない。先進国の首脳たちはここ2年間、東京まで足を運んでも、韓国には行かなかったのだ。文在寅の訪問先がブルネイやカンボジアなどになるのも、彼自身の問題など、先進国から相手にされていないためだ。

文在寅夫妻は筋金入りの金日成主義者
 文在寅は平昌オリンピックの前夜のレセプションで、最も尊敬する思想家として申栄福の名前をあげた。申栄福は金日成が韓国に作った地下党「統一革命党」の指導部で、逮捕されたとき現役の陸軍将校だった。「極めて優秀なので殺さないで」という糾明運動で死刑を免れた。南北が秘密裏に行ったスパイ交換交渉の際、金日成は北から送ったスパイよりも申栄福の奪還を重視した。その申栄福を尊敬すると、文在寅は世界に言い放った。
 文在寅の妻が一番尊敬するのは尹伊桑である。東ドイツ拠点スパイ事件で有名となった音楽家であり、のちにドイツに帰化した。文夫妻が2017年訪独した際に尹伊桑の墓に椿を植え、平昌オリンピックの閉幕式に合わせて遺骨を韓国に持ってきた。彼らは筋金入りの共産主義者である。盧武鉉の死後、様々な経緯で文在寅は主思派に擁立された。

朝鮮労働党本部での会談は南北関係の決定的変質
 2018年3月の特使団や2018年9月文在寅一行が訪朝の際、南・北は労働党本部で会談する。政府代表なら迎賓館など施設で会談するのが常識だ。日本でいえば、他国の首脳と安部首相が自民党本部で会談することなどありえない。専門家でなく誰の目から見ても、南・北関係はもはや党対党の関係に変わった。文在寅は金正恩と運命共同体となった。
 文在寅・主思派勢力はかねてから国連制裁など無視し、北へ1000億ドル規模の経済協力構想を主張してきた。この額は韓国軍の2年分以上の国防費にあたる。一方、同盟のトランプ政権が「駐韓米軍の駐留費用として韓国が10億ドルを負担して欲しい」との要求に、文政権は2019年1月に「絶対できない」と拒否した。韓国の多くの国民が、文在寅を與敵罪で告発している。與敵罪は韓国で唯一、処罰が死刑だけの反逆罪だ。

 

2.反共国家・韓国で、従北勢力が権力奪取に成功した理由

(1)社会全般に「革命の陣地」を構築

革命の陣地
 主思派など南労党の末裔らの職業革命家たちは、金日成との連邦制統一のため、韓国を社会主義体制へと変えるため、「革命の陣地」(アントニオ・グラムシ)を韓国社会の隅々まで構築してきた。1980年代後半から、大学、文学や映画などの文化、メディアなどが次々と解放区になった。これを主導したのが586世代(60年代に生まれ、80年代に大学で金日成主義=主体思想に染まり、現在50代で、かつて「386世代」と呼ばれた)である。
 物理的組織としては民主労総(労働組合)の存在感が大きい。韓国の軍隊と警察を合わせた以上の数であるため、暴動・デモなど暴力性を武器としている。他には、全教祖やシンクタンクや市民団体を装って陣地を拡大した。これらが現在の韓国社会のほとんどを抑えているといっても過言ではない。政府の重要ポストは、全大協出身など主思派グループ、社会主義への革命を夢見て活動してきた前衛組織・シンクタンクなどの出身である。

宗教の左傾化
 職業革命家たちの隠れ蓑や陣地として見逃せないのが宗教界である。韓国の主な宗教は、キリスト教・仏教・円仏教などだが、宗教界全般の左傾化が酷い。左傾化の割合は、仏教やカトリックは9割以上、プロテスタントは7割に近い。
 韓国では特にキリスト教の活動力が強いと言われる。韓国社会が病んだ主要な原因は韓国宗教界が左翼らに組織的に侵されたことだ。そのため、国民の多くは精神的には近代化できず物質主義に陥り、精神世界が荒廃化してしまった。

