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なぜ最近の若者は結婚しないのか?(3) 結婚しない理由・結婚できない理由

南原 悠一IPP研究員

2026年7月24日

これまで2回にわたって、日本の未婚化がなぜ進んできたのかを、家族社会学・人口学の知見から整理してきました。第3回となる今回は、これまでの議論を振り返ったうえで、結婚意欲がありながらも結婚に至らない人々の実態と、その背後にある社会・経済的背景について掘り下げてみたいと思います。

第1回の記事では、「最近の若者は、結婚を重要視せず、結婚願望が薄れたから結婚しない」という「価値観の変化」を未婚化の原因とする見方を検討しました。結果として、皆婚規範は弱まってはいるものの、若者の結婚意欲は依然として高く、価値観の変化のみによって未婚化がもたらされているとは言えないということを述べました。

第2回は、「女性が経済的に自立したことで結婚しなくなった」とする「女性の自立仮説」について検討しました。「女性の自立仮説」とは、女性の経済的自立が女性の結婚からの逃避・解放を可能にしたため女性の未婚化(非婚化)が進んだという仮説です。近年ではこの仮説が否定されており、「結婚市場のミスマッチ仮説」が定着していることを示しました。ミスマッチ仮説とは、女性の高学歴化と社会進出が進むと同時に若年男性の雇用が不安定化したことにより、男女お互いに合う相手が相対的に不足しているという仮説です。

ここまでで見えてきたのは、未婚化が若者の積極的な非婚の選択によって引き起こされているというより、何らかの要因で「結婚したくてもできなかった」、もしくは「いずれ結婚したいと考えていたが今のところ結婚に至っていない」という状況が広まることで未婚化が進展しているということです。

本稿では、この点について、実証的な既存研究の成果に基づきながら、結婚をめぐる社会・経済的環境がどのように変化してきたのかを見ていきたいと思います。

実際に、結婚意欲が無いわけではないが「結婚できなかった」「結婚しなかった」という人の割合はどのくらいなのでしょうか。

日本人の結婚願望と結婚結果の関連性について分析したジェームズ・レイモらの研究によると、未婚者のうち、結婚したくないから結婚しなかった人はごく少数で、大半が「結婚できなかった」「結婚しなかった」と言います(Raymo et al. 2021)。

レイモらは、「東大社研パネル調査(JLPS)」という20〜40歳を対象とした全国パネル調査のデータを用い、2007年時点で未婚だった男女を2015年まで追跡しました。そのうち男性の33%、女性の46%が結婚しており、残りの未婚状態にある人を「結婚したくない(結婚拒否)」、「結婚したくてもできない(結婚願望の実現失敗)」、「いずれ結婚したいと考えていたが今のところ結婚に至っていない(計画なき独身への漂流)」の3つに分類しました。

その結果、男性全体のうち「結婚の拒否」がわずか3%、「願望の実現失敗」が22%、「漂流」が41%でした。女性では「拒否」が2%、「実現失敗」が17%、「漂流」が34%となりました。男女とも、未婚者のうち、「結婚したくてもできていない(結婚願望の実現失敗)」が3分の1で、「いずれ結婚したいと考えていたが今のところ結婚に至っていない(計画なき独身への漂流)」というケースが残りの3分の2ほどを占めているということです(Raymo et al. 2021)。

では、未婚者の大半を占める「実現失敗」と「漂流」は、なぜ起きているのでしょうか?

考えられるのは、「安定的な経済基盤がない」、もしくは「相手がいない(=親密性基盤がない)」ということでしょう。安定した収入源としての仕事を得ているか、そして、そもそも結婚したい意欲がある時に結婚する相手がいるか、というのは結婚実現の重要な条件であるはずです。

岩澤美帆らによる研究では、1982年から2021年までの約40年間にわたる「出生動向基本調査」の独身者調査の分析から、未婚化が主に経済的基盤の不在によるものなのか、それとも親密性基盤の不在によるものなのかは、時期によって異なることがわかっています。

