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なぜ最近の若者は結婚しないのか?(2)女性活躍と未婚化の関係
ある人は、「女性が働くから少子化になった」「女性活躍を止め、専業主婦を増やせば少子化は解決する」と言います。
他方で、「女性の社会進出が進んでいる国ほど、合計特殊出生率も高い傾向にある」と示す報告書もあります。
上の段落の文章は昨年11月発行の日本家族社会学会のニューズレターの中で、前会長の山田昌弘が紹介していたもので、ある政党の少子化対策アドバイザーから「真顔で提案された」内容だそうです。
下段の文章は、内閣府が出した報告書の中で先進国の出生率と女子労働力率を比べて述べられているものです(内閣府男女共同参画局 2005: 4)。内閣府が出しているのだから、こちらが正しいと思われるかもしれません[1]。これらの発言や文章から日本では「女性が働くこと」とか「女性の社会進出」が、少子化や未婚化と関連するものとして問題になっているようだ、ということはわかります。
女性が働くから少子化になったのでしょうか、それとも逆に女性が社会進出すれば少子化が解決するのでしょうか。「最近の若者はなぜ結婚しないのか?」の2回目の連載となる本稿では、女性の社会進出と未婚化の関係について、家族社会学や人口学でこれまで言われてきたことを、簡単に整理してみたいと思います。(第1回の記事はこちら)
[1] このデータの落とし穴については赤川(2004)をご覧ください。
女性の経済的自立
高度経済成長期中期までの日本では、大学に進学する人はそこまで多くありませんでした。しかし、1970年代以降高学歴化が進行し、特に女性の高学歴化のスピードは急速でした。女性の大学進学率は1970年には6.5%でしたが、1980年には12.3%、2000年には31.5%となり、2010年には45.2%となっています(ちなみに男性は、1970年に27.3%、1980年には39.3%、2010年には56.4%)。(国立社会保障・人口問題研究所 「人口統計資料集2025年版」)。
それにともなって、女性が男性と同じように働くことが当たり前になってきました。かつては男性と同じようにバリバリ働く女性のことを「キャリアウーマン」と呼んで特別視していた時代もありました。しかし今では、女性も働いて男性と同じように給与を獲得するというライフコースが一般化しており、女性のキャリア選択も昔よりは多様化してきています。(もちろん、男女の賃金格差をはじめ、まだまだ男女が全く同じように働ける社会とは言えないことは言うまでもありませんが)。
こうした状況を、女性の経済的自立が進んできた、と言うことができます。女性の高学歴化、就業意欲の増大、雇用機会の拡大により、女性が結婚をしなくても一人で十分に経済的に自立できるような社会になってきたということです。
女性の経済的自立と未婚化の関係?
こうした女性の自立化によって未婚化がもたらされているという仮説があります。これを「女性の自立仮説」と言います。女性の経済的自立が女性にとっての結婚の利益と魅力を低下させたために、女性が結婚を選択しなくなり、未婚化が進んだという仮説です。一時期は未婚化を説明する有力な説として広く受け入れられていました(「機会費用説」「両立困難説」と言われたりもします)。
性別役割分業が根強い社会では、仕事と家事・育児の両立が困難であるため、結婚を選択すると仕事をやめるという選択が一般的です。育児を終えて再就職をするとしても、新卒一括採用・終身雇用・年功賃金などを特徴としていた(いる)日本の労働市場では、女性は、パートタイマーとして再就職するケースが多いです。経済的側面から見れば、女性は、結婚・出産・育児を選択し、仕事をリタイアすることで、もしも仕事を継続していた場合に得られたはずの賃金を失うことになります。得られたはずの賃金や利益(機会費用)を考えて、あえて結婚をしないという選択をするようになる。そのような選択をする女性が増えたことで、未婚化が起きていると説明するのが「女性の自立仮説」です。この仮説にもとづけば、女性の高学歴化と社会進出が進むと未婚化が進むということになります。
