北極海航路は、これまでのスエズ運河経由に比べてヨーロッパと日本の間の距離・日数とも3〜4割減となり、新たな貿易経路として大きな経済効果が期待されている。北極海航路を経由して貨物船が最初に到着するアジアの国は日本になる。その地政学的な強みを最大限に活かせば、わが国はアジア物流の最上流に立つことができる。
また、IPCCの報告書が指摘しているとおり、北極海航路の利用は温暖化に社会システムを適合させていく適合策になると同時に、温室効果ガスの排出を減らす緩和策にもなる。適合策であると同時に緩和策でもあるという点が、北極海航路の利用推進を主張する根拠となる。
しかし、日本の北極政策は科学研究が中心で、中国や韓国に比べて北極海航路はあまり重要視されていないのが現状である。航行支援のための海氷予測などの研究は、日本は世界トップレベルにあり、それらを実用レベルに高めるためにも、北極域研究船を速やかに建造・運用し、北極海航路開発を推進すべきである。北極域研究を更に進めるには、関係府省、関係研究機関、アカデミア等が連携し、北極や北極域研究に係る広報・情報発信や人材育成を積極的に推進する必要がある。
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