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【海外子育てコラム_カンボジア vol.4】柔軟すぎる教育システムと情緒教育の欠如
カンボジア人の旦那さんとプノンペンで5人のお子さんを育てているさやかさん。上のお子さんたちは小学生。今回はカンボジアでの教育についてお話を伺いました。
「とにかく柔軟」なカンボジアの教育
―今回は、カンボジアの教育事情について伺いたいと思います。制度としては、就学年齢は何歳からですか?
小学校は6歳で入学です。日本より1年早いですね。就学前は、保育園と幼稚園の明確な区別はなくて、大体2~3歳から入れるところが多いですね。私が経営している保育園では、1歳を預けたいという要望が多かったので1歳児クラスも作りました。
―小学校は公立の小学校に通うのが一般的なのでしょうか?
小学校は公立校と私立校があります。当たり前ですが、公立校ではカンボジアの教科書を使い、クメール語で授業が行われます。学費は無料で、食費が月10~20ドルかかる程度です。ただ、公立校は教育の質にばらつきがあるので、ある程度余裕のある家庭は質の高い教育を求めて、私立を選ぶことが多いですね。
私立にも大きく分けると2種類あって、一つは英語メインで英語圏の教科書を使って授業を行う、いわゆるインターナショナルスクールです。もう一つは、「~系ローカルスクール」で、カンボジアの教科書を使ってクメール語で勉強しますが、音楽、体育、語学などが公立より充実しています。韓国系、タイ系、中国系、マレーシア系など、さまざまなバックグラウンドのスクールがあって、それぞれ特色があります。学費はピンキリで、月100ドルのところもあれば1,000ドル以上かかるところもあります。
―お子さんたちはどんな学校に通っているのですか?
うちの子供たちは、小学生は韓国系のローカル学校に通わせています。授業はカンボジアの教科書を使ってクメール語で行われますが、英語と韓国語も学習します。先生はカンボジア人が多くて、英語の先生はフィリピン人、韓国語の先生は韓国人です。学費は1人あたり月150ドルほどです。これはプロモーションで通常の半額になっている状態なので、いつ値上がりするかはわかりません。下の子たちは、うちの保育園に通わせています。

プノンペンの広場で遊ぶ子供たち
学校を「転々とする」子どもたち
―私立に行かせるとなると選択肢がたくさんあって学校選びが大変そうですね。
そうですね。実際、学費の支払いは1か月、3か月、6か月といった単位になっているので、そのタイミングで転校する子も結構います。3か月間はこの学校に行ってみて、ちょっと微妙なところがあったらこっちの学校も見てみてとか、いろんな学校を転々としている子も結構いるんですよ。
―日本の感覚とはだいぶ違いますね。
そうですね。「一度入ったら最後まで」っていう空気はなくて、「学校は合わなかったら替えればいい」「子供が楽しめる場所を探すのが大事」という感覚です。なんというか、学校での教育も、日本の義務教育とは違って、お金を払って受けるサービスっていう感覚が強いのかもしれません。その分「選択の自由」がある感じですね。

※写真はイメージです
「情緒教育ゼロ」の社会
―カンボジアでの保育や教育で日本と全然違うと感じたことはありますか?
やっぱり一番感じたのは、情緒教育がないということですね。子供の心を育てるような働きかけや教育がないんですよね。たとえば、子どもが泣いていたり、不安を訴えていたりしても、先生たちが「共感」や「寄り添い」を見せることがほとんどないんです。
家庭でもそういう面があるので、情緒が育たずに大人になっているなと思う人によく出会います。でも、なぜか人との距離感は近いので温かみは感じられます。
近年、情緒教育につながるような教育も増えてきているので、これからカンボジアにどういう人間性の人たちが育ってくるのかが楽しみです。
―さやかさん自身が子供たちに接するときに意識していることはありますか?
学校では心のケアまでしてもらえないので、家で子供たちの心のケアをするように心がけていますね。「お友達がそういうことをしちゃったのはなぜだと思う?」とか、「先生はこの時どういう気持ちだったんだろう?」とか、そういう対話を心がけています。家庭が情緒教育の砦であると同時に、社会に出るまでに子供の心を育む大切な場だと感じているので。あとは、なるべく親子での会話を持つようにしたり、親が完璧すぎないように意識しています。
―なるほどですね。保育園を経営されていますが、そこでも何か意識していることはありますか?
カンボジア人の保育園の先生たちも、淡白な人たちが多いので、先生たちに対しても「気持ち」を大切にすることを常々伝えています。それでも、なかなか伝わらないことが多くありますが、「継続は力なり」なので、いつも同じ気持ちで接することを心がけています。
ときに気持ちを裏切られるようなこともありますが、それはお互い様のような気がしています。カンボジア人の先生たちとも裏表がない関係性を作り上げるのが目標です。また、カンボジアに住んでいる以上は、尊敬の気持ちを忘れずに支え合っていきたいと思っています。
「あるもので何とかする」という発想
―他に何かカンボジアで生活していて価値観の違いを感じることはありますか?
もちろんあります。カンボジアではあるもので何とかしようとする。日本はより良いものに発展させようとする。ある意味、お互いにとってお互いが必要であるように感じています。どちらの価値観も良いように捉えて、理解し合っていくことが大切だと思っています。

アンコールワット
【海外子育てコラム_カンボジア】
vol.1 プノンペンで5人を育てる日々
vol.2 “祈るしかない”出産環境
vol.3 家事・育児と仕事両立のリアル
vol.4 柔軟すぎる教育システムと情緒教育の欠如
