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【海外子育てコラム_スイス vol.3】「自立心」「自己主張」「創造性」を育む教育
スイスで4人の子供を育てるあいさん(仮名)。スイスでの子育てで、子供たちの「自立心」「自己主張」「創造性」が育まれていると感じるそうです。
社会全体に根付いている「自立心を育てる」姿勢
―スイスでの子育てで、特に印象的だった教育の考え方は何ですか?
「自立心を育てる」という姿勢が社会全体に根付いていることですね。4歳から公立の幼稚園に入園するんですが、幼稚園でも親が付き添うことはなく、1人で登園するのが当たり前なんです。治安がいいからこそできることだとは思いますが。幼稚園の先生から、「自立心が、自立心が」と何回も言われて。最初は驚きましたけど、子供を信じて任せる文化が、教育の第一歩からあるんだなと思いました。
また、通う幼稚園は原則として選べず、自治体が割り振ります。基本的に兄弟姉妹や近所に住む人は異なる園に分けられます。子供の「自立心を育てるために一緒にしません」とはっきり言われるんです。実際うちも兄弟が別々の園に通いました。「兄弟に頼らず、自分の世界を築く」ことが重視されていているみたいです。

※上記写真はイメージです
一人一人の成長に合わせた就学
―なるほど、「自立心」がとても大切にされているんですね。
はい。同時に、子供たち一人ひとりの成長に合わせた就学ができる制度になっています。早生まれの子供やドイツ語の言葉の遅れ、社会性など、色々と考慮して、親が申請して小児科医が承諾する場合は幼稚園への入園を1年遅らせることができます。
幼稚園は基本的に2年間ですが、言語能力、社会性や情緒面を考慮して、小学校入学の準備がまだできていないと判断された場合は、留年して、もう1年幼稚園に行きます。
小学校も同様で、毎年留年する子供が数名います。学校心理サービスの専門家と教師と保護者が協議し、決定する形です。子供に無理をさせず、その子の成長度合いによって進級を決定する仕組みがあります。
はっきり「NO」と言えるように
―他にも、教育方針や指導方法で驚いたことはありますか?
自己主張することがとても重視されています。幼稚園のうちから、嫌なことがあったら「ストップ」や「ナイン(No)」と言うよう教えられるんです。日本だと「我慢しなさい」「仲良くしなさい」で済ませがちな場面でも、スイスでは「まず自分の気持ちを表現すること」が最優先なんです。トラブルがあったときも、みんなで円になって話し合ったり、何が悪かったのかを一緒に考えたりする時間がきちんと設けられています。「自分がどういう考えをもって、何をしたいのか」を考えさせることを大切にしているんだと思います。
また、小学校の授業では発言の機会が多く、自分の意見を求められます。ドイツ語に自信のない子がいたら、英語でもいいから話してごらんとか。自分の意見を言うことをすごく促される感じがしますね。娘の小学校では、割り算や掛け算も、ただ教えるのではなく、「どうやって解けると思う?」と問いかけてみんなで話し合わせたりしているみたいです。

※上記写真はイメージです
子供の創造性や自発性を育てる
―「おもちゃなし週間」や「選べる宿題」という斬新なワードが聞こえてきましたが。
はい、幼稚園では「おもちゃなし週間」っていうのがあって、教室からすべてのおもちゃをなくすんです。その中で子供たちは、自分たちで遊びを考えます。椅子を並べてバスごっこしたり、備品を使ってままごとを始めたり……そういう中で創造力や自発性が育まれているんだなと感じます。
あとは、小学校の宿題を選べるというのが驚きでした。たとえば「簡単・普通・難しい」の3つのレベルがあって、自分で好きなものを選べるんです。うちの娘はいつも「難しいのにする!」って張り切って選ぶけど、途中で「ママ助けて~!」ってなることも。でもそれでいいんです。失敗しても怒られないし、「自分で選ぶ」こと自体が大事にされています。

※上記写真はイメージです
学校行事は少なめ、親のかかわりの控え目
― 学校の行事はどんな感じですか?
入学式や卒業式といったセレモニーはなくて、小学校の初日にいきなり授業が始まります。親が見に来るような運動会もなくて、25人くらいのクラス単位で森や公園に出かけて運動したり、木に登ったり、あとはアイスを食べて終わるとか(笑)。全体行事と言えるものとしては唯一夏祭りがあって、そこでは親の前で歌を唄って出店を楽しんでみたいなことがあります。
学校では、基本はクラス単位で動き、クラスを2つに分けて10人ちょっとで授業を受けることもあります。なので、団体行動・集団行動と言われるようなものはほとんどないですね。
― 親の学校への関わり方は、日本と違うところがありますか?
かなり違います。保護者会やPTAはありますが、基本的に任意参加ですし、PTAはボランティアではなく「報酬が出る業務」として募集されています。日本のように“全員が何かを担当する”というプレッシャーはないですね。
また、いじめなどの深刻な問題でない限り、子供同士のトラブルも先生が対応して、特に保護者に報告されることもないです。全体的に親は子供を“サポートする存在”ではあるけど、“管理する存在”にはならないという感じがします。子供が自分の空間を築けるよう、過干渉にならないようにしている印象があります。
ただ、幼稚園も小学校も基本的に給食がないんです。これがネックですね。政策として給食を広めようとはしているみたいですがまだまだです。なので、昼食は家に帰ってから食べるか、併設されている学童で食べます。ただ学童は自費で、親の収入によって料金が決まる仕組みとなっているのですが、決して安くはないです。なので、共働き世帯にとってはちょっと負担かもしれないです。

スイスの風景(あいさん提供)
【海外子育てコラム_スイス】
vol.1 国際色豊かな社会―「違い」を受け入れ、共に生きる
vol.2 妊娠・出産体験談―合理的で温かなケアが支える“家庭での産後”
vol.3 「自立心」「自己主張」「創造性」を育む教育
vol.4 「多文化」と「自然」を生きる日々
vol.5 しっかり決める「家庭のルール」
vol.6 暮らしの中で「働くこと」を見つめ直す
