はじめに
日本と中南米の関係と聞くと、まず頭に浮かぶのは、明治時代以降多くの日本人がブラジルなどに移民した歴史、それにその子孫にあたる日系人の強い親日の思い、そして日系人を通じた日本と中南米諸国の絆や交流であろう。
無論そのイメージは間違ってはいないが、近年、日本と中南米は新たな関係の時代に入っている。中国や権威主義諸国の影響力拡大が続く厳しい世界情勢の中で、太平洋に面した国も多い中南米地域と日本との戦略的な関係が急速に深まっているのだ。
日米関係の深化や日米豪印によるFOIP(自由で開かれたインド太平洋)の枠組み、またウクライナ戦争以後強まりを見せる日本と欧州諸国の接近、さらに日本の対ASEAN外交などはメディアで取り上げられることが多いが、それに比べて日本と中南米の外交がどのような動きを見せているのかについて関心が向けられることは少ない。
しかしいまや日本と中南米の関わりは日本の外交戦略の中でも非常に大きなウェートを占めつつある。その背景には、先月取り上げた米国と中南米地域の複雑な関わり合いや、トランプ米政権による威圧的な中南米政策の影響も深く関わっている。
そこで今回は、日本の中南米外交の近況とそれが持つ戦略的な意味合いについて取り上げてみたい。
1.日本と中南米交流の歴史
徳川時代に始まる交流
日本と中南米の交流は約420年ほど前、当時スペイン領であったフィリピンからメキシコに向かっていた交易船が千葉の海岸に漂着し、乗っていたメキシコの高官が徳川家康に謁見したのが最初とされる。
1609年9月、フィリピン諸島総督ロドリゴ・デ・ビベロ一行の船がヌエバ・エスパーニャ(当時のスペイン領メキシコ)への帰路、千葉県御宿沖で遭難し、317人が村人に救助された。ビベロは徳川秀忠及び徳川家康に謁見、時の日本の為政者とメキシコからの政府高官が対面し、初の会談が行われた。家康がビベロ帰国のために造らせた船は翌年に出航した。ビベロと共に渡航した京の町人田中勝介ら一行は、メキシコを訪問した最初の日本人となった。
次いで1613年10月、仙台藩主伊達政宗の命を受け、支倉常長を大使とする約180人が、太平洋の大海原を越えたヌエバ・エスパーニャに向け出帆した(慶長遣欧使節団の派遣)。支倉が率いた使節団の主たる目的は、日本とメキシコとの直接の通商関係を樹立することにあった。その2年前に起きた慶長三陸大地震・大津波からの復興事業の一環であったともいわれている。1614年1月、一行は当時ヌエバ・エスパーニャの最大の港であったアカプルコ港に到着。同年3月には現在のメキシコ市に到着し、ヌエバ・エスパーニャ副王との会談を果たした。
支倉使節団は、その後スペイン、ローマに向かい、メキシコとの貿易実現を目指した。残念ながら支倉は目的を果たすことは出来なかったが、日本で建造された帆船で最初に太平洋を往復した彼らの冒険は、日本外交に新たな地平を切り拓いたものといえる。
しかしその後、徳川幕府の鎖国政策の実施により、この地域との直接の交流は途絶えてしまう。日本が中南米との交流を再開させたのは、明治新政府の発足以後となる。
金星観測隊が外交関係樹立への道を開く
明治維新後の1874年、金星の観測のために来日したメキシコの観測隊は、横浜に観測所を設置した。金星の観測は成功し、日本政府の手厚い待遇に感銘を受けたコバルビアス団長は、本国に日本との国交樹立を進言。これが、数年後の外交関係樹立に繋がった。1888年、我が国はアジア諸国と締結したもの以外では初となる平等条約(日墨修好通商条約)をメキシコとの間で締結、これを機に国交を結んだ。その後、日本は他の中南米諸国とも次々と国交を樹立していった。
1893年には榎本武揚が海外移住促進を目的に植民協会を創設、ハワイに移住していた日本人132人がグアテマラに移住した。これが中南米諸国への初の集団移住とされる。さらに1897年には榎本武揚が派遣した植民団(榎本植民団)35人が横浜港を出港し、メキシコ南部チアパス州に入植した。これが日本から中南米への直接的な最初の組織的移住となった。以後、19世紀末から20世紀前半にかけてメキシコのほか、ペルー、ブラジルなどへの計画的移住も開始された。
戦後 日系人が繋ぐ交流の絆
太平洋戦争を挟み、戦後の1952年に日本からの海外移住が再開された。まずブラジルへの移住が復活、その後、ボリビア、パラグアイ、アルゼンチン、さらにドミニカ共和国への移住も開始された。
移住した日本人は現地社会の発展に寄与し、その子孫である日系人は各国各界で活躍してきた。現在も中南米には210万人以上の日系人(うちブラジルが9割以上)が住んでおり、居住国と日本との懸け橋として現地の親日感情の醸成に貢献、また最近では日系人を中心に中南米諸国出身者26万人(うち在日ブラジル人20万人)が日本に居住し、日本の産業を支えている。
