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【情報ファイル】教員志望者減、採用倍率は過去最低
教員採用選考試験実施状況と学校教員の実状
この10年余り、公立小・中学校の退職教員数は毎年2万5千人前後で推移しています。教員の大量退職、35人学級の導入により、公立学校教員採用試験の倍率は下がり続けています。
文科省の公立学校教員採用選考試験の実施状況によると、バブル崩壊の2000年度教員採用試験倍率は小学校12.5倍、中学校17.9倍に上昇しました。その後は下がり続け、2024年は小学校2.2倍、中学校4.0倍まで低下しました。高校も同様で、小中高全てで過去最低を記録しました。

出所:文部科学省『令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況』を元に筆者作成
都道府県別でみると採用倍率に大きな開きがあります。東京都は2024年度1.7倍で、小、中、高等学校いずれも過去最低だった前年(1.6倍)をわずかに上回りましたが、過去最低の水準が続いています。とくに小学校は2023年度1.1倍、2024年度1.2倍と全国で最も低いです。教員数の不足により学校の授業が回らないという事態も起きています。
教員の確保に向けて、東京都教育委員会は2023年度から、教員採用試験の負担を軽減し、一部試験を大学3年までに受けられるようにするほか、教員退職者が10年以内に復帰する場合は1次選考を免除する「カムバック採用」を導入しました。また、教員免許なしで受験可能な社会人選考の採用対象を40歳以上から、25歳以上に引き下げています。
一方、教員の年代層は3割以上が50代以上です。文科省の「2022年度学校教員統計調査」(中間報告)によると、公立教員は20代16.5%(10.9万人)、30代27.5%(18.2万人)、50歳以上が33.1%(21.8万人)。平均年齢は小学校42.1歳(前年42.6歳)、中学校43.0歳(同43.6歳)、高等学校46.2歳(同46.3歳)で、小、中学校では若返ったものの、年代層の偏りは依然として大きいです。
中間報告によると、教員の大量退職が終わり、退職者数は2023年度から減っていくとしています。学校数・児童数も減少しているため、採用倍率は今後は上昇していくと予測されます。また教員の質で言えば、教員の大学院修了者割合は高くなっています。
問題は、教員の離職率は低いものの、精神疾患を理由に離職した公立小、中、高等学校の教員が2021年度は過去最多の953人、精神疾患による病気休職者数は在職者の0.64%に当たる5897人に上ったことです。また、わいせつ行為などで処分された教員は毎年200人を上回っています。
教員志望者を増やすとともに、教育の質向上に向けて教員の働き方改革は急務です。
(『EN-ICHI FORUM』2023年11月号記事に加筆修正して掲載)