この仮説がベッカーという経済学者によって唱えられて以降、日本においてもこの仮説に基づいた実証研究が多く行われてきました。津谷典子は、2004年に実施された『結婚と家族に関する国際比較調査』(JGSS)のミクロ・データの分析を通して、大卒以上の高学歴の女性の初婚率は、高卒の女性に比べて低いことを明らかにし、高学歴化が進めば、女性の晩婚化・非婚かがさらに進行すると予想しています(津谷 2006)。さらに津谷は、2007年の『結婚と家族に関する国際比較調査』の追跡調査の結果を合わせたパネルデータの分析からも女性の学歴と初婚タイミングがマイナスの関係にあり、高学歴化が女性の未婚化をもたらす一因となっていることを示しています(津谷 2009, 2011)。
「女性の自立仮説」は、男性が外で働き女性が家で家事育児をするべきという規範、つまり性別役割分業規範が強い社会において成り立つものとされています。たしかに、性別役割分業規範が弱いスェーデン、強い日本、両国の中間のアメリカを比較した研究では、性別役割分業規範の強い日本においてのみ、女性の高学歴化と高収入化が初婚の形成を阻害していることが明らかにされました。アメリカとスェーデンでは、むしろ、女性の高学歴化と高収入化が初婚を促進するというのです(Ono 2003)。このような結果を踏まえて、仕事と結婚・出産の二者択一を社会がせまることをやめ、仕事と家庭の両立への障害を取り除くことを少子化対策の柱とすべきであるということも言われています(津谷 2011)。
「女性の自立仮説」に基づけば、性別役割分業規範が強い社会においては、「未婚率の上昇は、結婚というシステムで経済的に搾取されることを逃れようとする、女性の当然の行動」(大橋 2000: 33)として考えることができます。1990年代には、未婚化を説明する説として、「女性の自立仮説」が日本社会で広く支持されてきました(八代 1993; 大橋 1993など)。

「女性の自立仮説」以外のルート
しかし、実を言うと、現在では「女性の自立仮説」はそこまで広く支持されているとは言えません。なぜでしょうか。
その理由として、第1に独身者の結婚意欲の大幅な低下が見られないことがあります。国立社会保障・人口問題研究所が実施する「出生動向基本調査」の独身者調査を見ると、少なくとも2015年までは結婚意欲の大幅な低下は見られません。「女性の自立仮説」は、女性が意図を持って結婚をしないようにするという非婚が未婚につながるという仮説であり、非婚姿勢が見られない以上は、女性の社会進出が未婚化につながる説明として適当ではないのです。
第2に、女性の社会進出が未婚化につながる別のルートが注目されてきたことがあります。それは、結婚に関する希望と現実のギャップが広がり、女性がその希望に合った相手(男性)に出会えなくなってきたというルートです。
日本においては、高度経済成長期に女性の専業主婦化という傾向が拡大し、性別役割分業が定着しました。同時に、結婚の仕方としては女性の上昇婚志向が定着していました。上昇婚志向とは、自分よりも社会的地位(学歴・収入など)の高い相手と結婚しようとする志向のことです。男性稼ぎ主モデルの性別役割分業家族が大衆化している社会では、女性が自分よりも稼得能力の高い相手を選ぼうとするのは当たり前と言えるでしょう。
女性の上昇婚志向は、①若年男性雇用の劣化と、②女性の高学歴化と社会進出によって、未婚化を進展させる要因になったと言われています。
山田(2007)は、1973年のオイルショック後の男性の実質年間収入の上昇率の低下を示し、若年男性の収入がその父親世代に比べて低くなり、若年男性の収入の伸びが期待できなくなったことを指摘します。若年男性雇用の劣化により、男性未婚者の年収(現実)と、女性未婚者が男性に求める収入(希望)とのギャップが拡大し、未婚化が引き起こされているというのです。
実際に、『第一回全国家族調査』(NFRJ98)のデータを分析した加藤(2004)の研究は、経済成長率の変動が職業階層を通じて、男性の結婚タイミングに実質的な効果をおよぼすことを示しています。加藤(2004)は、経済成長の鈍化にともなって相対的に低階層の男性で未婚化が進むと、それにひきずられて女性の晩婚化・未婚化が起きていると結論づけます。これらの研究は、男性側の要因(①若年男性雇用の劣化)によって未婚化がもたらされていると説明するところに特徴があります。
