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なぜ最近の若者は結婚しないのか?(1)家族社会学が明らかにしてきた未婚化の原因
「最近の若者はなぜ結婚しないのか?」という問いに対して、どのような答えが考えられるでしょうか?
「個人主義化」「恋愛・結婚観の変化」など内面の変化から考えられるかもしれませんし、「草食化」「パラサイト・シングル」などの流行語を思い出す方もいるでしょう。もしくは、「失われた何十年」「就職氷河期世代」などで表される経済や雇用の変化が挙げられるかもしれません。身近な問題である分、自分の肌感覚からさまざまな説明が可能でしょう。 では、「最近の若者はなぜ結婚しないのか?」という問いに対して、学術的にはどのような説明が行われてきたのでしょうか。これから3回にわたって、一緒に見ていきたいと思います。今回はその第1回目です。
未婚化・晩婚化とは
「若者はなぜ結婚しないのか?」という問いをもう少し学術的な言葉で言い換えれば、「なぜ晩婚化・未婚化が進んでいるのか?」となります。
晩婚化とは、結婚する年齢が遅くなること。結婚年齢が高まり、人々の未婚期間の長期化が生じている状態を指します。また、各年齢層において未婚の状態にとどまる人の割合が上昇し、その結果として一生結婚しない人の割合(生涯未婚率)が高くなることを未婚化といいます(『現代社会学事典』『家族社会学事典』)。
家族社会学者の山田昌弘は、平均初婚年齢や出生率などの年次変化を、わかりやすく5つの時期に区分しています(山田 2007: 64)。
⓪ 1945~50年:戦後の混乱からベビーブームによる出産ラッシュが生じた
① 1950~55年:急速な少産化が生じた
② 1955~75年:結婚・出産が安定していた
③ 1975~95年:緩やかな未婚化が生じた
④ 1995~現在:未婚化が急激に進むとともに、夫婦の子ども数の低下が生じた
日本では、戦後直後のベビーブームを経て(⓪)、多産多死から少産少死へ以降し(①)、その後、結婚と出産の安定期に入ります(②)。この安定期には、生涯未婚率(50歳時点での未婚率)は男女とも2%程度でした。平均初婚年齢も男性27歳、女性24歳前後で安定し、いったん結婚すれば子どもを2人産むというパターンが定着していました。1955年~75年というのは、高度経済成長と重なります。主に「団塊の世代」がこうしたライフコースを歩んだということになります。
ところが、1975年から平均初婚年齢と未婚率の上昇が始まります(③)。下の図1は、1980年以降の齢階級別未婚割合の推移を示したものです。各年齢階級で未婚率は上昇しており、2020年の生涯未婚率(50歳時点での未婚率)は、男性26.6%、女性16.5%まで上昇しました。また、2024年の平均初婚年齢は男性が31.1歳、女性が29.8歳となっており、晩婚化も進んでいます(厚生労働省 2025)。
図1. 年齢階級別未婚割合の推移

(出所)令和5年版『厚生労働白書』p.8
未婚化がなぜ問題になるかといえば、日本では未婚化が少子化の主因とされているからです(廣嶋 2000; 岩澤 2002, 2008, 2015; 筒井 2023)。少子化(出生率の低下)を左右する要素としては、有配偶率(結婚している人がどれくらいいるかの割合)と有配偶出生率(結婚した夫婦が何人子どもを産むか)がありますが、これまで有配偶出生率は大きな低下を見せていませんでした。最近では有配偶出生率の低下も見受けられるものの、有配偶率の低下(未婚化)が少子化に大きな影響を与えていることは間違いありません。
もちろん結婚するかしないかという問題は個人の選択の問題であり、他人が口出しすべきものではありません。しかし、社会全体で見た場合には未婚化が少子化の大きな原因となっており、少子化(とそれに伴う高齢化)は日本社会として解決策を見出すべき課題です。それゆえ未婚化の要因に関しては多くの研究が行われてきました。
西欧における価値観の転換と少子化
少子化は、ほぼ全ての先進諸国が経験しています。西欧諸国では1960年代後半に出生率がほぼいっせいに低下し始め、1980年代を過ぎると出生率は人口置換水準(人口が維持できる出生率の水準)を下回り、停滞を続けています。
しかし、西欧諸国では、未婚化が少子化の原因とは見なされていません。なぜなら、西欧諸国では出産と結婚が切り離されているからです。その点で日本と西欧諸国とは、事情が大きく異なっていると言えるでしょう。
西欧諸国では、価値観の転換を原動力として出生率の低下が起きたとされています。性的行動、異性との同居、結婚・離婚、出産に関する行動が伝統的な規範や道徳に拘束されなくなり、個人の自己実現が最も重要な価値観として追求されるようになったというのです。人口学者のロン・レスタギは、こうした価値観の変化を、世俗化(secularization)・個人主義化(individuation)と呼んでいます(Lesthaeghe & Surkyn 1988)。
その結果、離婚率の上昇と婚前同棲の増加、同棲した男女の間の出産の増加(婚外子の増加)などが起こっています。ここで同棲というのは、結婚の前段階的な性格を持つものではなく、結婚に代わる新しい選択肢としての長期的な同棲のことを指しています。西欧諸国では婚外子の割合が30%を超えており、出産・子育てと結婚は、もはやセットではないのです(J.M.Raymo 2022)。
このような価値観の変化を原動力とした出生率低下を説明する理論を、「第2の人口転換論」と言います。価値観の転換によって、一時的ではなく構造的・不可逆的な出生率低下が起きていると主張する「第2の人口転換論」に対しては、批判も寄せられているものの、ヨーロッパの少子化の説明として定着しているようです(河野 2007)。