中南米諸国は日本の国際社会復帰を支援し、日本の国連加盟には中南米地域の国連加盟全20カ国が賛成票を投じた。戦後、中南米地域には軍事政権が多数出現した時期もあったが、現在は多くの国が民主化を実現し、民主主義や市場経済など日本との価値観を共有している。
経済関係では、日本はメキシコ、チリ、ペルーとEPA(経済連携協定)を締結しており、2015年にはウルグアイと投資協定を結ぶなど連携を強めている。日本は中南米から鉱物・エネルギー資源や食料を輸入しており、中南米地域との経済関係の強化は我が国の経済安全保障体制の確立にとっても重要である。
2.冷戦後の中南米外交
かって中南米地域では米ソそれぞれが支援する左右両勢力の衝突で内戦が多発し、軍事独裁政権も増えるようになった。しかし軍事独裁政権の弊害が露になり、また冷戦構造の崩壊でソ連等の関与が激減したこともあり、軍事独裁政権や左派政権から民政への移管が相次ぎ民主化が進んだ。
それに伴い、日本の対中南米外交もそれまでの安全保障の側面が後退し、代わってODAや経済技術協力、民間投資等を通じた経済の関係が中心となり、なかでもブラジルやメキシコ、チリ、アルゼンチンといった国々との関係が強まった。日系人社会を媒介とした「人的絆」外交(例:日系人研修制度)も重視されるようになった。2004年にはメキシコとの間で日本初の包括的FTA(自由貿易協定)となる日・メキシコEPAが締結され(05年発効)、以後、チリ(2007年)、ペルー(2012年)と続き、現在、コロンビアとの間で経済協力協定の交渉が進められている。
2000年代に入り中国の経済的台頭が進むと、それに伴い中国と中南米の経済関係は拡大、また中南米は重要な資源供給地域として改めて注目を浴びるようになる(図表1、2参照)。日本もエネルギー・鉱物・食料の安定供給先として中南米への関心を強め、ボリビアやブラジル、メキシコ湾岸において資源・エネルギー外交を展開、政治的には「民主主義・市場経済・法の支配」などを共有する価値観外交を展開する。さらに「日・中南米賢人会議」(2003年〜)、「日・中南米フォーラム」等の枠組み整備に動いた。
2010年代に入り、インフラ投資などを通じて太平洋及び中南米地域における中国の経済的影響力がさらに強まるようになると、日本も巻き返しを図るべく、安倍政権(2012〜2020年)は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を提示。また中南米を「太平洋国家群」として位置づけ、「戦略的なパートナーシップ」の関係構築を目指すようになる。
即ち、日米豪印の枠内ではないものの、太平洋に位置する中南米の重要性に鑑み、日本の中南米外交に戦略性を付与すべく動いたのである。安倍政権は国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、国際社会の平和、安定及び繁栄に貢献する外交を、地球儀を俯瞰する形で積極的に展開した。安倍首相は、我が国にとって地理的には離れているが、移民を通じた人的な絆や互恵的な経済関係で結ばれた友好関係にあり、また基本的な価値観を共有する国際社会における重要なパートナーでもある中南米諸国との戦略的な連携の強化に乗り出す契機を作ったのである。
3.中南米外交政策の三つの柱
その具体的な動きとなったのが、2014年の安倍首相による中南米歴訪であった。安倍首相は7月25日からメキシコ、トリニダード・トバゴ、コロンビア、チリ、ブラジルを訪れ、各国首脳とそれぞれ会談。経済や資源開発、国連安全保障理事会改革などで連携強化を確認した。
トリニダード・トバゴでは、カリブ海の14カ国が加盟するカリブ共同体(カリコム)と初の首脳会合を開き、日本の政府開発援助(ODA)の対象外となった後も経済支援できる新たな制度創設を表明した。そして最後の訪問国であるブラジルではルセフ大統領と会談、日伯両国の関係を「戦略的グローバルパートナーシップ」へ高めることで合意し、民主主義,法の支配,人権の推進,持続的発展等の基本的価値の共有や首脳間の頻繁な会合実施,外相対話の例年開催の決定、さらにビジネス関係を戦略的分野に広げ、両国間の貿易投資を拡大させることなどをうたった共同声明を発表した。
またこの訪問時、対中南米外交政策の「三つの柱」も発表された(図表3参照)。それは現地サンパウロで安倍首相が日本の対中南米外交における「三つの指導理念」と題した演説において示された。

安倍首相は「juntos(ジュントス=「共に」の意)」をキーワードに据え、「発展を共に」「主導力を共に」「啓発を共に」の三つの「juntos(ジュントス)」をわがくに中南米外交における指導理念に掲げた。