他方で、女性側の要因(②女性の高学歴化と社会進出)によって、未婚化がもたらされていることも明らかにされています。ジェームズ・レイモと岩澤美帆は、高学歴女性の間で結婚相手(男性)の供給不足が生じていることを明らかにしました(Raymo & Iwasawa 2005)。女性の高学歴化が未婚化につながることを明らかにしている点では「女性の自立仮説」と同じです。しかし、高学歴化が女性の結婚需要の低下をもたらすという自立仮説とは異なり、女性の高学歴化が、それに見合った男性が見つかりづらくなっているという供給の面に着目しています。
レイモと岩澤は、「出生動向基本調査」のデータから、1980年から95年の初婚率低下の要因を分解・分析しました。その結果、日本では、女性の上昇婚志向が根強いなかで女性の高学歴化が進んだことで、高学歴女性が求める結婚相手の供給が不足しており、それによって高学歴女性の未婚化を、ある程度説明できることを明らかにしました。これを、「結婚市場のミスマッチ仮説」と言います。高学歴女性たちの未婚率が高いとしても、それは本人たちが非婚を選択したからではなく、結婚相手の供給不足によって引き起こされた側面もあるということです。
男性側の要因(①若年男性雇用の劣化)がより大きいのか、それとも女性側の要因(②女性の高学歴化と社会進出)がより大きいのかは、既存のデータから分析することは難しいと言われています(筒井 2013)。ただ、このような議論は、男性側の要因によってであれ、女性側の要因によってであれ、もしくは、両者の複合によってであれ、結婚市場においてミスマッチが生じているということで、大雑把に「ミスマッチ仮説」と言われることもあり、日本の未婚化の説明としてある程度定着した見方です。

女性の高学歴化が未婚化に与える効果の限定性
ここまで見てきた「女性の自立仮説」と、「結婚市場のミスマッチ仮説」の特に女性の要因に注目した研究では、女性の高学歴化と社会進出による稼得能力の向上が結婚のしにくさにつながることを示しています。稼得能力の向上が結婚のしにくさにつながるのは、性別役割分業規範が強いためであり、そうでない国は女性の稼得能力の向上が結婚のしにくさにはつながらず、むしろ稼得能力が高い女性の方が結婚しやすいという結果も明らかにされています(Ono 2003)。
ただし、日本でも特に若者のあいだでは、性別役割分業規範に賛成する人の割合がかつてに比べれば少しずつ減ってきています(内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」)。こうした変化を受けて、女性の稼得能力の向上と結婚との関連に、新たなトレンドを見出す研究も出てきています。
例えば、「21世紀成年者縦断調査」のパネルデータの若い世代を対象に分析を行った福田節也は、高学歴、専門職、高収入といった女性の稼得能力の高さを示す変数が、結婚のしやすさ、特に26歳以降の結婚に対して正の効果をもつことを示しています。また、『第一回全国家族調査』(NFRJ98)のデータを分析した加藤彰彦の研究においても、女性において結婚を遅らせる学歴の効果は20歳代前半という年齢階層に限定されており、専門職・技術職の女性に関しては20歳代後半ではむしろ結婚の確率を高める方向に働いているといいます(加藤 2004)。
では、いつから女性の稼得能力が結婚のしにくさから結婚のしやすさにつながるように変化したのでしょうか。福田(2013)は、「消費生活に関するパネル調査」のデータを用いた分析から、1960年代生まれのコーホート(世代)までは女性の稼得能力が結婚に対して負の効果をもつものの、1970年代以降生まれのコーホートでは、これが正の効果へと転じることを明らかにしました。若い世代ほど、女性の稼得能力が結婚選択に与えるプラスの影響が大きくなっているということは、別のパネル・データを用いた研究からも明らかにされています(何芳 2018)。
このように、女性の稼得能力の向上が結婚のしにくさにつながっていたのは、過去の世代までで、若い世代においては稼得能力の向上が結婚を遅らせることはあっても、20歳代後半ではむしろ結婚の確率を高める方向に働いているというのです。
おわりに
ここまで、主に女性の社会進出と未婚化の関係について言われていることを見てきました。この問題に関しては、様々なデータについて様々な分析が行われており、研究者ごとにいろいろな見解が示されています。本稿では、わかりやすさを重視し、ある意味恣意的に既存の研究を並べて整理しています。ここで言及している研究成果は、ネット上で閲覧できるものも多いので、気になった方は調べていただけると幸いです。