日本でも価値観の転換が起こったか?
それでは、日本の少子化も西欧諸国と同様に、価値観の転換で説明できるのでしょうか。「第2の人口転換論」が日本にも当てはまるのでしょうか。
人口学者のレザフォードは、日本では、人口動態の変化のあとに価値観の変化が起きるという状況が見られていること、そして、1970年代の出生率の低下は、価値観の変化ではなく経済社会的な変化によって引き起こされたものであることを明らかにしています(Retherford 1996)。この研究によれば、日本には「第2の人口転換論」が当てはまらないということになります。
ただ、日本では価値観の変化が全く起きていないというわけではありません。レザフォードも、女性の社会進出や社会的地位の向上については、価値観の変化を指摘しています。
日本の人口学者である阿藤誠も、日本においても戦後ゆるやかに個人主義化が進んでいること。また、老親不要を義務とみる女性が急減し、性別役割分業観が弱まり、女性の社会的価値が急激に高まるなど、女性の地位・役割に関する価値観は、大きく変化したことを明らかにしています。しかしながら、西欧社会のような全般的な個人主義化や、伝統的価値観の根本的な崩壊は見られないとし、西欧と日本の違いを指摘しています(阿藤 1997)。
最近の研究においても、価値観の変化における日本と西欧の違いが強調されています。結婚と出産の分離、結婚に代わるものとしての同棲の増加、そして婚外出生率の増加という西欧の「第2の人口転換」の重要な特徴が日本では見られないというのです(J.M.Raymo 2022)。
日本では、かつて、山田昌弘の提唱した「パラサイト・シングル」という言葉が流行したことがありました(山田 1999)。山田のパラサイトシングルに関する研究では、経済社会的状況は急変しているにもかかわらず、結婚が女性にとって生まれ変わりという意味を持つことや、女性が自分より地位の高い男性を求める上昇婚志向はなかなか変わらないと指摘されています。つまり、経済社会的状況は急変しているにもかかわらず、結婚が女性にとって生まれ変わりという意味を持つことや、女性が自分より地位の高い男性を求める上昇婚志向などといった結婚に関する価値観が変化していないということです。
以上のような研究を踏まえれば、日本においては西欧社会において出生率低下を引き起こしたのと同様の根本的な価値観の変化は起こらなかったと言えるでしょう。少なくとも、価値観の変化だけから日本の未婚化を説明しようという議論にはあまり根拠がない、ということは言えそうです。

これから明らかにされるべき課題
ただし、実は価値観と出生率の関係は、そこまで単純なものではありません。
先ほど紹介したように、レザフォードは1970年代には価値観の変化が出生率に影響を与えているとは言えないと指摘しました。ただ同時に、彼は出生率低下が価値観の変化をもたらす可能性について示唆しています。価値観の変化が出生率に影響を与えるだけでなく、出生率の変化が価値観に影響を与える可能性があるというのです。そして、出生率低下によって引き起こされた価値観の変化が、出生率低下を加速させる可能性があるといいます(Retherford 1996)。その点に関しては、さらに検証が必要です。
また、1970年代以降の女性の社会進出と女性の社会的地位の向上については見逃せません。女性の社会的地位に関する価値観の変化ついては、前節で紹介した多くの既存研究でも明らかにされていました。阿藤も、未婚化と性別役割意識の変化の関連を示唆しています(阿藤 1997)。女性の社会進出と未婚化・少子化の関係については、「女性の社会進出が未婚化・少子化をもたらした」という言説と、「女性の社会進出と男女平等が進めば少子化が解決される」という、正反対の言説が日本社会に存在しています。この問題に関しては、次回(2)で詳しく見ていきたいと思います。
引用文献・主要参考文献
- 赤川学, 2004,『子どもが減って何が悪いか!』筑摩書房.
- 阿藤誠, 1997,「日本の超少出産化現象と価値観変動仮説」『人口問題研究』53(1):3-20.
- 廣嶋清志, 2000, 「近年の合計特殊出生率低下の要因分解:夫婦出生率は寄与していないか?」『人口学研究』26:1-20.
- 岩澤美帆, 2002,「近年の期間TFR変動における結婚行動および夫婦の出生行動の変化の寄与について」『人口問題研究』58(3):15-44.
- ———— , 2008,「初婚・離婚の動向と出生率への影響」『人口問題研究』64(4):19-34.
- ———— , 2015,「少子化をもたらした未婚化および夫婦の変化」高橋重郷・大淵寛編著『人口現象と少子化対策』原書房:49-72.
- James M. Raymo, 2022, The second demographic transition in Japan: a review of the evidence, China Population and Development Studies, 6: 267-287.
- 河野稠果, 2007,『人口学への招待:少子化・高齢化はどこまで解明されたか』中央公論新社.
- 厚生労働省, 2024,「厚生労働白書」
- ———— , 2025,「令和6年人口動態月報年計(概数)の概況」
- 見田宗介ほか編, 2012,『現代社会学事典』弘文堂.
- 日本社会学会編, 2023,『家族社会学事典』丸善出版.
- Robert D. Retherford, Naohiro Ogawa, Satomi Sakamoto, 1996, Values and Fertility Change in Japan, Population Studies, 50(1): 5-25.
- Ron Lesthaeghe, Johan Surkyn, 1988, Cultural Dynamics and Economic Theories of Fertility Change, Population and Development Review,14(1): 1-45.
- 総務省統計局, 2021,「令和2年国勢調査:人口等基本集計結果」
- 筒井淳也, 2023,『未婚と少子化: この国で子どもを産みにくい理由』PHP研究所.
- 山田昌弘, 1999, 『パラサイト・シングルの時代』筑摩書房.
- ———— , 2007,『少子社会日本:もうひとつの格差のゆくえ』岩波書店.
