政策提言

2012年12月1日

「個人」単位社会から 「家庭」単位社会確立への提言 ―家庭解体政策を改めよ―

 家族と地域が強固な絆でつながれた美しい日本再生に向けて、本稿では家庭強化による人づくり、家庭基盤を強化する子育て支援と家族政策のあり方について提言を行いたい。

提言要旨

はじめに

 4人に1人が高齢者という超少子高齢化社会を迎えた我が国では、三世代家族から核家族へ、そしていまや単独世帯の数が核家族を上回るという急激な世帯構造の変化が起きている。そしてその変化の中で、高齢者の孤立死、年間3万人を超える自殺、児童虐待・DV(ドメスティック・バイオレンス)・高齢者虐待の増加など、様々な社会的課題が噴出している。また少子化によって現役世代が急激に減少し、国としての活力は低下、世代間扶養の原則によって成り立つ年金制度はまさに破綻の際にある。現在の我が国は先の敗戦以来の、質の異なった国家的危機に直面していると言えよう。
 では今、我が国が早急に取り組むべき課題は何か。それは家族を再生し、「家庭」を単位とする国づくりであろう。
 日本の高度経済成長を支えてきた家庭の基盤は、核家族化と少子化の進行により急速に失われ、「家庭」単位から「個人」単位への政策転換、特に男女共同参画をはじめ家庭破壊思想を根本に持つ「家族弱体化」政策によって、子育てや介護に様々な軋轢を引き起こしているという実態を直視しなければならない。
 家族と地域が強固な絆でつながれた美しい日本再生に向けて、本稿では家庭強化による人づくり、家庭基盤を強化する子育て支援と家族政策のあり方について提言を行いたい。

1.政治家と行政府は「家庭と結婚の価値」に関する国民的意識を啓発せよ

 私達は、東日本大震災で1万8千余名の犠牲となった人々に手を合わせた。今こそ、大自然の摂理の前に謙虚になり生かされている生命、授けられた生命に感謝するという原点に立ち戻るべきである。その生命の原点こそ結婚であり、家庭なのだ。国家を存立の危機から救出出来るのは、国民が「家庭と結婚の価値」に気付く事である。そのために、政治家と行政府は「家庭と結婚の価値」に関する国民的意識を啓発すべきである。

2.憲法に「家族尊重条項」を設けよ

 国づくりの根幹になるのは憲法である。ゆえに「家庭を単位とする人づくり、地域づくり、国づくり」を進めるには、憲法における家庭観が重要である。
 しかし驚くべきことに、日本国憲法には、諸外国の憲法あるいは世界人権宣言や国際人権規約では一般的な規定である「家族尊重条項」が存在しない。
 例えば、「家族」に言及した第24条第2項は「…離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」と、「離婚」を「婚姻」より先に記しているほど個人の価値に重点が置かれている。ただ、ここ数年、憲法改正へ向けた議論が盛んになされている。この時こそ、家族再生への施策を打ち出すためにも、憲法に家族尊重条項を設けるべきである。

3.家庭と結婚の価値を重視し保護している現行民法の条項を堅持せよ

 家庭は新しい生命の誕生と育成の厳粛な場である。だからこそ、わが国の民法は家庭と結婚について保護する規定を明記している。例えば、①婚姻の届出(739条)、②重婚の禁止(732条)、③同居、協力及び扶助の義務(752条)、④裁判上の離婚<守操義務>(770条1)、⑤夫婦同氏制度(750条)、⑥嫡出の推定<嫡出子制度>(772条)、⑦法定相続分(900条4)、⑧再婚禁止期間(733条)などである。
 第3次男女共同参画基本計画(2010年12月閣議決定)に明記されている「選択的夫婦別氏制度等のための民法改正の検討」は、民法の家庭・結婚に関する保護の規定を廃止し、わが国の家庭を根底から破壊させようとする政策以外の何ものでもない。家庭の破壊は、国家の破壊に繋がる。家庭・結婚の価値を尊重し、重視している現行民法の条項を堅持すべきである。

4.国は家庭強化のための法整備を、地方自治体は「家庭強化都市宣言」等を制定せよ

 国は家庭強化のための施策を早急に実施すべきである。そのための基本法並びに必要な法整備を進めるべきであり、「家庭は、社会の自然かつ基本的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する」と記した世界人権宣言第16条第3項に基づき、家庭と結婚の価値を基本理念とする基本法の制定並びに必要な法整備を進めるべきである。また地方においては「家庭強化都市宣言」及び「家庭強化条例」等を制定し、家庭と結婚の価値の基本理念を自治体の基本計画に位置づけるなど、家庭強化のための政策をつくるべきである。

5.公教育に「健全な家庭人、健全な社会人、健全な国民」育成のための人格教育を展開せよ

 公教育の中で家庭の価値を明確化し、人格教育を推進すべきことを提起しておきたい。家庭の価値は人類に普遍的なものである。このような教育政策を進めることで家族の絆を大切にする日本人の意識を理念的、実際的に支持し、日本の家庭基盤をより永続的で強固なものにすることができると考える。
 教育の目的は何か?それは「人格の完成」である。このことは教育基本法においても明確に掲げられている。本提言は人格教育の立場から、個人の人格の陶冶の目的は、まず家庭において結実すべきであると提起する。そのような人格教育のモデルを提示し、その普遍性を説き、広く教育において展開すべきである。

6.三世代家族を単位とした税制、福祉制度を確立せよ

 現在の家族政策の多くが、「個人」を単位にしたものであり、家族を解体してしまう方向性を有する。それに対して家族をより強くする政策に転換すべきである。
 有効な政策の一つが、三世代家族を単位とした税制の採用である。三世代家族には子育てはもちろん、出生率や教育面などで様々な利点があると言われている。
 具体的には、まず課税方式の視点を変える。これは三世代家族の所得合計(家計所得)を家族の人数で割って一人当たりの家計所得を算出し、それに累進課税を課すという方式である。仮に祖父母と子供夫婦が同居でなく近距離に住んでいる場合でも、一つの家族と見なす。この方式では、税を払うのも補助金を受け取るのも家族単位になる。また、公共住宅などで子供家族が住んでいる部屋の隣室や下の階などに優先的に入居を許可する政策、離れて暮らす子供家族と高齢者家族の間で様々な形で助け合っている場合は「一家族」と認定し、所得税率を抑えることによって、家族間の頻繁な往来を支える。

7.子育ての社会化を改め、「子供は家庭で育てる」基本政策に転換せよ

 子育ての第一義的責任は社会ではなく父母にあるのはいうまでもない。しかし、過去20年にわたる政府の家族政策をみてみると、本来家庭で担うべき子育てや介護などの役割を外部の機関が担うという、「子育ての社会化」「育児の外注化」政策を推し進めてきた。
 政府が今年3月に決定した新たな子育て支援策「子ども・子育て新システム」の問題点は、いつでも必要な時に子供を預けられる「子育てのコンビニ化」が目標になっている点だ。子育てを効率化することは、働く大人には好都合かもしれないが、子供の健全育成には明らかにマイナスである。子供の健全育成という視点は、当然第一に考えなければならないことである。
 子育て世代の母親の8割が「子供が3歳くらいまでは育児に専念したい」と願っている。ゆえに、まず子育てに専念したい親の願いに応える子育て政策を進めるべきである。その上で、働く親への支援は、子供の成長発達段階に配慮し健全育成に重点を置いたものでなければならない。

平和政策研究所 子供・家庭・教育研究部会