トランプ政権秋の陣 ―政権運営能力への疑問符―

トランプ政権秋の陣 ―政権運営能力への疑問符―

2017年10月18日

孤立深めるトランプ

 「ドナルド・トランプ米大統領はワシントンのアウトサイダーとして、反エスタブリッシュメントの公約を掲げて大統領選に出馬し、当選を果たした。トランプは就任後6カ月を控え、その代価を支払っている。米議会の共和党指導部から半ば見放され、政府内からの相次ぐ情報漏洩に直面し、ワシントンで支持基盤が皆無に近い状態に苦しみ、孤立を深めている」。(米紙ワシントンタイムズ)米国の首都ワシントンにある2大日刊紙のうち、ワシントンポストは民主党系で、その論調はトランプに対して終始批判的だが、ワシントンタイムズは保守系で共和党やトランプには同情的論調が目立つ。そのワシントンタイムズも、トランプが置かれた危機的状況を醒めた目で報じ始めている。米議会は9月5日、夏季休会を終え審議が再開された。来年11月は中間選挙。トランプとしては何としても危機的状況を乗り越えたいところだ。
 トランプは就任後100日間で、過去のいかなる政権も及ばない野心的業績を達成しようとした。しかし内政、外交で100日以内に達成するとして打ち出していた公約の多くが、記録的な低水準の大統領支持率、トランプに対する賛否両論で分断された米国民、議会で深まる共和、民主の党派対立の中で、達成できないままになっている。辛うじて達成された目ぼしい成果として、環太平洋経済連携協定(TPP)離脱、地球温暖化防止のためのパリ条約離脱、イスラム圏6カ国からの条件付き一時入国禁止があるが、これらの成果が本当に米国の国益にかなうものなのかをめぐり評価が真っ二つに分かれている。むしろ、国内的にも国際的にも米国にとっては長期的にマイナスとの見方の方が大勢を占めていると言っていい。
 安全保障面では、北朝鮮の核・弾道ミサイル実験に対する軍事力を背景とした強硬な対応、シリアのアサド政権への武力行使などが目新しい展開だ。ただ、北朝鮮の場合は、米国が先制武力行使に出た場合、北朝鮮による同盟国の韓国、日本を標的にした報復攻撃が悲劇的結果をもたらす可能性が強く、米国は振り上げた拳を降ろせないでいる。韓国の文在寅政権が米韓関係よりも南北関係、米中関係を重視するような姿勢を見せていることから米国との関係がギクシャクし始めた。北朝鮮が核・ミサイル放棄するよう説得を依頼していた中国も思うように動いてくれず、トランプ政権は中国への経済制裁を実行。米国の北朝鮮への対応は手詰まり状態だ。シリア情勢も、過激派組織イスラム国(IS)追放後のシリアでの影響力拡大を狙うロシア、イラン、トルコなどの思惑が絡み合い、混迷を深めている。
 トランプ政権は、国務省の軍縮・国際安保担当次官、東アジア・太平洋担当次官補、政治・軍事担当次官補、駐韓国米大使、国防総省の政策担当次官、アジア・太平洋担当次官補といった、これまで北朝鮮外交を実質的に担ってきた国務省と国防総省の高官を、指名さえしていない。ティラーソン国務、マティス国防両長官、マクマスター大統領補佐官、ヘイリー国連大使の行動は目立つものの、政策策定に実質的参与するスタッフが決まっていない。人事の遅れである。
 要するに、トランプ政権には本物の成果と言えるような国内外で普遍的に評価されうる成果がないのだ。

