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政策提言

道徳教育の教科化に伴う「性的自己抑制教育」導入の提言

2014.01.23

 今後、道徳教育の中身をどのように作り上げていくかが課題となってくる。本提言では、人格教育としての「性的自己抑制教育(Abstinence Education)」を提言する。

提言要旨

はじめに

 政府の教育再生実行会議が2013年2月に発表した第一次提言において「道徳教育の教科化」を打ち出したことを受け、文部科学省の有識者会議「道徳教育の充実に関する懇談会」は11月、正式な教科でない小中学校の「道徳の時間」を「特別の教科」に格上げすべきだとする報告案をまとめた。文科省は中央教育審議会の議論を経て、2015年度にも教科化する方針である。
 今後、道徳教育の中身をどのように作り上げていくかが課題となってくる。そこで本提言では、アメリカで成果をあげている「人格教育(Character Education)」を参照しながら、人格教育としての「性的自己抑制教育(Abstinence Education)」を提言する。

1.文科省は、道徳教育の教科化にあたって、自己規律を重視する米国「人格教育」の成果を取り入れよ

 米国の教育事情に詳しい加藤十八(中京女子大学名誉教授)は、日米の道徳的徳目について次のように分析している。
 米国では「感謝」「従順性」「正直」「思いやり」「勇気」「権威」「責任」「忍耐」「配慮」などの徳目を強調し、自己規律と社会のために尽くすことを教えている。一方、日本では(旧教育基本法など)「個の尊重」「個性豊か」など個性主義を強調してきた。自己規律に関しては「畏敬の念」や「責任」程度しか見られない。
 日本の人格形成志向は「個性を尊重せよ」「自主的・主体的」ということが強調され、個性主義に偏している。一方、米国では「自主的に行動せよ」と教えるのではなく、自分で自分をコントロールする自己抑制を強調して教えている、と加藤は分析している。 平成18年に改正された新教育基本法第二条において、「公共の精神」や「道徳心を養う」の文言と共に、自己を律する「自律の精神を養う」が明記されたことは、評価できる。しかしながら、教育現場においては依然として改善が見られないのが現状である。道徳教育の教科化にあたって、自己規律を重視する米国の人格教育の成果を取り入れるべきである。

2.文科省は、道徳の学習指導要領見直しにあたり、「性的自己抑制の重要性」「結婚と家庭の価値尊重」「宗教心の尊重」の視点を導入せよ

 性的自己抑制教育は人格形成だけでなく、子供たちの心身の健康を守り、将来の結婚の準備としても極めて重要である。
 文科省は、平成17年7月27日に出した「学校教育全体で取り組むべき課題と学習指導要領等の内容」で、次のように指摘している。「学校における性教育については、子どもたちは社会的責任を十分にはとれない存在であり、また、性感染症等を防ぐという観点からも、子どもたちの性行為については適切ではないという基本的スタンスに立って、指導内容を検討していくべきであるということでおおむね意見の一致を見た」
 国連は、HIV(エイズウイルス)感染をはじめ性感染症の感染を防ぐため、若者たちが「婚外交渉の禁止、結婚相手に対する貞節」といった「責任ある行動をとること」も大切だと提唱している(国連人口基金「世界人口白書2002」)。また、メルクマニュアル医学百科(世界で最も信頼されている総合医学書の一つ)も、子宮頸がんになる危険が増大するケースとして、「初めて性交を経験した年齢が若いほど」「またセックスパートナーの数が多いほど」リスクが高くなるとしている。
 「性的自己抑制」は、子供たちの心身の健康を守るとともに、結婚のための内外の準備となることを子供たちに伝えることが大きな目標となる。そのためには「結婚と家庭の価値」を明確に教えなければならない。
 また、自己抑制やセルフコントロールの力を養うには、節制や足ることを知るといった欲望の制御が求められ、歴史的に見て宗教心が欲望の制御に重要な役割を果たしてきた。従って、「宗教心の尊重」の視点も重要となる。
 こうした点から見て、道徳の学習指導要領を見直すにあたり、「性的自己抑制の重要性」「結婚と家庭の価値尊重」「宗教心の尊重」の視点を導入すべきである。

3.文科省は、大学を人格教育研究の拠点とし、「性的自己抑制教育」の内容を教員養成課程に取り入れよ

 これまで大学では道徳教育についてきちんと研究する分野がなく、その結果、道徳教育の理論研究も教員養成の内容も中身がないものになっている。道徳教育の教科化にあたって、文科省は人格主義の視点に立った「道徳教育学」の構築を促し、大学を人格教育研究の拠点とすべきである。また、教員養成課程に「性的自己抑制教育」を取り入れ、人格教育としての性的自己抑制教育の授業ができる教員を養成することが求められる。

4.政府は、家庭教育および社会教育での「性的自己抑制教育」を推進し、結婚教育講座の開設や小冊子の作成・配布を促せ

 結婚の意義、家庭の価値というものは、学校で教えるものであると同時に、何よりも家庭で親が実際の姿を通して示すべきものである。
 人格の成長には親の影響が決定的である。幸い小さな子供にとっては、親は絶対的な存在である。アメリカの心理学的研究は、子育てには「権威のある親」「権威主義的な親」「許容的な親」の三つのスタイルがあり、権威のある親が子供の道徳発達にきわめて重要であることを示した。権威のある親は、権力を振りかざすのではなく、自信をもって判断し、子供に指示をする。同時に子供にその理由をきちんと説明する。そのように育てられた子供は、自分に自信を持つことができ、社会的責任感が強いという。
 結婚や子育てに関する教育は、少子化対策としても重要である。日本では近年、若者たちが結婚や出産、働き方についての将来ビジョンを持てなくなっているとも言われる。そこで、学校教育段階において、学校を卒業した後にどのような働き方をするか、結婚や出産のタイミング、結婚後の生活、結婚・出産するには仕事を含めてどうしたらよいかなどを学ぶ「ライフデザイン教育」を実施するよう提言する専門家もいる。
 同時に、政府は、学校教育だけでなく、家庭や社会教育で性的自己抑制の重要性や結婚・家庭の価値を教育することを促し、そのための結婚講座や小冊子等の資料作成・配布を積極的に行うべきである。

平和政策研究所 子供・家庭・教育研究部会

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