道徳の専門免許を創設し、道徳教育学の構築と教師の専門性を確保する

道徳が教科化されたことにより道徳的価値を教える枠組みは整った。しかし、どのような人間を育て、社会を構築するかという目標は不明瞭なままである。道徳教育の質を高めるためには、道徳の専門免許を創設する必要がある。

それにより第一に、道徳教育の理論を構築する研究者を養成することができる。今まで道徳が教科でなかったため、道徳教育を専門とする研究者は諸外国と比べて圧倒的に少ない。教員養成の内容も十分とは言えない。文科省は人格主義の視点に立った「道徳教育学」の構築を促し、大学を人格教育研究の拠点とすべきである。

第二に、小中学校で道徳を教える教師の専門性を確保することができる。道徳の授業では、いじめや自殺、児童虐待に加え、生命倫理等専門的な問題も扱う。そのため、教師には幅広い知識と高い専門性が求められる。諸外国では、大学で専門的な教育を受け、免許を取得した専門教員が週3、4時間の授業を行うことが通例である。日本でも、特に中学校において専門の免許を持つ者が授業を行うことが望ましい。教員免許を持つ者が取得する資格免許の形や、自治体や学会などが免許や資格を付与する制度も検討すべきである。