憲法と法治の跛行
 韓国では1987年に「民主化」宣言があった。大統領を間接選出から国民の直接選出へ変えた。一種の政変だった。革命的な雰囲気の中で憲法が改正された。革命で権力を握った者たちは自らを正当化するためにも憲法を変えなければならない。
 その後の政権は憲法を無視して政治を進めてきた。金泳三大統領は前任者たちの全斗煥と盧泰愚を、憲法が禁じる遡及法で裁いた。金大中は金正日との「6・15共同宣言」を憲法の上に置いた。6・15宣言は民族優先の全体主義の発想で、北との連邦制を禁じている現憲法とは相反するものだ。この違憲状態のため、2000年以来憲法・法治が跛行している。文在寅が2018年に金正恩と交わした「9・19南北軍事合意」も、明白な違憲・反逆である。

(2)右派の問題

 野党の自由韓国党は根源的限界を抱えている。李明博や朴槿恵は自由民主主義者だったはずなのに、中道・左翼連立政権のような路線をとった。彼らが自由・民主主義・保守の価値を十分に理解していれば、職業革命家たちが韓国を乗っ取ることはできなかったはずだ。朴槿恵は自分の敵がどういうものか、敵がどんな手段を使っているのかについて分からなかった。彼女は無抵抗のままで、合法権力を諦め奪われた。
 さらに、自由韓国党の半分は朴槿恵の弾劾に同調した。保守政治家を自称する彼らは、職業革命家らの謀略や嘘や偽りに騙されて、違憲・不法の政変に加担した。この致命的な失態について、今野党になった彼らは反省や怒りや悔しさを感じているのだろうか。
 他にも、「革命の陣地」は国会の中にも堅く構築されていた。国会議員は1人につき、7人の補佐官・秘書の給料が税金で支払われる。仮に保守の国会議員が100人いたら、700人の秘書を採用できるのに、そのほとんどが左翼である。国会議員が健全な立法活動をしたいと思っても、補佐陣が駄目では難しいのだ。私が盧武鉉政権時代から取材した印象では、右派に分類できる補佐官・秘書は数えられるほどしかいなかった。

(3)アメリカの試行錯誤・迷走

 40年に及ぶ東西冷戦は、米国に完璧に軍配が上がったかのように見える。実際は冷戦時代に米国が試行錯誤や迷走し、そのことで特に韓国は甚大な打撃を被った。韓国戦争は1953年休戦となったが、その18年後には中国が台湾に代わって国連安保理の常任理事国となった。そして米・中は敵対関係から一転して戦略的パートナーとなった。この変動によって、アジアで反共同盟ができる可能性はなくなった。日本でも、田中角栄総理が慌てて日中国交正常化へ走った。その後、韓国では「反共民主主義」というイデオロギーよりも「国家生存」の必死の模索が続くようになった。反共国家・韓国を土台から揺るがしたのは、大国間の戦略的取引だったといわざるを得ない。
 その後、南北は戦略・戦術的な探り合いを続けるが、韓国の対北政策では「反共・自由民主主義」というよりも「民族主義・人道主義」をもって渡り合うようになる。赤十字会談や離散家族の再会などがそうだ。西側諸国の人道主義は人権を尊重するものだが、共産主義国家では政治的な利用手段でしかない。
 やがて、西欧が文化共産主義によって左傾化し、韓国の反共政権は世界中の左翼勢力から集中攻撃を受けた。私は1970年代から国家安保の仕事に携わってきたが、全世界の社会主義勢力が第一のターゲットにしたのは、米国の弱い同盟と見られた韓国だった。
 社会主義勢力との戦いで、米国は経済や軍事面では勝利した。しかし、政治や文化戦争においては左翼に負けた。トランプ大統領の「ロシア疑惑」はその左翼風土の攻勢だった。米国の大手メディアと民主党があれほど騒ぎ立てたにもかかわらず、何も出てこなかった。韓国メディアは米国よりもっとひどく毒されている。米国が共産党の中国を助けたことで、韓国での革命の陣地の構築は社会の隅々にまで急速に進行したと言える。