スキャンダルへの対応

 そこにもってきて、トランプ政権の足元に、ロシア疑惑をめぐるスキャンダルで火がついている。スキャンダルへの対応で、内政、外交の重要なアジェンダに思うように時間とエネルギーを投入できない状況になっている。国内政策の当面の重要課題である医療保険制度改革法(オバマケア)に替わるオバマケア代替法案、減税法案は議会審議が停滞しており、超党派的な合意が達成できる見通しはない。米議会予算局(CBO)は6月26日、上院共和党のオバマケア代替法案が施行された場合、無保険者が2200万人増加するという試算を明らかにした。共和党内は、無保険者の増加を懸念する党穏健派と、代替法案はオバマケア廃止には不十分と主張する党保守派に分裂している。政策アジェンダの推進が行き詰まる中で、スキャンダルがトランプの孤立を深めている。
 ボストン大学パーディー国際研究大学院の大統領学専門家マイケル・コーガン教授は、トランプほど孤立した大統領は、米国史を探しても1865年のアンドリュー・ジョンソンくらいしかいないと指摘する。1865年4月15日にリンカーンが暗殺されると大統領職に就いたアンドリュー・ジョンソンは、議会との関係を構築することができず、弾劾裁判を辛うじて乗り越えたが、1期だけの大統領で終わった。
 コーガンは、「トランプは、数えきれないツイートと彼が勝利した州での激励集会を通して、ジョンソンができなかった方法で、自分の支持基盤と意思疎通できるし、している。しかし、彼の党が主導しているはずの議会と彼の間を取り持つ人を必要としている。追従的な閣僚だけでは不十分だ。彼はワシントンのインサイダーや政治家は好きではないかもしれないが、少しの期間だけでも自分の気に入る誰かを探さなければならない」と述べている。
 ホワイトハウス、ワシントンからの一貫したメッセージが発出されていないことも、トランプのイメージの問題を悪化させている。ホワイトハウスでは報道官ショーン・スパイサーが戦闘的姿勢で定例記者会見を仕切ってきたが、報道機関のトランプに対する敵対的姿勢をますます深める結果になった。トランプは6月末に、ホワイトハウスの広報チームの再編を行い、スパイサーを背後に退かせ、後方からホワイトハウスの広報戦略を実施することになった。しかし、こうした小手先の改変も、トランプを孤立から脱出させることはできないというのが、専門家の見方である。
 トランプはラインス・プリーバス大統領首席補佐官の後任に軍人で国土安全保障省長官を務めてきたジョン・ケリーを大統領首席補佐官に指名し、強力な統制によりホワイトハウスに秩序を取り戻すことに期待をかけている。ホワイトハウスのサンダース報道官は7月31日の記者会見で、「大統領はケリー氏にホワイトハウスを運営するための全権限を与えた。全職員がまずケリー氏に報告を行う」と語り、ケリー首席補佐官がホワイトハウス統制の大きな権限を与えられていることを示唆した。
 ケリーは軍人として、マティス国防長官と近い関係にあり、国土安全保障省長官としてトランプ政権の安全保障政策で重要な役割を担う将軍の1人である。トランプ政権の中でも、軍人が指揮する安全保障チームは、政権を安定させる要になっている。ケリーは軍人としての指揮能力はもとより政治的な手腕も評価されている。ただ、政権発足後6カ月間に多くの補佐官が辞任しており、ホワイトハウスの人事の混迷はトランプ自身の運営方法にかなりの部分原因がある。
 9月5日から米議会が再開された。ケリー首席補佐官が成功するにはホワイトハウス運営の全面的権限を大統領から委託される必要があるが、トランプはケリーに首席補佐官として実際にどれほどの権限を与えるのかも不透明である。ケリーはトランプのコミー前米連邦捜査局(FBI)長官解任にも反発していたとされ、有能なだけにケリー自身がトランプと対立する可能性もある。マクマスター大統領補佐官、ティラーソン国務長官などの安全保障チームの重鎮は最近、ホワイトハウスの混乱、ホワイトハウスからの扱いを不快に感じているとされ、トランプの封印なしの言動が今後も続けば、ケリーも不快感を募らせてゆく恐れがある。