「発展を共に」は、日本と中南米との経済の結びつきを一層深めようとするもの。6億人の人口を擁する中南米地域の一人当たり所得は過去10年間で2.5倍に増加しており、その市場規模は年々拡大を続けている(図表4、5参照)。また中南米は日本にとって鉄鉱石や銅などの鉱物資源、石油といったエネルギー資源、大豆や鶏肉といった食糧の重要な供給地域でもある(図表6参照)。自由貿易に積極的な国も多く、生産輸出拠点として、また所得の底上げによる成長市場としての中南米地域へ注目が高まっており日本企業の進出も安定的に増加している。
こうしたことを背景に安倍首相は、日本は中南米地域を重視し、経済関係の強化に重点的に取り組むので、中南米諸国もそうした日本を頼れるパートナーとしていただきたいとアピールした。
「発展を共に」のスローガンの下、日本政府はメキシコ、ペルー、チリとの間で締結したEPAに代表されるように、中南米との経済的枠組みを構築し、日本企業の進出を支援。また自由貿易を標榜する太平洋同盟との間では、日本はアジアで最初のオブザーバーとなり、さらなる経済協力関係強化の可能性を模索している。さらに日本は多くの資源をこの地域から輸入しており、資源エネルギーの安定的確保に向けての取り組みも継続している。
二つ目の柱である「主導力を共に」は、日本と中南米諸国が国際社会のパートナーとして、世界が抱える諸課題の解決に連携して取り組もうというもの。ブラジル、メキシコを始め経済成長続ける中南米は国際社会での発言力を高めている。また中米統合機構(SICA)やカリブ共同体(CARICOM)、南米南部共同市場(メルコスール)といった地域協力機構を形成し、協調的行動をとることで国際社会における存在感も増している。そのような中南米地域と日本がパートナーとして協力し、気候変動や人権などグローバルな課題解決をめざす政策である。
三つ目の「(啓発を共に)は、約210万人以上の日系人の存在や長年の経済協力の歴史などから世界有数の親日地域である中南米との連携を一層強化するとともに、日本の文化と魅力を発信しようというもの。具体的には、ロボットなどの日本の先端技術やポップカルチャー、伝統芸能に関心を示す中南米の人々に、より深く日本を知ってもらうよう在外公館を通して働きかけを行い、また日系人との連携をさらに強化するという政策。この三つの柱はいまも日本の中南米外交政策の基本に据えられている。
2018年12月には、三つの指導理念の成果を地域全体として総括し、次なる協力の指針として日・中南米「連結性強化」構想を安倍首相が発表した。
4.強まる中南米諸国との戦略的連携
一方、中国の中南米接近は加速、年毎に中南米地域での存在感を増している(図表7参照)。2018年にはドミニカ共和国とエルサルバドルが相次いで台湾と断交して中国と国交を樹立したほか、中南米諸国向けのインフラ投資や新型コロナウイルス対策で中国による財政支援が拡大している。

中国が中南米地域でも存在感を強める中、日本、アメリカ、ブラジルの3か国は、共通の価値観を踏まえ、経済や安全保障分野での連携を一層強化していく方針を確認した。そして外交当局による新たな協議の枠組みを発足させ、2020年11月にブラジルの首都ブラジリアで初めての会合を開いた。
日本からは外務省の林禎二中南米局長が出席し、民主主義や法の支配などの価値観を共有する3か国で、中南米地域にルールに基づく国際秩序が形成されるよう取り組んでいく方針を確認した。また会合では高速・大容量の通信規格、5Gの通信網の整備について中国の通信機器大手ファーウェイなどの排除を念頭に、3か国の協力を強化することで一致した。 さらに日本政府は国際協調を重視するアメリカのバイデン政権との連携を軸に、共通の価値観を有する各国との連携を強化していく方針を打ち出した。翌21年1月の茂木外相による中南米5カ国歴訪がその象徴的な動きといえる。
当初、政府・与党内には新型コロナウイルスが再拡大する局面での外国訪問に慎重論もあった。だが中国はアメリカとの対立が激化する中、大規模なインフラ投資や貿易を通じ中南米やアフリカへの関与を強めており、台湾と外交関係を結ぶ国が多い中南米では、分断工作も活発化させている。日本の存在感を示すには対面外交が不可欠との判断から、茂木外相は予定通り1月4日から中南米のメキシコ、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイ、ブラジルの各国を歴訪した。