 

3.韓国で進行中の3つの戦争

 現在、韓国の保守右派は三つの戦争に直面している。第一は韓半島を支配しようとする中国共産党との戦い。第二は平壤の邪教全体主義との戦い。第三は習近平・金正恩と手を組んだ文在寅・全体主義政権との戦いである。

(1)内戦-全体主義vs反全体主義-

文在寅は国民と戦争中
 3月22日、文在寅は大邱の在来市場を訪れた。庶民の暮らしぶりを視察するという名目だが、この日は「西海守護の日」という記念日だった。2010年哨戒艇沈没事件に代表されるように、この十数年北側の軍事挑発が断続的に繰り返された。毎年、黄海を守り犠牲になった人々をたたえる国家行事が行われる。だが、文在寅は今年もこの国家行事に参加せず、ソウルから結構離れている大邱の大きくない在来市場に現れた。
 文在寅を取り囲んでいたのは、彼が現れる直前にやってきた30人くらいの人々だったが、その外側には短機関銃を持った警護官が立っていた。しかも、引き金に指をかけている。大統領などのVIPの警護で武器を持つのは当然だが、見えないように持つ。あえて引き金に指をかけて短機関銃を見せていたのは、「不審な行動をするな」と、国民を威嚇していたからだ。その写真がアップされ、ネット上では大問題となったが、韓国の主要メディアは一切報道していない。
 同月15日に文在寅はカンボジアを訪問したが、「長い内戦を克服したカンボジアの経験を学びたい」と発言した。従北の文在寅は平壌ではリラックスしていたが、韓国内では国民との内戦中のため短機関銃を見せる必要があったかも知れない。
 この内戦で厄介なのは、熱狂的な文在寅支持派である。彼らは無条件に「文在寅! 盧武鉉!」と叫ぶ。3月20日に韓国・ニューシスは「京畿道議会が学校内にある日本の戦犯企業の製品にステッカーを貼る条例の制定に着手した」と報じた。その後「日本を原産地とする木を伐採すべき」という話も上がった。植物や原産地に罪など問われるものだろうか。いいものを普及して使うのは当たり前である。何十年かけて育った木を何十万本伐採するなど、完全に極端な原理主義的発想だ。文政権はタリバンと変わらない。

文政権のアキレス腱
 文政権にも致命的なアキレス腱はある。まず、経済破綻である。最低賃金については日本でも有名だが、文政権の経済政策は迷走している。サムスンを三千個の子会社に解体するという話も出ている。韓国では大企業がまともな働き口を提供しているため、大企業を殺せば、韓国経済は完全に沈没してしまう。
 第二のアキレス腱は、嘘と不法、煽動で合法政府を倒した経緯が2年を待たずに明らかになったことである。朴槿恵大統領は「捏造された証拠」によって弾劾された。IT技術を駆使した世論操作によって、文在寅政権が出現した。この反逆犯罪には文在寅自身と最側近たちが密接にかかわっていた。21世紀の先進国家では考えられない犯罪の数々がすでに明るみに出た。これは致命傷である。
 国家を乗っ取ったことで、主思派は社会主義への体制変革に国家予算を存分に使うことができる。権力と有り余る資金が主思派の分裂と腐敗を加速させている。これが第三のアキレス腱である。
 左翼の腐敗について、わかりやすい事例が5・18光州事件の有功者数の増加である。1980年5月の時点では、後の「有功者の対象」はおよそ700人と集計していた。しかし、一部公開された有功者の名簿だけで4300人以上がカウントされていた。約40年前の事件で、すでに亡くなった人も多いのに、有功者が700人から4300人に増えていたのだ。ドルキング事件で懲役2年の有罪判決(一審)を受けた金慶洙も光州民主化有功者だが、彼は当時13歳だった。文在寅は当時ソウルで警察に拘留されていたが、有功者である。
 有功者には様々な特権がある。それなりの補償金が支給されるだけではない。政府機関であれ民間企業であれ、就職試験では10%の加点が与えられる。光州には有功者が多いので、全羅道出身ですら全羅道の公務員になるのが難しいとまで言われる。このため、就職に苦しんでいる20代の男性が文政権に最も批判的である。

