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家族機能・家族観の変遷の概要
社会学においては早くから家族を研究の対象とし、家族の社会における役割を家族機能と位置付けてきました。家族の多様化といわれる現代においても、依然として家族とは何であるのか、家族機能とは何かとの議論は必要とされています。時系列でその変遷内容を簡単に概観します。
家族機能とは
家族機能とは、家族が果たすべき役割のような意味合いですが、社会学は早くから家族を研究の対象として家族社会学を形成してきました。そのなかで、家族の定義を行い、その家族の社会における役割を家族機能と位置づけてきました。
1960年代末ごろから主観的家族観が米国で提起され、家族の多様化といわれる状況と相まって、家族の客観的定義が可能なのかとの疑問も大きくなりました。日本もその影響を大きく受けました。
しかし、家族は現在でも存在し、また支援されるべき家族も増加してきました。そうした現状において、依然として家族とは何であるのか(定義)、家族機能とは何かとの議論は必要とされています。
家族機能についての諸説

出所:筆者作成
家族機能縮小説
家族機能を体系的に述べたのは文化遅滞説(精神文化が物質文明に遅滞すると社会変動発生の原因となる)で有名なウィリアム・オグバーン(1886-1959)であったとされます(The family and its function1933)。オグバーンは近代以前の家族機能を七つあげ(愛情、経済、教育、宗教、娯楽、保護、地位付与)、社会の産業化によって愛情以外は社会(政府、企業、学校)が担うようになったと主張しました。家族機能の縮小説です。
核家族論=四機能説
第二次世界大戦が終了し、核家族が普遍的であることを強調したのはジョージ・ピーター・マードック(1897−1985)でした(『社会構造』原著1949)。しかし普遍的であることの説明がやや強引であったこともあって、マードックの核家族論は理念型(ある概念を標準モデルとして理解する考え方)として理解されるようになりました。またマードックは家族機能には性的、経済的、生殖的、教育的の四つの機能があるとしました。これを四機能説と呼びますが、他の学説に比べ理念的になり過ぎず、現実的であると考えられるため詳細を述べます。
・性的とは、夫婦における性関係のみが社会的に容認される男女の性関係であり、これによって社会は男性の性欲を統制できているということです。
・経済的とは、男女がそれぞれの特性に応じて経済的協働体制を取っているということ(フェミニズムはこれを性的役割分業を容認していると批判します)です。
・生殖的とは、子どもは家族の枠内で産むことが合理的であるということです。
・教育的とは、子どもの社会化(一人前になること)は家族によって第一義的に行われることが望ましいということです。
二機能説
家族機能縮小説の系譜ではありますが、家族機能は他の社会組織に代替することができないものがあるとして二機能説を主張したのは機能主義社会学の大家タルコット・パーソンズ(1902-79)でした(Family, Socialization, and Interaction Process1956)。それは、①成人のパーソナリティの安定、②子どもの第一次的社会化です。
成人は家族を形成し家族関係を持つことによって精神的に安定し(家族関係が良好なことを前提にしてはいます)、また子どもが挨拶などの基本的な社会的習慣を身に付ける場は家族しかないとしました(第二次的社会化は学校において行われます)。
主観的家族観の登場
家族構成員の主観によって、家族は決められるべきだとの主観的家族観の嚆矢となったものは、田淵六郎(1996)によると、『聖なる天蓋』で著名なピーター・バーガー(1929-2017)のThe Social Construction of Reality 1966年であるといいます(『ソシオロゴスNo.20』1996)。バーガーはアルフレッド・シュッツ(1899-1959)の現象学を家族に応用し、構成員の主観に重点を置く家族観を主張しました。
日本においては、パラサイトシングルの造語で有名な山田昌弘(2005)らが主観的家族観を展開しました。山田はペットを家族と考える人もいる等の家族に対する多様な意見があるとして、家族はその構成員の主観によって異なることを強調しました(1992年)。
マルクス主義フェミニズムの上野千鶴子(1994)は、主観的家族観を、夫は妻と子どもたち全員を家族と思っていますが、妻は自分と子どもたちだけを家族と考えている場合も有りうるとして、ファミリーアイデンティティとの概念をフェミニズムらしく紹介しました(1991年)。女性の視点は、男性の視点の梯子を外しているかも知れないと脅しました。
家族機能についての考え方:現在の地点

現在の家族機能についての考え方はどうなっているのでしょうか。理論面においてはジェンダー論に強く引っ張られながらの模索が継続していると思われるものの、実態面では家族の福祉的支援を行う社会福祉士のテキストにおいて、家族機能として性的、経済的、生殖的、教育的とのマードックの理論が紹介され、続いてパーソンズの二機能説が説明されています(『新社会福祉士養成講座:社会理論と社会システム』中央法規2015年第3版)。
このことは、理論面はともかく、実際に家族支援を行おうとする際、マードックの四機能説は使い勝手がいいことを意味しているものと考えられます。
似たような傾向は、フェミニズムが盛んに批判した男女の性的役割分業(男は仕事、女は家事育児)についても言えます。山田は、性的役割分業が中核にある近代家族を望む人々が西洋社会では減少しているのと正反対に、日本において増加していると指摘します。同時に、家族を重視する人々も増加しているといいます(『社会学評論』64-4:2013年)。しかしこれらの人々はある程度の経済的豊かさに恵まれており、そうでない人々は、家族を形成することが困難な状況にあり、二極化が進んでいるともいいます。
あれほどフェミニズムが性的役割分業を批判してきたにも関わらず、日本社会の一極はそうなっていない現実には興味深いものがあります。
(『EN-ICHI FORUM』2023年8月号記事に加筆修正して掲載)
参考文献
- 森岡清美、1993、『現代家族変動論』、ミネルヴァ書房。
- Ogburn, W. 1933, The family and its function.
- ジョージ・ピーター・マードック、1949, Social Structure-1978,内藤莞爾監訳、『社会構造-核家族の社会人類学-』、新泉社。
- タルコット・パーソンズ他、1956、Family, Socialization, and Interaction Process-橋爪貞夫その他訳、2001、『家族-核家族と子どもの社会化』、ミネルヴァ書房。
- 田淵六郎、1996「主観的家族論-その意義と問題-」、『ソシオロゴスNo.20』、1996。
- ピーター・バーガー他、1966、The Social Construction of Reality-山口節郎訳、1977,『日常世界の構成』、新曜社。
- 山田昌弘、1994、『近代家族のゆくえ-家族と愛情のパラドックス』 新曜社。
- 上野千鶴子、1994、『近代家族の成立と終焉』、岩波書店。
- 山田昌弘、2005、『迷走する家族』、有斐閣。
- 山田昌弘、2013、「日本家族のこれから-社会の構造転換が日本家族に与えたインパクト」、『社会学評論64(4)』。
