地域社会づくりに宗教的伝統文化と家庭基盤充実を重視する視点を取り入れる

かつて日本の地域社会では神社・寺院などの宗教施設がコミュニティの中心に存在し、人びとの社会関係をつくり出していた。文化庁『宗教統計調査』(令和2年度)によれば、現在も日本には神社が約8万1,000社、寺院が約7万7,000寺あり、地域社会で寺社がいかに身近な存在であるかがわかる。

宗教的な儀礼や行為は、それに携わる人々の関係を強化し、社会を統合する機能をもつ。また宗教は、コミュニティの基盤となる「信頼」「規範」「ネットワーク」をつくり出す社会関係資本である。戦後の日本のコミュニティ政策では、こうした宗教的伝統のもつ社会的機能を重視する視点は欠如していた。政府や地方自治体は、今後の地域社会づくり政策にこうした視点をとり入れるべきであろう。

また、地域社会の中核である家庭を保護・支援する視点からの施策もあわせて重要である。家庭は地域社会の人間関係の原型であり、第一の社会関係資本である。地域社会の歴史や伝統文化を継承し、コミュニティを維持、発展させる基本的な基盤は家庭にある。地域社会は、家庭や宗教的伝統文化の役割を抜きには成り立たない。それらを重視する施策こそが地域コミュニティの活性化、さらには地域社会全体の発展と地方創生の鍵となる。