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【海外子育てコラム_韓国 vol.1】5回にわたる韓国での出産
韓国の南西部に位置する、のどかな田舎町、海南(ヘナム)。この地で、さとこさんは、とても印象的な子育てライフを送っています。彼女は2016年に韓国人の夫のもとへ嫁ぎ、5人の子供たちを出産しました。本コラムシリーズでは、彼女のユニークでパワフルな体験談を紐解いていきます。第一回目は、彼女が韓国の地方都市で経験した「出産」についてのお話です。
病院任せではない出産 ― 韓国の医療現場で感じた戸惑い
―韓国の地方都市、海南で5人のお子様を出産されたとのことですが、まず、韓国での出産で特に苦労されたことは何ですか?
韓国全体で少子化が進んでいるためか、出産経験をあまり多く積んでいない医師や看護師が多いように感じました。このため、日本の出産と比較して、医療側の対応に戸惑うことが多々ありました。
例えば、日本では何時間も、何十時間も、時には何日も待って自然な分娩をサポートしてくれますが、韓国ではそのように待ってくれることが少ない印象です。まだ生まれない状況でも「もう薬で出しちゃおう」となったり、「この薬を入れてダメだったら手術します」といったように、無理やり分娩を早めようとする傾向があると思います。私自身も無理やり押し出されたために非常に痛い思いをしました。
また、私の思い込みかもしれませんが、外国人であるためか、少しバカにされているような、扱いが雑だと感じることもありました。病院によっては、出血が続いている際に子宮復古を早めるための子宮マッサージを指示されましたが、説明なく「子宮のマッサージをしておいてね」とだけ言われ、疲れて寝てしまったら「なんでやってないんや!」と言う感じでひどく怒鳴られた経験もあります。このような高圧的な対応には苦労しました。

※写真はイメージです
地方都市・海南での出産 ― 距離と不安の中での選択
―韓国ではいくつかの病院で出産されたそうですが、病院選びの基準や、それぞれの経験について教えてください。
長男と長女は、車で1時間半かかる木浦(モッポ)の母子センターで出産しました。海南の病院は、もしものことがあった場合に光州(クァンジュ)の大学病院まで行かなければならないため、距離的に近い木浦の病院を選びました。
次男は、自宅から車で30分ほどの場所にある海南の小さな総合病院で出産しました。長男の際、夫が検診に同行できず運転が大変だったことや、コロナ禍で外出を控えたかったこともあり、やむを得ず近隣の病院を選択しました。この病院は出産する人が少ないため、入院中は部屋を一人で利用でき、手厚い看護を受けられました。
三男の出産は、特殊な事情があったため、家から2時間半ほどかかる全羅南道の全南大学校病院で行いました。
横隔膜脱腸を乗り越えて ― 奇跡の誕生
―三男さんは特別な病状を抱えておられたとのことですが、どのような状況だったのでしょうか。また、大学病院での出産はどのようなものでしたか?
三男は横隔膜脱腸という先天的な病状があり、腹膜の穴から腸が肺の方へ出て、肺や心臓を圧迫している状態でした。医師からは「この子が生まれて生きられる確率は半分、健康な状態で生まれる確率はその半分の1/4です」と伝えられました。
大学病院では、当初、誘導分娩を勧められたり、手術を提案されたりしましたが、私自身は4人目以降も産むことを考えていたため、お腹を切る結果になることを避けたいと思っていました。結果として、誘導分娩の日程が決まっていたにもかかわらず、自然に破水し、病院に向かう途中で陣痛が来て生まれました。
陣痛が来てから病院まで車で2時間半かかる上、その日は雪が降っており、移動は非常に大変でした。夫は動揺しなかなか動けなかったため、私自身が救急外来に電話をかけながら、病院へ向かうことになりました。
大学病院の助産師さんや看護師さんは、他の地方病院とは異なり非常に親切でした。この子は泣き声も聞こえないかもしれないと言われていましたが、生まれた瞬間に泣き声が聞こえ、その後、呼吸も安定しており、結果的に命に別状がないことが判明しました。

※写真はイメージです
“命と向き合う”自宅出産 ― 助産師との信頼関係と夫の立ち会い
―5人目の出産で、初めて自宅出産を選ばれたのはなぜですか?
色々な病院で出産して様々な経験をすることができましたが、5人目の出産では、助産師さんに家に来てもらい自宅で出産しました。これが一番良かったと感じています。
病院ではそこまで手厚いケアはしてもらえませんし、上の子たちの世話もありました。自宅出産では、自分と赤ちゃんとじっくり向き合えたこと、赤ちゃんが出てくる瞬間や、陣痛に耐えて降りてくるのを待つ時間が本当に良かったと感じています。
特に、助産師さんがお母さんのように包容力のある方で、妊婦と助産師という関係を超えた「つながり」を作りやすかったです。
―自宅出産では、助産師さんが旦那さんに対して積極的に働きかけてくれたそうですね。
そうなんです。実は夫は仕事のため、一度も出産に立ち会えていませんでした。この時も、もうすぐ生まれるという時に、夫が「町内会長の会議に行かないといけない」と言い出したのですが、助産師さんが「行かない方が良いんじゃない?」と一言で引き留めてくれました。私はそれどころではなかったですが、助産師さんがそのように伝えてくれたおかげで、夫は初めて出産に立ち会うことができました。その経験に非常に満足しています。

散歩中の子供たち(さとこさん提供)
【海外子育てコラム_韓国】
vol.1 5回にわたる韓国での出産
vol.2 しっかり休める韓国での産後