台頭する中国を睨み、茂木外相は日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」への協力を各国で訴えた。東シナ海や南シナ海をめぐる中国の問題も各国要人と協議した。国別では、最初の訪問国のメキシコでは両国が加入する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の実施に向けた連携で一致した。TPPを巡っては、中国が参加意欲を示すなど「揺さぶり」(外務省幹部)をかけており、その動きをけん制する狙いだ。ウルグアイやアルゼンチン、パラグアイの各国とは法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化を確認。
さらにブラジルではボルソナロ大統領と会談。茂木外相は日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想を説明し、法の支配に基づく国際秩序の実現に向け連携する方針で一致した。両氏は前年11月に立ち上げた「日米ブラジル協議」を重視する方針でも一致。日本企業のブラジルへの投資を促進するため、ビジネス環境の整備が重要だとの認識を共有し、2国間関係を深化させ国際社会で協力を進めると確認した。
続いて茂木外相はアラウジョ外相とも会談、デジタル経済など幅広い分野での協力推進や国連安全保障理事会改革に向けた連携強化を申し合わせた。アマゾン地域の生物多様性維持に協力する覚書にも署名した。
茂木外相は同年7月にも、グアテマラ、パナマ、キューバ、ジャマイカの中米・カリブ海4カ国を訪問している(予定されていたキューバはコロナ災禍のため中止)。日本が中米・カリブ海の国々と対話するのは、「米国の裏庭」と呼ばれてきたこの地域でも中国の存在感が高まっているためだ。中米・カリブ海には世界に15ある台湾と外交関係を持つ「台湾承認国」のうち8カ国が集中する一方で、中国の影響力の高まりから、パナマやドミニカ共和国など台湾と断交する国も相次ぐ「中国・台湾外交の最前線」(外務省幹部)である。
パナマは中国発着船のパナマ運河利用増などを受け、2017年に台湾と断交し中国と国交を樹立した。中国の習近平国家主席は18年にパナマを訪問し、バレラ大統領(当時)と中国の巨大経済圏構想「一帯一路」で連携することに合意した。ドミニカ共和国、エルサルバドルも18年に台湾と断交し、中国を承認した。中国は経済協力に加え、新型コロナウイルスの自国製ワクチンを供与する「ワクチン外交」でも攻勢を強めおり、日本は技術・防災支援などを打ち出し、中国を牽制したい考えだ。
茂木外相はグアテマラでジャマテイ大統領と会談。日本の台風対策の知見を生かしてハリケーン対策などを支援すると表明。貧困、治安対策でも協力する意向を打ち出した。両氏は中国が力による現状変更を試みている「東シナ海・南シナ海」など東アジア情勢を巡っても意見交換した。グアテマラは台湾と外交関係を維持する15カ国中の一つで、中南米への影響力を強める中国への対応が茂木外相の念頭にある。
茂木外相はブロロ外相とも会談し、国際秩序の維持・拡大のため連携を強化する方針で一致した。ブロロ氏は日本が掲げる外交の基本方針「自由で開かれたインド太平洋」への支持を伝えた。さらに両外相はグアテマラのハリケーン被害からの復興を急ぐため、日本からの3億円の無償資金協力で合意した。会談後の共同記者発表で茂木外相は「国際社会のパワーバランスの変化が加速しているからこそ、一層の連携が必要だ」と強調。新型コロナウイルスワクチンの提供要請を受け、検討することも表明した。茂木氏は同国で「中米統合機構(SICA)」に加盟するコスタリカやパナマなど8カ国の外相らともオンラインで協議した。
同じ年に二度も外相が中南米を訪問するのは異例だが、台湾と国交を持つ15カ国のうち9カ国が中南米に集中していることに着目。中国がこの地域で、自国製ワクチンを優先供与する「ワクチン外交」や経済支援を通じて影響力を強めつつあることを踏まえ、「親台湾国の支援」(日本の外交関係者)を図ったのだ。
続く2022年は当初、新型コロナの影響により物理的な人の往来が制限を余儀なくされたが、その後徐々に対面での外交活動を再開、岸田首相は先進7カ国(G7)や主要20か国・地域(G20)、APEC首脳会合や国連総会などの多国間会合の機会を捉え、中南米各国要人と会談を行った。9月には日・キューバ首脳会談、10月には日・ウルグアイ首脳会談をそれぞれ実施した。
その間、ウクライナ戦争が勃発、また米中対立が激化するなど地政学的再編の動きが強まったことに伴い、中南米の重要性はさらに高まった。2023年1月、林外相はメキシコ、エクアドル、ブラジル、アルゼンチンの4か国を訪問。日本はこの年、国連安全保障理事会の非常任理事国を務めるとともに、先進7カ国(G7)の議長国でもあった。エクアドルを除く3か国は主要20か国・地域(G20)にも属しており、ロシアによるウクライナ侵略を巡る対応で各国を西側諸国の立場に引き寄せるとともに、対露包囲網を強化するための国際世論の形成に向け、連携を深める狙いがあった。
