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外国人との共生社会実現に向けて【第1回】人類史の「再統合」と日本社会の覚悟―なぜ今、私たちは変わる必要があるのか

井上 健パーソナルガバナンス研究所代表

2026年3月18日

今日、日本の街角で外国人の姿を見かけることは、もはや日常の風景となりました。少子高齢化が加速する中、外国人との共生は避けて通れない課題です。しかし、この変化を単なる「労働力不足の補填」という近視眼的な視点だけで捉えてはいけません。私たちは今、人類史という壮大なスケールで起きている変化の渦中にいます。

約20万年前、東アフリカで誕生したホモ・サピエンスは、約7万年前にアフリカを出て世界各地へと広がっていきました。日本には4万年ほど前に到達したと考えられています。それぞれの地域で環境に適応する過程で、肌の色や体格などの身体的な違いが生まれましたが、私たちは皆、同じ「ホモ・サピエンス」という単一の種です。日本人と外国人の間に新しい命が宿るという事実こそが、私たちが一つの「人類という家族」である証拠です。

一度は世界中に分かれた人類ですが、約500年前の大航海時代から再び混ざり合い、統合される「リインテグレート(再統合)」の流れが始まったと考えられます。日本においても明治の開国以来、この流れは加速しており、現代のグローバル化によってさらに不可避なものとなっています。外国人が増えていくことは、歴史の必然とも言えるプロセスなのです。中長期的に考えれば、日本社会にとって必要なプロセスといえるでしょう。

しかし、歴史の必然だからといって、無秩序な流入を容認する必要はありません。外国人を受け入れるための制度整備が十分でないなかでの受け入れは、短期的には多くの問題を生み出すでしょう。日本は約1500年もの間、大規模な移民を受け入れず、独自の「和」や秩序ある文化を育んできた伝統があります。この「日本らしさ」というアイデンティティを維持するためには、統合の「速度」と「方向」を、私たち自身の手で主体的に調整していく必要があります。

急激すぎる変化は社会に摩擦を生みます。大切なのは、どのようなスピードで、どのような社会像を目指して統合を進めるのかという明確な「意思」を持つことです。

これまで日本社会は外国人を受け入れるための準備を十分にしてこなかったため、加速化している流れをうまく調整できないでいます。具体的には、少子高齢化が進み、多くの産業で労働力が不足し、外国人労働者を受け入れざるを得なくなっているのに、日本社会としての明確な受け入れ方針がないのです。このような状況が続けば、摩擦が拡大する恐れがあります。

これまでの日本の最大の問題は、外国人を単に「安価な労働力」や「資源」のように見る傾向が強かったことです。しかし、彼らは感情も文化も持った人間であり、共に社会を築く「市民」です。

彼らを単なる「使い捨ての働き手」としてではなく、将来の日本社会を支える一員として受け入れる。この意識こそが、日本らしさを壊さずに新しい力を取り入れるための第一歩となるでしょう。この意識転換と、外国人労働者の日本社会への定着・統合を支援する仕組みを強化することが重要であると思います。

第2回では、この「市民」として迎える上で、現在最も深刻な影を落としている難民受け入れの課題に迫ります。

※本コラムは2026年3月3日に行ったインタビューの内容をEN-ICHI編集部が整理してまとめたものです。

著者プロフィール
井上健・いのうえけん
1957年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、サセックス大学(英)開発学修士。1985年にUNDPへJPOとして入職後、カンボジア・ソマリア・コソボ・東ティモールなどでの国連PKO要職、アジア生産性機構工業部長、JICA民主化支援シニアアドバイザーなどを歴任。東洋大学・獨協大学など多くの大学で非常勤講師も務める。専門はSDGs、国連平和維持・構築活動、民主的ガバナンス。現在はパーソナルガバナンス研究所代表として、在日外国人の定住支援と多文化共生社会の実現に取り組んでいる。

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