政権を蝕むロシア疑惑

 2016年米大統領選の最中に始まった米連邦捜査局(FBI)や中央情報局(CIA)の調査で、ロシアがハッキングなどを通して米大統領選の結果がトランプ勝利になるように裏工作を行い、プーチン大統領を含むロシア政府のトップがその工作を指揮したことが明るみに出た。
 トランプは選挙期間中から、プーチンを称賛し、ロシアとの協力に意欲を見せるなどロシア寄りの姿勢を取っていた。トランプやトランプ陣営がロシアの対米工作に協力したとすれば、それは米国民として国家反逆罪に相当する問題になる。今や、特別検察官、司法省、議会の複数の委員会、FBIなどがこの疑惑の調査を進めているが、トランプあるいはトランプ陣営がロシアの対米工作に協力する談合があったか、トランプ自身がコミーFBI前長官解任などにより司法調査妨害を行ったかが調査の焦点になっている。
 長男のドナルド・トランプ・ジュニア、娘婿のジャレド・クシュナーのロシアとの接触に関する新たな事実も発覚し、トランプの家族もロシア疑惑の調査対象になっている。またドナルド・ジュニアが調査当局に行った2016年6月のクリントンに不利な情報を握っているとされるロシア人弁護士との面会に関するミスリードするような声明に関して、トランプ自身が記載内容を教唆していたとワシントンポストが7月31日に報道し、疑惑調査はトランプに不利な方向に向かっている。2016年6月のジュニアとロシア人弁護士に関する面会は、ニューヨークタイムズが特ダネ報道したものだった。ロシア疑惑がトランプ一家に及ぶにつれ、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズが相次いで特ダネ報道を行い、報道合戦が激化している。これまで、トランプに名指しで批判されて政権と敵対的関係が強まっていたニューヨークタイムズなどはここぞとばかり活気づいており、トランプのメディア敵視の姿勢が裏目に出ている。
 トランプは政策以外のところで、次々に共和党のイメージを悪くするような騒動を起こし、政権運営能力の欠如があからさまになってきている。トランプは例えば、トランスジェンダー(出生時の性と自身の認識する性が一致しない人)を米軍に入れないとツイッターしたが、米軍は現に軍内で愛国心をもって従軍しているトランスジェンダーの士気に与える悪影響を懸念し、マティス国防長官や国防総省ももっと説明を受けなければ方針を実施できないとして保留にしている。またボーイスカウト米国連盟の全国大会で演説し、政治的発言をタブーにしてきた伝統を覆して政治的発言を行い、顰蹙を買った。
 共和党戦略家のアリス・スチュワートは、「(トランプが引き起こす)一連の騒ぎが(共和党が推進する)法案成立を阻害していることは明らかだ」としている。この現実に対して、共和党議員の我慢が限界に達し、トランプへの不満が高まっている。
 トランプ就任の最初から、ワシントン、議会の共和党エスタブリッシュメントはトランプに表面的な支持しかしてこなかった。そこに大統領への忠誠心はない。民主党とマスコミは、トランプ陣営のロシアとの談合疑惑などについて、絶え間ない批判と攻撃を繰り返している。民主党は、トランプとトランプ陣営が敵国であるロシアと協力して国家反逆罪を犯し、トランプ勝利という大統領選の結果は無効だという主張を連日繰り返している。議会の共和党指導部からは、民主党、マスコミからの激しいトランプ攻撃に対して、ごくまばらな反論しかされていない。トランプ自身も効果的反論ができず、「魔女狩りが行われている」という逆批判に終始している。この間、トランプへの国民の支持率は着実に低下していっている。
 トランプ政権は支持・不支持が拮抗する中で発足したが、1月以降は一貫して支持率が低下した。マイケル・フリン前大統領補佐官(安全保障担当)が辞任したのを契機に表面化したロシア疑惑が拡大の一途をたどったことが大きく影響している。政治サイトであるリアル・クリアー・ポリティックスがリアルタイムで公表している全米世論調査の平均値でも、支持率は5月中旬に40%を切り、30%台を低迷している。米国のCBSテレビが6月20日に発表した世論調査では、トランプの支持率は36%と就任以来最低となった。就任後6カ月の時点は大統領と米議会、米国民のハネムーン期間とされる時期で、過去の大統領は大概60%とか過半数を上回る支持率を記録してきた。
 トランプのように40%を切る支持率というのは異例だ。ギャラップ社は8月20日から9月2日の間、トランプ支持率が就任以来最低の34%から35%に低迷した。同時期のクインピアック大学調査は、トランプ支持率は就任以来最低の35%、不支持率は59%に達している。こうした状況は、夏季休会を終え米議会が再開した9月5日以降も続いている。