冒頭に「女性活躍を止め、専業主婦を増やせば少子化は解決する」と言われているという話を紹介しました。本稿では、女性の社会進出について、未婚化という観点からのみ見てきました。しかし、女性の社会進出・女性活躍は、それ自体の定義を含め、未婚化・少子化とは別に論じられるべき重要な論点でもあるということは、最後に述べておきたいと思います。
ここまで、女性の社会進出、稼得能力の上昇などと女性を一括りにして論じました。しかし、もちろん女性の中にもさまざまな人がいます。「階層」という観点は、女性のなかの多様性を示す一つの見方であって、次回の第3回は、この階層と未婚化の関係性についても見ていきたいと思います。
【シリーズ】なぜ最近の若者は結婚しないのか?
(1)家族社会学が明らかにしてきた未婚化の原因
(2)女性活躍と未婚化の関係
参考文献
- 赤川学, 2004,『子どもが減って何が悪いか!』筑摩書房.
- 大橋照枝, 1993,『未婚化の社会学』NHK出版.
- 大橋照枝, 2000, 「未婚化・晩婚化・シングル化の背景」善積京子編『結婚とパートナー関係: 問い直される夫婦』ミネルヴァ書房, 27-55.
- 加藤彰彦, 2004,「未婚化と晩婚化と社会経済的状況」渡辺秀樹・稲葉昭英・嶋﨑尚子編『現代家族の構造と変容:全国家族調査(NFRJ98)による計量分析』東京大学出版会,pp.41-58.
- 加藤彰彦, 2011,「未婚化を推し進めてきた2つの力:経済成長の低下と個人主義のイデオロギー」『人口問題研究』67(2): 3-39.
- 何芳, 2018,「女性の稼得能力は結婚を妨げるのか?」『生活経済学研究』47: 129-146.
- 国立社会保障・人口問題研究所, 2025,『人口統計資料集2025年版』
- 筒井淳也, 2015,『仕事と家族:日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』中央公論新社.
- 津谷典子, 2006,「わが国における家族形成のパターンと要因」『人口問題研究』62(1-2): 1-19.
- 津谷典子, 2009,「学歴と雇用安定性のパートナーシップ形成への影響」『人口問題研究』65(2): 45-63.
- 津谷典子, 2011, 「未婚化の要因——ジェンダーからみた学歴と雇用」阿藤誠・西岡八郎・津谷典子・福田亘孝編『少子化時代の家族変容——パートナーシップと出生行動』東京大学出版会:19-42.
- 福田節也, 2012,「消費生活に関するパネル調査を用いた分析」安藏伸治・小島宏編『ミクロデータの計量人口学』原書房, 93-125.
- 内閣府男女共同参画局, 2005,『少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較報告書』.
- 日本家族社会学会, 2025,「日本家族社会学会ニューズレター」No.75.
- 八代尚宏, 1993,『結婚の経済学』二見書房.
- 山田昌弘, 2007,『少子社会日本:もうひとつの格差のゆくえ』岩波書店.
- Fukuda Setsuya, 2009, “Shifting Economic Foundation of Marriage in Japan: The Erosion of Traditonal Marriage,” MPIDR Working Paper, 33: 1-27.
- Ono Hiromi, 2003, “Women’s Economic Standing, Marriage Timing, and Cross-National Contexts of Gender,” Journal of Marriage and Family, 65: 275–286.
- Raymo, James M. and Miho Iwasawa. 2005, “Marriage Market Mismatches in Japan: An Alternative View of the Relationship between Women’s Education and Marriage,” American Sociological Review,70: 801-822.