訪問先の4カ国は、前年3月2日の国連の対露非難決議で賛成に回ったが、北米や中南米諸国などが加盟する米州機構(OAS)が前年4月21日にロシアの常任オブザーバー資格を即時停止する決議案が採択された際は、アルゼンチン、ブラジル、メキシコなどが棄権しており、価値観外交を展開し、ロシア寄りとならぬよう働きかけを行う必要があったためだ。またエクアドルとブラジルは日本とともに非常任理事国を務めており、法の支配を担う安保理の機能強化を含めて連携協力する方針を確認した。
林外相はそれから僅か3か月後の4月にも再度中南米訪問の旅に出た。日本が戦略的にこの地域を重要視していることを示す動きと言える。4月の歴訪は2024年の「日・カリブ交流年」に向けた連携強化なども念頭に、トリニダード・トバゴ及びバルバドス、並びに南米のペルー、チリ及びパラグアイの5か国で、首相や外相など各国要人と会談を行い、法の支配に基づく国際秩序の重要性を共有した。
カリブ海のトリニダード・トバゴとバルバドスを日本の外相が訪問したのはこれが初で、 島嶼 国重視の姿勢を示すものであった。ペルーとチリでは、経済安全保障の観点から、鉱物資源の供給を巡る連携強化でも一致した。パラグアイは南米で唯一、台湾との外交関係を持っている国。林氏は中国が巨額の財政支援で中南米での影響力を強めていることを踏まえ、今後も日本がパラグアイの開発努力を後押ししていく考えを伝えた。親台湾路線を掲げて大統領選で勝利したペニャ元財務相とも会談した。
5.活発化する日本の中南米戦略外交
2024年に入ると日本の中南米外交はさらに活発化した。年明け早々の24年1月には岸田首相がブラジルのルラ大統領と電話で会談。24年はブラジルがG20の議長国であった。首相は法の支配に基づく国際秩序の維持・強化や、11月のG20首脳会議(サミット)成功に向けて連携を呼び掛け、ルラ氏は日本の協力に期待を表明した。
また両首脳はブラジルやアルゼンチンなどが加盟する南米南部共同市場(メルコスル)と日本との貿易協定の可能性についても協議。メルコスルは各国との自由貿易協定(FTA)締結交渉を推進中で、23年12月にはアジアの国では初めてとなるシンガポールとの間で締結したほか、韓国とも交渉を進めている。日本でも経済界がメルコスルとの経済連携協定(EPA)の早期実現を求めている。
翌2月、上川外相はジャマイカのジョンソンスミス外相と東京都内で会談し、同じ海洋国家として海での法の支配の維持に向けた協力を確認したほか、中国が影響力を拡大する中米地域の情勢や、紛争解決や平和構築に女性参画を進める「女性・平和・安全保障」の推進についても意見交換した。また日本は政府開発援助(ODA)の無償資金協力で12億円相当の海洋調査船を供与することになった。中国も他の中南米諸国と合わせてジャマイカを広域経済圏構想「一帯一路」の一角と位置づけており、前月には王毅外相がジャマイカを訪れ、ホルネス首相やジョンソンスミス氏と会談したばかり。
同じ2月に上川外相はブラジルとパナマを訪問。ブラジルはこの年の11月に開かれるG20首脳会議の議長国で、2025年には国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)を開催する。上川外相はブラジルのビエイラ外相と会談し、国連安全保障理事会の改革などで連携していくことで一致、気候変動対策では、ブラジルで開かれるG20首脳会議やCOP30の成功に向け協力することを確認した。
パナマではコルティソ大統領と会談し「自由で開かれた海洋」の維持、発展に向けた協力で一致したほか、パナマ運河の安定的な運航の確保策を話し合った。また訪問先のパナマで上川外相は中南米諸国との連携を戦略的に推進する指針「中南米外交イニシアティブ」を発表した。海洋やジェンダー、核軍縮・不拡散分野などでの協働に加え、中南米を経済安全保障のパートナーと位置づけ、重要鉱物や食料の一大産地である同地域をサプライチェーン(供給網)に組み入れ関係を深めることに狙いがある。
6.岸田首相のブラジル訪問
さらに24年5月には岸田首相がブラジルとパラグアイを訪問。日本の首相のブラジル訪問は2016年の安倍晋三氏以来8年ぶり。24年は中南米の国が主要国際会議の議長を務める「中南米イヤー」に当たっており、中国が覇権主義的な動きを強める中、この機会を活かしG20の議長国で新興・途上国「グローバル・サウス」の雄でもあるブラジルと「法の支配に基づく国際秩序の維持・強化」を軸に関係を強化することが岸田氏訪伯の狙いであった。ブラジルとの連携強化は、日本のグローバルサウス外交にとっても重要な要となるものである。
