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【海外子育てコラム_スイス vol.1】国際色豊かな社会―「違い」を受け入れ、共に生きる

EN-ICHI編集部

2025年7月7日

スイスで4人のお子さんを育てているあいさん(仮名)に、現地での子育ての様子をお伺いしました。(全6回のコラムとなっており、今回がその第1回です。)

―スイスでの生活も長くなられたそうですね。今の暮らしについて教えてください。

はい、スイスに暮らしてもう14年になります。4人の子どもを育てながら生活しているのですが、この国では「多様性の中に暮らすこと」が本当に日常の一部なんです。

私たちが住んでいる地域には、いろんな国籍や文化的背景の人がいて、それがごく自然に交わっています。うちの家族もまさにその象徴のようで、夫はスイス人ですがアメリカ国籍も持っていて、義兄はブラジル人、義弟はフランス人と結婚しています。いとこたちの肌の色や話す言語もバラバラで、まるで「一つの家族に世界がある」という感じです。

今私たちが住んでいるのは、10棟以上が並ぶ団地のようなアパート群なんですが、同じ敷地内に義兄弟の家族や義理の両親も住んでいて、いわば“拡大家族コミュニティ”になっているんです。いとこ同士が仲良く遊んだり、祖母がすぐに来てくれる距離感だったりして、本当に子育てには理想的な環境です。

また、スイス全体の雰囲気として「寛容さ」があるんです。例えばスーパーで子どもが騒いでも、年配の方が「大丈夫よ」って優しく声をかけてくれる。公共の場でも子供たちに寛容で、あたたかく見守ってくれる文化があります。

※上記写真はイメージです

―とても素敵な環境で生活されているようですね。「多様性の中に暮らす」なかで、ご自身の考え方などに変化はありましたか?

スイスってもともと移民が多い国なんです。公用語も4つあって、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語が並立しています。都市部に行くと、日常の中で聞こえる言葉も見かける顔ぶれも本当に国際的。「隣人がどこの国の人か」なんて気にすることもほとんどありません。そういう文化が根付いていて、とても居心地がいいです。

私自身も、この国で暮らすうちに「共通点を探すより、“違い”に慣れることが大事」だと思うようになりました。違っていて当たり前という感覚。それはとても大きな学びでした。

日本だと、周囲との調和とか“空気を読む”ことが求められますが、スイスでは「違っていてもいい」「違う意見を持っていても大丈夫」って、子どもたちは教えられているんです。そんな姿を見ると、頼もしいし、ちょっとうらやましくもあります。

一方で、スイスの国民性である保守的な部分も色濃く残っていると思います。

スイスの街並み(あいさん提供)

―スイスの保守的な部分とはどういう点でしょうか?

他者との違いを認めつつも、スイスで生活する者として、スイス社会に溶け込む努力が強く求められていると思います。例えば、ごみは分別する、時間を10時以降は大きな音を立てないなど。移民は多いですが、すべてが「多様性」という言葉で片付けられるわけではなく、地域社会の一員となるために守るべき義務があるんです。

―なるほど、それが多くの移民を受け入れながら安定した社会を築く秘訣かもしれないですね。多文化社会ならではの葛藤や課題はありますか?

もちろんあります。たとえば、旧ユーゴ圏出身のご家庭では、親の世代の対立の歴史が影響して、「この国の子とは遊んではいけない」なんて言われることもあるんです。

でも、学校はそういう差別の再生産にすごく敏感で、「どの国の出身でもみんな尊重されるべき」というメッセージを常に発信してくれます。

その甲斐もあってか、都市部では国籍などによる差別はあまり感じません。元々中立国として中立性を重要視していているため、移民による国内での対立などには非常に敏感で、そういうことが起こらないようにしていると思います。例えば、新聞などでも、事件の犯人の国籍を表示しないですし。

コロナ禍の時に、他のヨーロッパの国々ではアジア系の人々への差別がひどかったようですが、少なくとも私の周りではそういうことは全く無くなかったです。

スイスの社会は、寛容さと中立性、そして規律の絶妙なバランスで成り立っていると思います。

【海外子育てコラム_スイス】
vol.1 国際色豊かな社会―「違い」を受け入れ、共に生きる
vol.2 妊娠・出産体験談―合理的で温かなケアが支える“家庭での産後”
vol.3 「自立心」「自己主張」「創造性」を育む教育
vol.4 「多文化」と「自然」を生きる日々
vol.5 しっかり決める「家庭のルール」
vol.6 暮らしの中で「働くこと」を見つめ直す

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