まず、1980年代は、結婚意欲・経済基盤・親密性基盤が全てある状態での未婚が増えています。これは結婚の前段階にいる人、結婚を先送りにする人が増えたことを表しています。

次に1990年代から2000年代にかけては、結婚意欲はあるものの、経済的基盤か親密性基盤がない人、もしくは両方がない人が増えたといいます。つまり、結婚したいけれども「正規雇用だが恋人がいない」という場合や、「恋人はいるが非正規雇用」、「非正規雇用で恋人もいない」というケースです。

2010年代に入ると、経済的基盤も親密性基盤もなく、結婚意欲もないというタイプの未婚が増えると言います[1]。

欠如した基盤を時代ごとに捉えると、2000年前後は経済的基盤を保有する未婚者の割合が若干増えたが、他方、親密性基盤の確保に困難を抱える割合が増加していることが指摘されています。これは、結婚相手としてふさわしい相手を得ることができない層が増えているということです。

ここまで、「結婚できなかった」「結婚しなかった」という状況についてみてきました。その状況の要因として、「経済基盤の不在」と「親密性基盤(恋人)の不在」があることがわかりましたが、この2つの要因について、さらに詳しく見ていきます。


[1] 分析対象の全期間にわたって、「経済基盤も親密性基盤もあるが結婚意欲はない」という未婚の類型はごく少数だったことも明らかになっています。これは、「結婚したくないから結婚しなかった人はごく少数」というレイモらの研究結果とも一致すると言えます。


日本では「夫がお金を稼ぎ、妻が家事育児を担う」という男性稼ぎ主型の性別役割分業家族が「あたりまえ」と考えられていた時期がありました。経済基盤を確保する役割が男性に割り当てられてきたのは、高度経済成長を背景として男性雇用の安定という条件が日本社会で定着していたことと関係しています。

ただ、「失われた30年」に突入し、男性雇用の安定という社会的条件は崩れていきます。それにもかかわらず、初職がホワイトカラー以外あるいは非正規雇用である男性は結婚しにくいという状況が存在し、安定した仕事(正規雇用)に就くことは、男性にとって結婚のための重要な条件であり続けています(佐々木 2012; 脇田 2018)。また、大企業に勤めていることも、結婚への移行を顕著に促すことがわかっています(麦山 2017)。「稼ぎ主」としての安定した収入を得られない男性にとって、結婚のハードルは高いままなのです。

女性についてはどうでしょうか。第2回の記事では、高学歴の女性は結婚しづらいという仮説を紹介しました。しかし、実はこの状況は最近変わりつつあり、雇用が安定している人の方が結婚しやすいという傾向が、近年になって見られるようになってきました。「日本版General Social Surveyライフコース調査」のデータを用いた分析では、女性の高学歴化が結婚を遅くする要因になってはいるが、30歳以降は、高学歴で稼得能力が高いからこそ結婚を生起しやすくなっているといいます(佐々木 2012)。特に、専門職で就業している場合に結婚への移行を促し、非正規雇用である場合には結婚に至りにくいこともわかっています(麦山 2017)。

このような高学歴で稼得能力が高い女性の方が結婚しやすいという傾向は、最近の世代で現れるようになってきた傾向です。福田(2012)は、「消費生活に関するパネル調査」のデータを用いた分析から、1960年代生まれのコーホート(世代)までは女性の稼得能力が結婚に対して負の効果をもつものの、1970年代以降生まれのコーホートではこれが正の効果へと転じることを明らかにしました。若い世代ほど、女性の稼得能力が結婚選択に与えるプラスの影響が大きくなっているということは、別のパネル・データを用いた研究からも明らかにされています(何芳 2018)。結婚・出産後に妻が仕事を続けて欲しいと考える男性が近年急増していることもあり(国立社会保障・人口問題研究所 2021)、結婚に際して、女性に対しても稼得能力が期待されるようになってきたと言えます。

稼げる男性が結婚しやすいというのは今まで通りですが、女性も「稼げること」が結婚に結びつきやすくなっています。「経済的基盤の不在」が結婚の障害になり、未婚化をもたらすということは、男女に共通するものになっているのです。

