我が国は、価値の外交と同盟を重視し、宗教的価値観を共有する自由民主主義国家群との連携を強化すべきである。
提言要旨
1.「唯物論無神論科学主義」に立脚する「世界観」「人間観」から脱却せよ
戦後の日本は高度経済成長を通して、世界でも有数の経済大国となったが、その一方で、倫理道徳が衰退し、家庭や共同体の崩壊が深刻な課題となっている。同時に危機を打開し得るリーダーの不在も叫ばれている。
本来、倫理道徳の基盤を提供し、人格教育の基準を提示してきたのは宗教的価値観であった。
しかし、戦後日本においては、科学万能主義的な価値観が主流となり、宗教は非科学的なものとして排除される傾向が顕著になっている。それが精神性の貧困に由来する現代日本の危機を招いた本質である。
しかし、現代科学の進展は、この宇宙に何らかの「超知性」「デザイナー」の存在を想定せざるを得ない地点に到達しており、宗教と科学とが共通の世界解釈の基盤の上に立つ時代が到来している。ここにおいて、宗教を排斥してきた「唯物論無神論科学主義」から脱却し、宗教と科学が調和した有神論、宗教的世界観を「人づくり、家庭づくり、国づくり」の基盤に据えるべきである。
2.宗教的「人間観」による人格の育成と国民倫理の再興を図れ
自由主義経済体制と民主主義的な政治体制が有効に機能するためには、高い倫理観を持った国民の存在が不可欠である。そして、道徳心や倫理観の基盤となるものは、宗教的価値観である。
人間を越えたものに対する畏敬と感謝の念、守るべき道理を尊重する規範意識、他者と公益に対する奉仕を自己の物質的充足よりも上位に置く利他的価値観などは、すべて高等宗教が育み提供してきたものである。
そのような宗教的価値観の回復による、道徳的倫理的人材の育成こそが、教育現場、社会全体における緊急の課題である。故に、人材育成の現場において、宗教的価値観を導入するとともに、宗教者たちが積極的に貢献し、その伝統や叡智を提供できる仕組みを整えるべきである。
3.宗教的価値と統合された新しい家庭像を構築し、家庭と共同体を再建せよ
社会や国家の安定、発展にとって、健全な家庭の存在は不可欠の要素である。しかし、現代では個人単位の享楽的価値観が蔓延することにより、結婚や家庭の価値が相対化され、少子化、無縁社会など、様々な社会問題を誘発している。
ここにおいて、再び「結婚と家庭の尊厳」を回復するために、「家庭尊重条項」を憲法に明記すべきである。
また「結婚と家庭の尊厳」の根拠を提示するとともに、健全な家庭生活を営む徳性を育むためにも、宗教的価値観が果たすべき役割は大きい。宗教的価値観に基づく人格教育を通して家庭再建を図るべきである。
同時に、現在推進されている個人を単位とした社会政策が、家庭軽視、非婚化の風潮を助長することは明らかである。増大する単身家庭への配慮を示しつつも、国家の礎である「家庭を強化する」強い意志を政策面にも反映すべきである。
4.家庭を基本単位とし、宗教的価値を尊重する「友好的政教分離」の国家を目指せ
国家のあり方として、「個人主義」か「全体主義」かという議論があるが、本来、「個」と「全体」は調和して、共に発展すべきものである。そして、「個」と「全体」が調和する最小のモデルは家庭である。
家庭が健全である時、そこで涵養される人間性は、より大きな共同体や国家において「個」と「全体」を調和させることに役立ちうる。従って21世紀の日本は、「家庭」を基本単位とした国家を目指すべきである。
また同時に、そのような家庭理想の礎となる宗教的価値観が重要となるが、戦後日本においては「政教分離」の概念が敵対的に解釈され、宗教が、教育現場や社会から排除される傾向があった。今後は「友好的政教分離」の立場に立ち、宗教の持つ叡智や伝統が、家庭や社会、国家の安定と発展に貢献できる環境を整えるべきである。
5.宗教間の和合と協力を促進し、価値の同盟を強化することを通して、世界平和に貢献する国家を目指せ
現代の国際社会において貢献しうる国家になるためには、宗教問題を避けて通ることはできない。宗教が紛争の種になっているという指摘がある一方で、多くの国々において宗教が国民生活の重要な基盤となっている。もし、我が国が、真に平和な世界を追求しようとするならば、宗教、宗派間の相互理解と和合、協力に向けた取り組みを積極的に支援しなければならない。
また、環境問題等、国境を越えた普遍的課題に取り組まなければならない今日の状況を見れば、国境の壁を越えて広がる宗教や宗教系NGOが積極的に貢献できる枠組みをつくるべきである。
更には宗教的価値観を土台とした、自由や民主主義などの普遍的価値を共有する国家群との「価値の同盟」を重視し強化しつつ、「人間の尊厳」を蹂躙し「宗教」を迫害する国家群とは基本的価値観において相容れないことを明確にすべきである。