岸田首相とルラ・ダシルバ大統領との会談では、脱炭素化に向けて包括的な協力を進めることで合意し、次官級のハイレベル対話の新設で一致。またブラジルなどが加盟する関税同盟「南米南部共同市場(メルコスル)」と日本の経済関係強化や、来年を「日ブラジル友好交流年」とし、ルラ氏を日本に招待することを確認した。
さらにロシアのウクライナ侵略や中国の強権主義的な行動を念頭に、自由や民主主義、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に向けた連携も確認した。ただ、直接的な名指しはしなかった。中国はブラジルにとって最大の貿易相手国で、またブラジルは中国やロシアも加わる新興国の集まりBRICSのメンバーでもあるからだ。そのほか国連安全保障理事会改革の緊急性を強調し、常任理事国入りを目指す「G4」(日本、ブラジル、ドイツ、インド)の枠組みで協力することも確認した。両首脳はこれらの成果を盛り込んだ「戦略的グローバルパートナーシップの強化に関する共同声明」を公表した。
共同声明では、脱炭素分野で両国が包括的に協力する「グリーン・パートナーシップ・イニシアチブ(GPI)」を打ち出した。GPIは、アマゾンの違法森林伐採対策や劣化農地改良事業など、環境保護と持続可能な農業の実現に向けた協力を深めることを目指している。またバイオ燃料や合成燃料などの脱炭素燃料とハイブリッドエンジンなどの日本の高性能なモビリティ機器を組み合わせて、カーボンニュートラルを実現するための新たな国際枠組みとしてISFM(アイスファム)を立ち上げることも確認した。食料や資源が豊かな中南米で日本企業の活動を後押しする方針も表明。岸田首相には40社以上の日本企業が「経済ミッション」として同行。会談に合わせ、現地企業と36件の覚書が結ばれた。
首脳会談の翌日、岸田首相はサンパウロ大学で「中南米と共に拓(ひら)く「人間の尊厳」への道のり」と題した対中南米政策に関する講演を行い、グローバルサウス(新興・途上国)として存在感を高めている中南米諸国に対し、「価値と原則を共有し、グローバル課題の解決に積極的に貢献できる」と期待感を表明した。その上で、ともに取り組むべき課題として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の確保▽環境や気候変動など人類共通の課題克服▽持続可能な成長実現▽人的交流の強化などを提示した。
米国への大量流入が問題化している移民問題を巡っては、収容・教育施設への支援や女性の保護に貢献する考えを説明した。熱帯雨林アマゾンの保護や、地球温暖化による海面上昇の被害を受けるカリブ海の島嶼国への支援も約束した。
また中国が豊富な資金力で進出していることを念頭に、岸田首相は「力や威圧ではない、信頼に基づく経済関係こそが公正な豊かさにつながる」と訴え、中国の名指しは避けつつも「経済的圧力を背景に、特定の行動を強いる経済的威圧などは到底認められない」と牽制、「相手国の実情を踏まえ、『質の高いインフラづくり』など持続可能な経済協力を推進していく」の我が国の立場であり、さらに「近年、世界各地で『債務のわな』が問題視されている」ことにも触れ、日本は「環境、人権に重きを置き、真に持続可能な成長を地域社会との協働の中で実現する」と強調した。
日本の対中南米外交は、2014年以来、「3つのJuntos!!(共に)」の理念の下で展開されてきたが、この岸田首相の講演は10年ぶりにその指針をアップデートするものとなった。
次に訪れたパラグアイでは、首都アスンシオンでペニャ大統領と会談。パラグアイは南米で唯一台湾と外交関係がある国で、中国を直接名指しはしなかったものの、東アジア情勢について「世界のどこにおいても力による一方的な現状変更は許されない」との認識で一致した。軍事的威圧を強める中国を牽制した形だ。
会談後の共同記者発表で、ペニャ大統領は「自由、法治国家などの価値観を共有する2カ国だ。今後も広範な協力関係を推進したい」と強調。首相も「国際社会が複合的な危機に直面する中、価値と原則を共有するパートナーの重要性が高まっている」と述べ、関係深化を呼び掛けた。
この年、対中南米首脳外交はさらに続いた。岸田政権から石破政権に代わった後の24年11月、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のため、石破首相はペルーを訪問した。中国が影響力を強めるグローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)との関係強化を図ることに狙いがあるのは明らか。