次に、「親密性基盤」の有無、つまり、恋人の有無という要因について見ていきます。

恋人がいるかいないか、どのように出会っているのか、ということを考えるにあたっては、結婚相手との出会い方が変化しているというデータが手がかりになります。国立社会保障・人口問題研究所では、ほぼ5年おきに「出生動向基本調査」が実施されており、そこでは夫婦の出会いのきっかけについても尋ねています。戦後の出会い方の変化は以下の通りです(図1)。

図1:結婚年次別、夫妻の出会いのきっかけの構成比【出所:岩澤・三田(2005: 18)】

まず目につくのは、見合い結婚の衰退と、それに代わる恋愛結婚の割合の増加です。また、恋愛結婚の中でも、1960年代後半以降の「職場や仕事で」の出会い、つまり「職縁結婚」の増加が目立ちます。1970年代から1990年代後半までは結婚したカップルの三組に一組が「職縁結婚」ということになります。2000年代に入ると、「職縁結婚」を抑えて「友人・きょうだいを通じて」という結婚が最も多くなります。

ただ、この期間に未婚化は著しく進んでおり、このグラフでは、どのような出会い方が増えたのか/減ったのかについて正しく知ることができません。岩澤美帆らは、同じ「出生動向基本調査」のデータから対未婚者初婚率という新しい指標を作り、どのようなタイプの出会い方が減少しているのか(増加しているのか)を明らかにしています(岩澤・三田 2005)。

それによると、見合い結婚が減少しているのはいうまでもないのですが、恋愛結婚の中で大きく変動しているのは「職縁結婚」のみだというのです。職縁結婚は、ベビーブーム世代が結婚適齢期を迎える1960年代から70年代にかけて倍増したものの、1973年のオイルショック後からすぐに減少していったことが明らかになっています。一部の年齢層では、「学校で」や「友人・きょうだいを通じて」の出会いが増加していることもわかりました(岩澤・三田 2005)。

では、このような出会い方の変化が未婚化にどのように影響を与えているのでしょうか。岩澤らが第11回出生動向基本調査の夫婦票データを用いて多項ロジット分析を行った結果、1970年代から2000年代にかけての初婚率の総変化に占める影響は、見合い結婚が5割で最も大きく、職縁結婚も4割近くを占めており、この二つの要因でほとんどの初婚率低下が説明できると言います(岩澤・三田 2005)。

見合い結婚の減少は、農村から都市への人口移動による都市化によってもたらされました。若者が都市に出ていくことで、地域に根差した見合いというシステムが成り立たなくなっていったのです。

それに代わり、人口が集中する都市でマッチング・メーカーの役割を果たしたのが会社です。終身雇用や年功賃金を軸とした日本型雇用慣行が定着し、会社が社員の面倒を見て、社員は会社に忠誠を尽くすというあり方が見られるようになります。こうした状況で職縁結婚が増加しましたが、高度経済成長期の終わりとともに段々と雇用環境が変化し、職縁結婚も減少傾向に転換するようになったのです。

今後、職縁結婚に代わる新しい出会い方が現れてくるのでしょうか。最近では、マッチングアプリなどでの出会いも増えており、2021年の「出生動向基本調査」では、夫婦の出会いのきっかけとして「ネットで」という選択肢を選んだ人の割合が15.1%で、「見合い婚」の9.8%を上回りました(国立社会保障・人口問題研究所 2021)。今後、この「ネットで」の出会いが新たなマッチング・メーカーとなるのかは注目すべきポイントになるでしょう。

第3回の今回は、結婚に至らない社会的環境について考えてきました。

そもそも、若者の結婚意欲は大幅に低下しているわけではないことから、「結婚したくてもできていない」と「いずれ結婚したいと考えていたが今のところ結婚に至っていない」というケースが増えていることがわかりました。その要因として、「経済基盤」と「親密性基盤」に注目して見てきました。

