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【情報ファイル】「私立大学4割(約250校)削減」の背景

EN-ICHI編集部

2026年5月27日

2026年4月23日、財務省の諮問機関である財政制度等審議会の分科会で、2040年までに私立大学の約4割(約250校)を削減する案が提示されました。翌24日には松本洋平文部科学大臣が、「高等教育の規模の適正化」が「極めて重要な課題」であると認める一方で、「定員割れの事実のみで機械的に判断する」のではなく、「分野や地域のリバランス(偏りの是正)を取りながら」「質の高い大学教育を実現すべき」と強調しました。

松本文科相も認めるように、少子化に伴う18歳人口の減少によって、現在では私立大学の過半数が定員割れに陥っている状況です。文科省の審議会で提示された資料(文部科学省、2025b)によれば、2025年に定員充足率が100%を超えているのは調査対象のうち278校、一方で316校が定員を満たせていません(【図1】)。

【図1】私立大学の定員充足状況(年次推移)

出所:日本私立学校振興・共済事業団.「データで見る私立大学経営‐変化する経営環境への対応‐」(2025b)より筆者作成

今後も18歳人口が回復する見込みはなく、2043年には70万人を割り込み、現在の大学定員約63万人に限りなく近づきます(【図2】)。現在、大学進学率は6割前後で頭打ちとなっており、大学の統合・再編による定員削減は避けられない状況です。

【図2】18歳人口、大学定員数(国・公・私)、私立大学数の推移

出所:文部科学省(2025a). 「私立大学に関する現状等について」/文部科学省(2025b). 「データでみる私立大学経営 —変化する経営環境への対応―(日本私立学校振興・共済事業団)」より筆者作成

【図2】で明らかなように、18歳人口が減少を続ける中で、大学定員(国立、公立、私立の合計)は増え続けてきました。1992年には、18歳人口の約205万人に対して、大学定員は約47万人。2025年現在、18歳人口は109万人まで落ち込みましたが、大学定員は60万人を超えています。この期間に、私立大学の数も、1988年の357校から2023年には622校に、75%も増加しました。

この間の大学数、定員数の増加は、1991年の大学設置基準の緩和とその前後の政策転換に起因しています。当時は国民の学力水準の底上げが国際競争力の強化につながると考えられていました。企業の側でも、大学受験という一定の選別過程を経た人材を求めるようになり、大学進学率の上昇を後押ししました。

しかしながら、大学全入時代ともいわれる風潮は、高等教育の質の低下をもたらしました。大学ごとの学力差は拡大の一途をたどっており、財政審では高校レベルの授業を行う大学もあることが指摘されました。今回の削減案の狙いは、定員割れの私立大学の退出を促し、限られた私学助成金(約3000億円)を、より質の高い教育に重点的に配分することにあります。

実際に補助金も加えた単年の事業活動収支でマイナス(赤字)となっている私立大学は4割を超えており、収入に対するマイナスの割合が2割を超える大学も15%存在します(【図3】)。これらの大学の経営改善の見通しは暗く、そもそも持続可能性が低いという現実があります。

【図3】事業活動収支差額比率がマイナス(赤字)である私立大学の割合

出所:文部科学省(2025b). 「データでみる私立大学経営 —変化する経営環境への対応―(日本私立学校振興・共済事業団)」より筆者作成

しかしながら、定員割れの大学を機械的に退出させることには問題もあります。松本文科相は「分野や地域のリバランス」に言及しましたが、私立大学には、地域に事業、医療、福祉等の人材を供給する機能もあり、その撤退は地域からの人材流出を促進し、さらなる衰退を招く恐れもあるのです。

実際に、定員割れの大学は地方に多いという現実があります。【図4】でわかるように、2024、25年の両年で定員充足率が100%を超えていた地域は東京都、および関東(東京、神奈川、千葉、埼玉をのぞく)と大阪府、九州のみでした。特に中国、四国、近畿(京都、大阪、兵庫をのぞく)は2024、25年と連続して9割を下回っています。東北、甲信越、北陸、東海(愛知をのぞく)を含め、これらの地域はすでに人口減少による、地域社会の担い手不足が大きな課題となっています。単に定員割れのみを理由とした大学の整理は事態を悪化させかねません。さらに、定員割れは、規模の小さい大学でより顕著であり、これらの小規模大学も地方に多いことは留意しておくべきでしょう。(【図5】)。

【図4】地域別私立大学入学定員充足率
※2025年、( )内は2024年

出所:文部科学省(2025b). 「データでみる私立大学経営 —変化する経営環境への対応―(日本私立学校振興・共済事業団)」より筆者作成

【図5】私立大学の定員充足率(規模別、2025)

出所:文部科学省(2025b). 「データでみる私立大学経営 —変化する経営環境への対応―(日本私立学校振興・共済事業団)」より筆者作成

文部科学省でも、すでに規模適正化についての議論は進められており、その中では分野の偏りの是正も焦点となっています。

【図6】に示したように、私立大学の定員は文系学部に偏っており、理系、技術系の配分は非常に小さくなっています。今後はAI技術の進展により、一般事務職の求人が減り、専門的な技術職のニーズが高まるとの見方もあります。高等教育の規模の適正化を含め、今後の社会変化も見据えた総合的な人材育成戦略が必要とされるでしょう。単なる「学校数の削減」にとどまらず、次世代の社会を支える知的基盤、人材基盤をどのように再構築していくか、本質的な議論が望まれています。

【図6】私立大学の系統別入学定員の割合(2025速報値)

出所:文部科学省(2025b).「データでみる私立大学経営 —変化する経営環境への対応―(日本私立学校振興・共済事業団)」より筆者作成

参考文献

教育・人材 政策情報・リサーチ