石破首相はボルアルテ大統領と会談、発表された共同声明では、日本とペルーが去年、外交関係樹立から150年を迎えたことを踏まえ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持、強化するパートナーだと再認識、その上で、ウクライナへの侵攻を続けるロシアや覇権主義的な動きを強める中国を念頭に「世界のいかなる場所でも力や威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する」とともに、ペルーが再生可能エネルギーの普及に必要な銅や亜鉛など鉱物資源の有数の生産国であることを踏まえ、重要鉱物の供給網(サプライチェーン)強化に向けて協力することも盛り込んだ。
7.ブラジルとのさらなる関係強化
次いで石破首相は20カ国・地域(G20)首脳会議に参加するためブラジルを訪れ、ルラ大統領と会談。両首脳は、外交関係樹立130周年の節目にあたる2025年にルラ氏が来日することを確認したほか、日本と、ブラジルやアルゼンチンなど南米諸国が加盟する南米南部共同市場(メルコスル)の協力枠組み「日・メルコスル戦略的パートナーシップ枠組み」(仮称)について協議し、実現に向けて協力して取り組むことで合意した。さらに、国連の常任・非常任理事国の議席を拡大するため連携を続けることでも一致した。
続いて12月には、カリブ海諸国の地域共同体「カリブ共同体」(カリコム)を構成する14カ国との外相会合を日本で開催。中国が経済支援などを通じて中南米・カリブ海地域での影響力を高めていることを念頭に、力による一方的な現状変更は「いかなる場所でも認められない」と指摘。国際秩序への挑戦を「共通の課題」と位置付け、経済的威圧への反対を明記した共同声明を発表した。
そして翌25年3月、ブラジル大統領が国賓として来日、石破首相とルラ大統領は東京・元赤坂の迎賓館で会談し、「日ブラジル戦略的グローバルパートナーシップアクションプラン2025-30」を採択した(図表8参照)。アクションプランは、①政治・安全保障②経済・投資③気候変動の3本柱で構成。政治・安全保障では、いずれかの首脳が2年に1回訪問することや、外相会談を「外相戦略対話」に格上げすることを明記。外務・防衛当局の事務レベル対話の枠組みも作ることになった。

経済・投資では、食糧安全保障のサプライチェーン(供給網)強化で連携、日本産食品の輸出促進やブラジルが加盟する南米の関税同盟、南部南米共同市場(メルコスル)と日本の関係強化などが盛り込まれた。気候変動では、自動車の脱炭素化に向け、ハイブリッド車(HV)の技術やバイオ燃料の普及で協力することを明記した。前年に立ち上げた「日・ブラジル・グリーン・パートナーシップ・イニシアティブ(GPI)」の下、劣化牧野回復やアマゾン違法森林伐採対策を柱として協力を進めていくことで合意。そのほか両国の若者が相互に長期滞在しながら就労できる「ワーキングホリデー」制度の交渉開始でも一致。脱炭素やデジタル分野などの協力へ向けた覚書およそ80本が締結された。日本とブラジルが修好通商航海条約を結んでから11月で130年となることから、6月には佳子様がブラジルを親善訪問された。
8.万博外交の展開 :中南米諸国との距離接近
2025年、大阪市此花区夢洲で開催された大阪関西万博には多くの中南米諸国が参加し、ナショナルディなど各種記念行事に合わせて各国首脳も来日した。この機会を捉えて石破首相は中南米諸国との首脳会談を相次いで開催、精力的に中南米外交を前へと推し進めた。
まず25年5月、石破首相はチリ、パラグアイ、翌6月にはグアテマラの首脳とも会談。パラグアイとグアテマラは台湾と国交を持つ国であり、なかでもグアテマラは台湾と外交関係のある12カ国の中で人口、経済規模とも最大の国だ。パラグアイのべニャ大統領及びグアテマラのアレバロ大統領との会談では、日本との外交関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げすることで一致した。
台湾を承認する世界12カ国のうち中南米には7カ国が集中するが、首脳や閣僚が日本を訪れる機会は近隣国に比べると格段に少ないのが現状だ(図表9参照)。そこで大阪・関西万博に伴う各国トップの来日を好機ととらえ、積極的に首脳会談などを開催することを通じて台湾と外交関係を持つ中南米諸国との関係強化に注力したものである。当然、台湾に対し軍事的な統一圧力を強める中国を牽制する狙いも込められている。

8月に入ると、ともに台湾承認国であるベリーズやセントクリストファー・ネビスとも首脳や閣僚級の会合が開催された。ベリーズのブリセニョ首相と石破首相との会談では、経済や人的交流など幅広い分野で関係を強化していくことで合意、ベリーズが台湾と外交関係があることも踏まえ、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化に向け連携を図ることでも一致した。