疑惑調査に対する反応

 ロシア疑惑は、トランプ政権の内政、外交課題への取り組み努力の最大の障害になっている。共和党のロシア疑惑におけるトランプ弁護は、FBIによる1年近い調査を含めこれまでの調査で、トランプ政権とロシアの談合の証拠は出てきていないという主張が中心になっている。下院の共和党トップであるポール・ライアン下院議長は専らこの主張を繰り返しているが、熱意のある弁護とは言い難い。共和党関係者は、トランプ政権のアジェンダを下院で通過させることに集中しており、それだけで十分忙しく、ロシア疑惑についていちいち反論している時間がないと説明している。ライアン下院議長は、2016年7月にトランプが共和党大統領候補指名を確定した時も、公式にトランプを支持表明することを躊躇した。
 共和党戦略家ライアン・ウィリアムズは、「彼(トランプ)を公然と批判している共和党の有力者はごく僅かしかいない。同時に、彼を全力をあげて弁護している共和党員も非常に僅かである」(ワシントンタイムズ)としている。これと対照的に、1990年代の独立検察官ケネス・スターによるクリントン調査に対しては、ホワイトウォーター疑惑の時もモニカ・ルインスキー・スキャンダルの時も民主党議員がかなり頻繁に異議を唱えた。その原因について、ウィリアムズは1つには、トランプおよびトランプ政権の疑惑調査に対する反応が「行き当たりばったりで一貫性がなく」、調査の先行きが不明瞭だからだとしている。
 例えば、マイク・ペンス副大統領はテレビ出演で、フリン大統領補佐官はロシア大使との会合で制裁について話し合わなかったと明言した。ところが、その後、情報機関がフリン補佐官とロシア大使の電話での会話の通信傍受記録を漏洩したところ、2人は制裁について話し合っていることを示していた。ペンスは恥をかき、フリンは大統領補佐官を辞任する結果になった。ペンスはまたテレビ出演で、コミーFBI長官が解任された時に、解任の理由がクリントンの電子メール問題捜査の不手際にあったことを確認した。ホワイトハウスはコミー解任の理由をクリントンの電子メール問題だと説明していた。ところが、その2日後、トランプはコミー長官解任の理由はロシア疑惑調査だったと述べ、ペンスの発言と矛盾することを言った。共和党議員や共和党有力者は、トランプを下手に弁護すると足元をすくわれ、とんでもないとばっちりを食うことになるのではないかと懸念している。それくらいトランプは信頼されていないということだ。
 半面、6月後半からは、トランプの支持率低下は下げ止まりの兆候も出ている。6月20日に行われた下院補欠選挙では、ジョージア州6区とサウスカロライナ州5区の2つの選挙区で、共和党候補が勝利した。とりわけ、ジョージア州6区は保守の牙城とされる地区だが民主党が勝てるかもしれないという期待が高まり、「2018年の中間選挙の前哨戦」とか「トランプ政権への信任投票」と言われていた。民主党はこの占拠を2018年中間選挙での巻き返しの糸口と考え、ボランティアを動員して集中的選挙戦を展開した。共和党も危機感を感じて、必死の応戦に出た。結局、民主党はその糸口を掴むことができなかった。民主党とマスコミは、ジョージア州の下院選にあえて全米規模の関心を集め、民主党巻き返しの期待感を高めたが、裏目に出てしまった。
 また6月14日には、ワシントン郊外のバージニア州アレクサンドリアで、野球試合の練習をしていた共和党議員団に対して、サンダース支持派でトランプに激しい憎悪を抱いていた男が銃撃を行い、共和党議員に重傷を負わせる事件が発生した。これは反トランプ陣営からの左派テロとも言えるもので、民主党の反撃の勢いにブレーキをかける効果を生んでいる。7月16日のギャラップ社の世論調査では。トランプの支持率は39%で6月時点の同調査での37%より僅かに改善したが、基本的には横ばい状態。大きく好転する兆しはない。