「経済基盤」に関しては、雇用の不安定化を背景に、男女ともに稼得能力が重視されるようになっていることがわかりました。「親密性基盤(出会い方)」に関しては見合い結婚と職縁結婚の減少が未婚化に大きな影響を与えていることがわかりました。また、どちらの要因がより強く未婚化に影響を与えているかは、時代によって変化していることも紹介しました。

「なぜ最近の若者は結婚しないのか?」は今回の第3回で最後になります。いろいろな観点から日本の未婚化について見てきましたが、ここまでの議論をまとめてしまえば、「未婚化は、様々な要因が絡み合ってもたらされている」と言えます。

私たちはしばしば、一つの原因で全ての現象を説明しようとするわかりやすい議論に惹かれ、それに納得させられることもあります。しかし、現実はそこまで単純ではありません。また、その現実問題に対する解決策を探るのも簡単ではないのです。

そのため、多様な政策の複合によってこの未婚化・少子化に対応する必要があります。その際、ある政策が未婚化・少子化のどの原因に対してアプローチするものなのかを明確にすることが重要でしょう。問題を正確に把握し、原因と対策の正しい組み合わせを考えることで、政策形成、政策評価を行いやすくなります。

それらの政策の目標は、「結婚したい人が結婚できる社会」であるべきでしょう。少子化を、国家の維持の観点から問題として設定するのではなく、自由が制約されている問題として捉え直すということです。本稿の内容からも、若者が望んで非婚を選択しているわけではなく、社会的環境要因によって結婚に至りづらくなっているということが分かりました。「親密性基盤」の確保など公的機関による介入が難しい分野もありますが、「結婚したい人が結婚できる社会」を実現するための政策が必要です。

ただ、現時点で少子化対策に「成功」している先進国はどこにもありません。それゆえ、「結婚したい人が結婚できる社会」を目指す政策と同時に、そもそも少子・高齢化を前提として社会制度を構想する必要があることも間違いありません。「結婚したい人が結婚できる社会」を実現し、かつ少子高齢化の中でも国を維持できる体制が整備された状態こそ、少子化対策に「成功」した状態と言えるでしょう。

【シリーズ】なぜ最近の若者は結婚しないのか?
(1)家族社会学が明らかにしてきた未婚化の原因
(2)女性活躍と未婚化の関係
(3)結婚しない理由・結婚できない理由

参考文献

  • 福田節也,2012,「消費生活に関するパネル調査を用いた分析」安藏伸治・小島宏編『ミクロデータの計量人口学』原書房,93-125.
  • Fukuda, Setsuya, 2013, “The Changing Role of Women’s Earnings in Marriage Formation in Japan,” The ANNALS of the American Academy of Political and Social Science, 646: 107-128.
  • 何芳,2018,「女性の稼得能力は結婚を妨げるのか?」『生活経済学研究』47: 129-146.
  • 国立社会保障・人口問題研究所,2021,『第16回出生動向基本調査』.
  • 岩澤美帆・三田房美,2005,「職縁結婚の盛衰と未婚化の進展」『日本労働研究雑誌』535: 16-18.
  • 岩澤美帆・余田翔平,2024,「結婚からの解放か,結婚の剥奪か,結婚からの離脱か?――1982年~2021年における未婚状態の類型化とその変化」『人口問題研究』80(2): 161-185.
  • 麦山亮太,2017,「職業経歴と結婚への移行――雇用形態・職種・企業規模と地位変化の効果における男女差」『家族社会学研究』29(2): 129-141.
  • Raymo, James M., Fumiya Uchikoshi, and Shohei Yoda, 2021, “Marriage Intentions, Desires, and Pathways to Later and Less Marriage in Japan,” Demographic Research, 44: 67-98.
  • 佐々木尚之,2012,「不確実な時代の結婚――JGSSライフコース調査による潜在的稼得能力の影響の検証」『家族社会学研究』24(2): 152-164.
  • 脇田彩,2018,「未婚者の社会階層の特徴とその変遷――結婚への移行のイベントヒストリー分析を中心に」『理論と方法』33(1): 153-166.
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