加速度的に進む少子化:政府は対策に本気なのか…

加速度的に進む少子化:政府は対策に本気なのか…

2019年12月30日
家庭基盤充実
出生数の急激な減少

 日本の少子化がとまらない。
 201912月、2019年の出生数が86.4万人になると厚生労働省が発表した。1899年に人口統計が始まって以来の最低人数である。
 2017年の出生数は約94.6万人、翌2018年は約2.8万人減少(約3%減)で91.8万人であった。そして2019年は前年比約4.8万人減と5%強もの減少である。実は国立社会保障・人口問題研究所が2017年に出した日本の将来人口推計では、出生児童数が90万人を割り込むのは2021年(中位推計)、86万人台になるのは2023年のはずだった。
 2004年に111万人が生まれたのを最後に2015年は100万人の子どもが生まれた最後の年となり、2016年には98万人だった。2017年には95万人、2018年には92万人と減り続け、ついに2019年には90万人を切るというわけだ。
 2004年の111万人が約10万人減って2015年に100万人になるまでは11年かかっていた。だが2015年からわずか4年後に、10万人(つまり2015年度比で1割減)も出生児童数が減ることになる。つまり加速度的に出生児童数が減り、少子化が進行しているのだ。
 2019年には最も出産可能年齢の女性が多かった197174年生まれの団塊ジュニアの女性全員が45歳以上になってしまった。今後は毎年のように出産可能年齢の女性が減っていく。今から30年後の2049年に30歳になる女性は、概算で今年生まれた赤ちゃんの半分、つまり約43万人しかないことになる。

教育・保育無償化政策の余波

 2018年に政府は「少子化は国難」と言い、全世代型社会保障を目指すとした。201910月からは教育・保育の無償化が始まっている(これで政府の少子化対策は終わりなのだろうか?)。この政策については賛否両論がある。利用者の立場から言えば、待機児童のいない地域は歓迎されているが、待機児童のいる地域では、保育園が足りない中で入所競争の激化が予想され「今まで保育園利用を考えていなかった人まで申し込み、入れない子どもがさらに増えるのではないか」という意見もある。
 また保育士不足の中で無償化によって利用者が増え、さらに現場に負担がかかることも危惧されている。例えば2018年の状況を見ると、3歳児97.4万人のうち42.5万人(全体の43.6%)が保育所に、35.8万人(同36.7%)が幼稚園、14万人(同14.4%)が認定こども園に在籍している。残りの5.1万人(同5.2%)が在宅か認可外の施設に通っていると考えられる。同じように4歳児の2.7万人(同2.7%)、5歳児の1.7万人(同1.7%)も居場所が不明である。この子どもたちが無償化をきっかけにどこかに就園・入所しようとする苦悩性がある。
 質の高い幼児教育・保育が子ども非認知能力を伸ばし、それはその後の人生の基盤となると立証されている。さらに、特に社会的に不利な状況の親子の場合、保育園は親子に大きな効果をもたらす。子どもの問題行動も減り、(保育園からの育児へのアドバイスもあるのか)親の子育てにも良い効果が出るという。その点では、就学前教育を受けたくとも経済的理由で受けられない子どもたちにとっては良いことだろう。
 だが幼稚園の中には、例えば預かり保育の希望者が増える一方で、幼稚園教諭や保育士不足で全員を受け入れることは不可能なところもある。そのため、無償化対象施設になることを選ばなかった幼稚園や、預かり保育そのものをやめることを決めた園もあるという。

質の保障と許可外保育施設をめぐる問題

 特に賛否両論を引き起こしたのは、認可外保育所の中でも、さらに認可外保育所の基準も満たしていない施設も無償化の対象としたことだ。認可外保育所では、子どもの死亡事故も起こっている。2018年には認可保育所で0歳児が3人、1歳児が3人亡くなっている(認可保育所は1歳と6歳の1名ずつで計2名である)。実は2004年から2018年までのデータを見ると、認可保育所では計61人、認可外施設では137人の子どもが亡くなっている。
 実は認可外保育施設は都道府県などの指導監査を受けることになっているが、2017年度の認可外保育施設への立入調査は69%しか実施されていない。さらに認可外保育施設の内認可外の指導監督基準に適合しているのは55%に過ぎない。
 さらに保育士不足の解決も難しい。その背景には保育士の待遇の悪さがあるといわれている。だが、国は保育士平均で約384万円、経験7年以上の保育士が約450万円の年収になるように公費を投入している。運営者がそれだけの公費をもらいながら保育士に支払っていないのだ。内閣府の調査では保育士の平均年収は約315万円である。この問題に関しては総務省が2018年に、賃金加算などが保育士に支払われているかどうかを賃金台帳までみて監査する必要性を勧告している。今のままでは保育士の処遇を改善しようと保育への公費を増やしても、保育士に配分される保証がない。
 さらに、会計検査院は201617年度に保育施設運営の補助金を受給した全国の施設の中から6089施設を抽出し、同加算分が適切に使われていたかを調査した。そうすると約1割強にあたる延べ660の施設で71900万円余りが実際は賃金の上乗せに使われていないか、または使われていない可能性の高いことが判明している。
 子どもたちが健やかに育つ環境守るためには、保育の質の保障が欠かせない。だがそれを制度的に担保する仕組みはまだ不十分である。子どもたちのためにすることは、まだたくさんある。政府は子どもたちへの施策充実の努力継続は必須である。

政策オピニオン
前田 正子 甲南大学教授
著者プロフィール
早稲田大学教育学部卒業。米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院留学、慶應義塾大学大学院修了。その後、横浜市副市長、公益財団法人横浜市国際交流協会理事長などを経て、現在、甲南大学教授。社会保障改革に関する集中検討会議委員、地方版子ども・子育て会議委員なども務める。商学博士。著書に『福祉が今できること-横浜市副市長の経験から』『みんなでつくる子ども・子育て支援新制度』『保育園問題』『無子高齢化』他。

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