同じ8月、石破首相は大阪・関西万博に合わせ日本を訪れているペルーのボルアルテ大統領と首脳会談を行い、安全保障分野での協力や、日本企業の進出など投資の拡大、それに、観光面での交流など幅広い分野で二国間関係をさらに強化していくことで一致をみている。またこの月、豊富な原油産出量を誇り、鉱物資源も保有するエクアドルのノボア大統領とも会談、エネルギーの安定供給に向けた連携を要請した。8月には初の日ブラジル外務防衛対話が、10月には11回目となる日・ブラジル政策協議がそれぞれ開催された。
9月、石破首相はコロンビアのペトロ大統領と会談し、コロンビアの国内和平の定着に向けて協力していく考えを伝えた。パナマのムリノ大統領とも会談、パナマ運河の中立性が重要であると確認し、両首脳はパナマ運河の機能向上に向けた連携や、政治・経済を巡る対話の再活性化などで一致した。さらに10月には台湾承認国であるハイチのサン・シル暫定大統領評議会議長と会談、石破首相は治安の安定に向けて貢献していく考えを伝えるとともに、国際社会のさまざまな課題で連携していくことを確認した。
さらに高市政権発足後の2025年12月、政府は南米5カ国でつくる関税同盟の南部南米共同市場(メルコスル)と「戦略的パートナーシップ枠組み」を立ち上げた。メルコスルは域内の関税撤廃を目的とし、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビアが加盟している(注:ボリビアは2023年12月に加盟が決定され、現在ボリビア国内の批准手続中)。昨年3月のルラ大統領訪日の際、日本とメルコスルの戦略的パートナーシップ枠組みを早期に立ち上げることを日ブラジル両政府は確認していた。
日本と5カ国が発表した共同声明では、「互いにとって最も重要な経済パートナーの一つだ」と宣言、「未来志向で信頼に基づく関係をさらに強化する」ことが確認された。そして新たな枠組みで貿易や投資、サプライチェーン(供給網)の強化、デジタル経済、エネルギーなどの分野を扱い「協力をより高いレベルに引き上げる」ことが強調された。
9.戦略的中南米外交の確立に向けて
一昔前までの日本の対中南米外交は、日本製品の輸出先や日系人を介しての人的交流、開発支援、経済協力などが中心であった。しかし、今後はこれまでのいわば「太平洋周縁地域」に対する交流と支援の外交から、より戦略性の高い外交へと変化、発展させていく必要がある。それは
・政治的には、太平洋と大西洋を繋ぐ中南米との民主的連携軸の形成
・経済的には、レアア−スなどの鉱物資源や石油などのエネルギ—資源、さらに食料供給源としての中南米との経済安保軸の形成
をめざすものとなすべきだろう。
政治的な連携軸は、民主主義や人権、自由と法の支配を共有する「同志国」の構築が目標となる。「同志国」とは同盟関係にはないものの、それに準じた価値観や国際ビジョン、利害を共有する国家間関係、簡単に言えば準同盟関係を意味する。ともに台湾との連携を重視する関係もそれに含まれる。
日本外交の基軸は日米同盟、それに日米豪印を軸とする「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の枠組みからなるが、将来的には太平洋地域において日米豪に中南米も加え、より多角的な戦略枠組みの形成を進めるべきである。FOIPを西南太平洋にも拡大させるということだ。そうすることによってより広域な「自由で開かれた太平洋」が形成されよう。
経済的な連携軸は、中国による経済的威圧政策に対抗する経済安全保障戦略を構築する中で、中南米を、我が国が進めるべきサプライチェーン多極化の要地域と位置づけることを意味する。資源保護や環境問題も含めたグリーン経済圏構築も含めてよかろう。
さらに、政治、経済両方の軸に密接にかかわるが、我が国と中南米諸国との新たな戦略関係の構築にあたっては、米国と中南米地域との間に生じる諸問題の解決にも寄与するという戦略的視点も必要だろう。
威圧的な米国の政策と歩調を合わせるのではなく、米国を支援しつつも、米国流の手法とは一線を画し、日本は自らが得意とする開発支援や社会インフラの整備を今後も継続させ、中南米の経済発展と社会の安定、及び民主的政治システムの確立に寄与する政策努力が求められる。中南米は大西洋西岸地域をも形成していることから、米国を挟み、日本とEUが資本や技術面などで連協協力を図る形でそうした取り組みを進めていくことも有益であろう。そして、日欧と中南米がともにウィンウィンの関係に立つ戦略共生的なパートナーシップの形成を目標とすべきである。
(2026年1月30日、平和政策研究所上席研究員 西川佳秀)