(2)米中戦争と韓半島の位置づけ

米中戦争と北朝鮮の現状
 昨今、米中戦争が激化しているが、この戦争を仕掛けたのは言うまでもなく中国・習近平である。早くも第一列島線や第二列島線を一方的に引くなど、中国は膨張主義の野心を隠さなかった。習近平が国家主席になってから一帯一路を喧伝するなど、覇権追求路線が顕著となった。「経済が発展すれば中国はまともな国になる」「中国にもやがてゴルバチョフのような人物が現れる」という日本をはじめ、西側諸国の期待は見事に裏切られた。中国共産党の全体主義は文明社会への挑戦だ。米国の対応は正当だ。
 トランプ大統領の見事な功績の一つは、米・朝首脳会談だ。中国が弄んできた「六者協議」を無力化し、金正恩を直接「料理」できるようにした。一方、金正恩は2018年首脳会談以降、対米対決を意味する社会主義固守を強調した。北側の本音は(公式文書よりも)芸術団などの公演に表れるが、習近平の前での公演も「社会主義死守」が主題だった。
 2019年2月のハノイ会談で、金正恩は北を狙う戦略核の撤退を米国に要求した。これは中国を狙える戦略核の放棄を意味するため、習近平の使嗾のはずだ。1年間に、中・朝は4回もの首脳会談を行い、中国は多くの情報を北へ提供している。そして、中・朝に同調する文在寅こそ金正恩の首席報道官である。
 南北が連邦制を強行すれば、その政権は反米親中であるため、米国と物理的な衝突まで避けられなくなる。韓半島は米中戦争の決戦場である。駐韓米軍の撤退など噂されるときもあるが、米国が韓半島を中国な明け渡す可能性は無い。

主思派政権をけん制する米国
 米国は主体思想派を以前から警戒している。これまで米国の歴代政権は、盧武鉉政権も含めて、韓国におけるすべての政変を追認してきたにもかかわらず、トランプ政権は文政権発足に至る「ロウソク革命」を追認しなかった。
 2018年の「9・19南北軍事合意」によって、米国は文政権への警戒は決定的なものとなった。翌月、米国務省は対北制裁措置など政策を韓国と調整するため、韓・米ワーキンググループを作った。韓国政府の対北政策は同ワーキンググループを通じて米国の諒解のもとでやるように、というだけではない。米財務省は駐韓米国大使館と在韓米軍に、それぞれ対北制裁担当官を配置している。彼らは韓国の企業や銀行に直接連絡をして、「国連制裁に違反すれば、米国との取引ができなくなる」と警告している。韓国政府が北への投資計画などを発表すれば、対北制裁担当官は韓国政府を介さずに、直接警告しているのだ。

米国は北の核保有を絶対に許さない
 韓半島の周辺海域に、英のクイーンエリザベスや仏のドゴールなど原子力空母が姿を現すようになった。これは海上封鎖を想定してのことと言える。米国はF35を配備したが、従来の戦闘機による攻撃とは違い、F35を使えば最小限の戦力で北を攻撃することができる。米国が軍事作戦に踏み切れば決定的な措置はごく短時間で終わり、北は反撃する余裕もない。これらすべての措置を、米国は北にわかるようにやっている。
 かつて朴正煕大統領は核保有を試みたが、米国は許さなかった。韓国に非核化を強いた米国が、北の核を許すはずはない。もし許せば、自由民主主義同盟への裏切りでもある。
 東アジアでは、金正恩体制に対して、韓国戦争以来の本格的な情報戦が始まった。だが、平壤の後ろ盾の中国共産党を倒せば、北の問題は自然と解決する。

