「ゲマインシャフト」(和合・親密・友愛)の視点を加味したコミュニティ政策を推進する

近代化・都市化に伴って地域社会の伝統的共同体が崩壊し、個人や家族の孤立化が進んでいる。政府は1970年代以降、「新しいコミュニティ」の創造によって、人びとの連帯感や相互扶助の意識を回復し、地域社会を再生する政策を推し進めてきた。しかし、その政策は地域住民の生活防衛や環境改善など、コミュニティの機能的側面に力点が置かれたものであった。そのため、日本社会の「無縁化」は歯止めがかからず、ますます深刻になっている。

ドイツの社会学者テンニースは、近代化によって社会が「和合・親密・友愛」などを特徴とするゲマインシャフト的共同体から、「利益・契約・機械的」などを特徴とするゲゼルシャフト的共同体へと移行するとして、ゲゼルシャフト的な性格の強い現代社会はゲマインシャフト的結合を回復する必要があると主張した。日本の地域社会においても、人びとの精神的絆を形成するゲマインシャフト的共同体をいかに構築するか、という視点に立った政策がより一層求められている。

ただし、現代の地域社会が直面する課題は、かつてないほど複雑化・多様化している。それらを解決するには、ゲゼルシャフト的共同体を再びゲマインシャフト的共同体に戻すといった二律背反的な発想ではなく、それぞれの利点をバランスよく統合したコミュニティ政策のあり方を目指すべきである。