頻繁な情報遺漏

 こういう中で、米国の政党政治の焦点は、2018年11月の中間選挙に移ってきている。ロシア疑惑調査は、中間選挙以降まで継続する可能性が高い。民主党やトランプ抵抗運動は、ロシア疑惑をトランプ弾劾に結び付けたいと考えているが、弾劾の可否は中間選挙の結果にも大きく左右される。米議会下院の定数は435議席で、共和党241議席、民主党193議席という勢力比になっている。大統領弾劾裁判の発議には下院の過半数が必要だが、そのためには民主党が下院で過半数を制するようにならないと難しい。そのためには、2018年の中間選挙で民主党は25議席を上乗せして過半数を取らなければならない。トランプの人気低迷のため、下院で共和党が議席を失うことはほぼ間違いないが、25議席まで失うかどうかは分からない。定数100の上院は、共和党議席が52だが、こちらの方が逆転の可能性は高い。
 トランプと同政権のロシア疑惑の調査がトランプに不利に展開している理由の1つは、情報機関からの疑惑を深めるような情報の頻繁な漏洩(リーク)だ。バージニア・コモンウェルス大学の政治学教授ジェイソン・ロス・アーノルドは、政府の機密と情報を専門的に研究している。アーノルド教授は、「トランプ政権における情報漏洩の量と範囲は空前絶後だ」と指摘している。同教授によると、情報機関、軍、国務省で情報漏洩しているのは、おそらくオバマ政権から残留している政治指名者とトランプに反対あるいは警戒しているキャリア官僚だとしている。同教授は、「トランプを侮蔑しているオバマ政権の元政府官僚の多くはまだクリアランスを保持している。彼らがクリアランスをまだ保持し続けているのは驚きだ」と言う。セキュリティ・クリアランスは、機密情報にアクセスできる権限のこと。機密情報取り扱い許可を意味する。
 同教授はさらに、「情報機関からの漏洩の一部は多分、党派的な側面がある。しかし、自分の見るところでは、CIA、FBI、米国家安全保障局(NSA)の多くが誠実に、トランプ大統領は国家安全保障と国益に独特の危険をもたらしていると信じている」と指摘する。さらに、「多分、彼らは我々が知らないことを知っているのかもしれない。しかし、官庁の内外の反対の多くは、トランプがすでにやったことへの反対よりも、これから彼が何をするかに対する不安からきている」とする。
 トランプに対しては、政府の官僚からの反発や不信が拡大しており、それがトランプに不利な情報の遺漏が多発する状況を生んでいる。
 情報漏洩の根本問題は、政権内の官僚、公務員のトランプへの反発の大きさ、幅広さである。セッションズ司法長官は情報漏洩への刑事捜査を3倍加し、捜査、罰則を強化することで、情報漏洩を抑制するという手段に出ている。しかし、これは所詮、対症療法で、根本的解決にはならない。刑事捜査強化でおじけづいて自粛する人々もいるであろうが、それ以上にトランプ政権に反発を強め、トランプ打倒のため情報漏洩をさらに行おうとする人々も増えるであろう。トランプ政権発足で、ジョージ・オーウェルの反ユートピア小説「1984年」が売れ、ブロードウェイの 演劇にもなって上演されているが、トランプ政権のやり方に深刻な危機感を抱いている米国人は多く、逆効果になる可能性が高い。
 トランプは就任演説で、自分は全ての米国民の大統領だと強調したが、そうなっていない。共和党、民主党両方が支持できるような政策をもっと多く打ち出し、レトリックもより融和的なレトリックにして、トランプ自身がイメージチェンジに本気で取り組む必要があるが、今のトランプのメンタリティーでは難しいと言える。

政策レポート
浅川 公紀 筑波学院大学名誉教授
著者プロフィール
1944年山梨県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。筑波女子大学教授、筑波学院大学教授、武蔵野大学教授、同・国際交流センター長を歴任。専門は国際政治、米国政治外交論、日米関係論。著書に『国際政治の構造と展開』、『戦後米国の国際関係』、『アメリカ外交の政治過程』、『アメリカ大統領と外交システム』など多数。

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