 

4.全体主義との戦いに勝つために

 全体主義との戦いは文明社会の義務である。20世紀において、一国だけで巨大な全体主義に勝利した国はない。米国が全体主義に勝利できたのも、西側諸国との同盟があってこそだった。全体主義と戦う韓国右派の動向に、日本保守派は関心を持つべきである。

(1)韓国右派の現状

 韓国右派の陣地の一つはプロテスタント(キリスト教)である。主に30歳未満と60歳以上が主思派と徹底戦っている。軍では、高級指揮官らは左翼に従順だが、中堅将校には日・米との戦略的連携の回復を担える将校たちが残っている。知識人はyoutubeなどを使って大衆を啓蒙し、ネットワークを拡大している。朴槿恵の違憲弾劾へ粘り強く抵抗した多様な太極旗勢力は健在する。朴槿恵救出を当面の目標とし、全体主義の中国共産党打倒を最終目標とするのが大勢である。米中戦争で絶対米国側に立つべきと主張している。
 右派活動の最大の課題は、精神文化の復興である。特に、偏狭なナショナリズムを乗り越えようとし、前ソウル大学教授の李栄薫氏が主導する「反日種族主義を克服せよ」という活動も組織化している。李教授らは左翼の嘘の煽動や洗脳に対して学問的に反論し、youtubeで発信している。2か月以上継続しているが、左翼からは一切の反論がない。
 右派の隘路は、当面の戦いや次世代を教育のための資金を調達することである。今のところ、目に見える司令部などもない。これまで保守の政治家と言われてきた人物たちが、今の内戦を勝ち抜き北韓を解放するリーダーになれる可能性は低い。全体主義との決戦で勝利に至大な貢献をする者が右派のリーダーになっていくと私は考えている。

(2)文政権の今後

 韓国が正常化すれば、文在寅など與敵犯たちは死刑である。文在寅などもそのことが分かって恐れているため、手段を選ばず権力維持にもがいている。全体主義政権は暴力を常套手段とするが、文在寅政権は公権力を恣意的に使い「司法殺人」まで齎している。
 しかし最近は無道な政権への服従を拒否する裁判官も現れた。前最高裁長官・梁承泰に対する300ページに及ぶ起訴状を検察が提出したが、裁判所が修正を指示した。検事や判事の3分の1は左翼だが、多数は左翼ではない。他にも内部告発者が続出している。
 権力を乱用し憲法を無視する文在寅政権下では、2020年の総選挙が実施されると確信できない。当然、あらゆる備えが必要だ。そして、文在寅が5年間の任期を全うするのは決して許してはならない。米国は文在寅を金正恩同様に監視と制裁の対象と捉えている。韓国経済が壊滅はしない程度に、米国が制裁を加えるのは難しいことではない。

(3)アジアの文明史的変化

 習近平が金正恩と文在寅を意のままにしている。文在寅は80年前のことで日本を非難、敵対するが、現在韓国民を侮辱し苦しめている中国には一切文句を言わない。ところが、PM2.5だけでも子供を育てる若い女性など、韓国民の多数はここ数年で反中となった。
 米中戦争で米国が勝利すれば、北の邪教全体主義体制も滅びる。北の解放はもちろん、中共が1949年以後占領したすべての地域は自決権を持つようになる。満州もそうなる可能性が高い。つまり、米中戦争はアジアの文明史的進歩を可能にする突破口である。
 韓国でもこの文明史的戦いで自由右派が勝利することで、教養と常識が通用する社会へと進化できる。そうなれば、「反日イデオロギー」は韓国で完全に消滅する。日・米と韓国右派が連携して、習近平・金正恩・文在寅の全体主義同盟を打ちのめさねばならない。日本社会も韓国自由右派の反中・反全体主義闘争を積極的に支援してほしい。

(本稿は2019年3月15日および27日に開催された政策研究会における発題内容を整理してまとめたものである)